スキル

 心理学者が、性格スキルなどのスキルを長年研究してきましたが、その中で、「ビッグファイブ」という分類が広く受け入れられています。このビッグファイブは性格的スキルをよりきめ細かく定義するためのものです。ヘックマンとカウツの論文にある物を整理すると、それは、どういうものかというと、まず「真面目さ」の定義は、「計画性、責任感、勤勉性の傾向」であり、側面として、「自己規律、粘り強さ、熟慮」であるとしています。ふたつめとして、「開放性」があげられています。その定義は、「新たな美的、文化的、知的な経験に開放的な傾向」であり、その側面として「好奇心、想像力、審美眼」があげられています。三つ目が、「外向的」で、その定義が、「自分の関心や精力が外の人や物に向けられる傾向」とあり、側面として「積極性、社交性、明るさ」があげられています。4つ目が、「協調性」で、定義が「利己的ではなく協調的に行動できる傾向」で、側面として「思いやり、やさしさ」とあります。最後の五つ目が、「精神的安定性」として、定義は、「感情的反応の予測性と整合性の傾向」とあり、側面として「不安、いらいら、衝動が少ない」とあります。

  これまで政策現場や経済学ではこれらのスキルは見過ごされてきたのですが、ヘックマン氏らはこれまでの多くの研究を引用し、性格スキルが学歴、労働市場での成果(賃金など)、健康、犯罪などの幅広い人生の結果に影響を与えることを明らかにしているのです。そして、ビッグファイブの中では、特に「真面目さ」が様々な人生の結果を最も広範に予測しているといっています。しかし、平均的に見ると、もちろんIQが重要であり、仕事が複雑になればなるほどIQの重要性は増してきますが、「真面目さ」の重要性は仕事の複雑さとはあまり関係なく、より広範な仕事に対して有用だと指摘しています。すなわちIQ は、仕事の種類、内容によって変わってきますが、真面目さは、どんな職業においても重要であるということのようです。以前、紹介しましたが、日本の文化の中で「M」で始まる言葉を職員と探したところ、「MAJIME」が多く出ました。日本人のイメージが強いのでしょう。

 スイス・チューリヒ大学のカーミット・セガル助教は13年の論文で、米国の8年生(中2)で問題行動(不登校、遅刻、宿題未提出など)があった人は、テスト成績を基に学力の影響を排除しても、26~27歳時の賃金が相対的に低い傾向を指摘しました。学歴の影響を統計的に取り除いても、すべての学歴レベルで同様の傾向があったそうです。一方、8年生の標準テストの成績と賃金の相関は、高等教育以上の学位を持つ者に限られていたのです。これは、当たり前のように思いますが、すでに、中学2年生の時の素行が、将来にかなり影響するというものです。それを、きちんとデータで表したのです。ただ、これはアメリカのことですので、日本では少し違うかもしれません。
 スウェーデンのストックホルム経済大学のエリック・リンキスト助教とストックホルム大学のロイヌ・ベストマン助教の11年の論文では、心理学者がスウェーデン軍の兵士に入隊時に面接して把握したデータを用いて分析しました。失業者や低賃金労働者はそれ以外の者と比べて性格スキル、認知スキルとも低かったのですが、性格スキルの方がより影響していたのです。

職業によると思いますが、採用するときに、成績がいい子よりは性格の良い子の方を採用する方が多いかもしれません。しかし、育てている最中は、やたらと成績のことを言うことのほうが多いかもしれません。