興味の芽

教育学者の高橋 誠さんは、現在「プロフィール創造開発研究所」の代表も務めています。また、「次代の教育を共に拓く会」の理事長も兼務しています。その中で、創造性教育やキャリア教育、環境教育を企業や学校で推進しています。彼は、どこに就職するのか、どこに進学するのかというより前に、生きることの苦難や感動、働くことで得られる成長、社会で自己表現することの面白さを伝えなくてはいけないと強調します。そして、変化の激しいこれからの社会を生き抜く力を付けるため、小学校で“知・徳・体のバランスの取れた力”を育むよう学習指導要領でも定められていることに対して、こんなことを提案しています。

「知・徳・体は大事ですが、私はここに意欲の『意』を含めたいと思っています。何しろ意欲は知識向上でも、人として正しく生きる徳を身に付ける上でも、体力を付けるのでも、原動力となるからです。小学生時代は特に、この意欲を育むことを心掛けてください。子どもの意欲には、親の関わり方がとても影響を及ぼすのです。」

「知・徳・体」は、19世紀末に世界的に起こった新教育運動の中で、柱の一つとして重視された全人教育です。そこに新たに「意欲」を育むことの必要性を訴えています。私も、意欲、関心、興味はとても大切なことだと思いますが、これらは、親のかかわり方が影響を及ぼすのですが、私は、この力は乳幼児期に学ぶことが大きい気がします。というのは、就学前教育のもっとも中心になるべき力だと思っています。かつて、「表の道」と「裏の道」をブログで取り上げたことがありましたが、まさに、就学後に「表の道」を歩きはじめるために、まず整備しなくてはいけない「裏の道」なのです。

裏の道を整備するために必要なものは、非言語コミュニケーション力であり、非認知能力なのです。乳児の頃の、周りを必死で見つめている目、興味あるものを手に触ろうとする意欲、手に触れたものを不思議そうにものに触り、なめまわす、そして、それがなんであるかを確かめるようにいじくりまわします。ここから、興味、関心、意欲が生まれ始めているのです。

また、その興味は、物だけではなく、ほかの人にも向けられます。それは、将来、社会の中で生きていくための力を身につけようとしているかに見えます。最初は、他人そのものというよりも、ほかの人が触っているもの、ほかの人が遊んでいるものに興味を持ちます。そして、自分のそれをやろうとします。興味を持つことが意欲を育んでいきます。さらに高橋さんは、こんなことも言っています。

「人間とは創造する生き物ですから、必ず何か面白いものを見付け出す力を持っています。まだお子さんが見付けられないようなら、ちょっと手伝ってあげましょう。子どもの興味の芽をつぶしてはいけません。また親の好みの夢を押し付けたり、誰かと比べたりするのも厳禁です。自分で道を切り拓く力をきちんと子どもに身に付けさせるのが親の役目。親の意向通りに進ませたり、失敗すると分かっていることをあらかじめ取り除くことは、子どものためには決してなりません」

 ここには、乳幼児期における子どもの興味の芽を摘まない「見守る保育」と同様なことを感じます。