社会的慣習

ユネスコの「無形文化遺産」に「和食 日本人の伝統的な食文化」が登録されました。6月26日に、「富士山」が世界文化遺産に登録されたのに続いて登録されたというニュースが流れました。最初に、和食を無形文化遺産にしたいと考えたのは、京都の料理人たちだったそうです。彼らが、子どもたちに食材や料理の知識を伝える「食育」の活動の中で、日本の伝統的な料理を知らない子どもが多くいることに気づきました。「このままでは和食が滅ぶ」。そんな危機感から、無形文化遺産に登録して保護しようと、政府に働きかけ始めたのです。
 無形文化遺産というのは、長く受け継がれてきた、慣習、踊りや歌といった芸能、または、工芸技術などを登録し、守る仕組みです。京都の料理人たちの呼びかけに応えたのが、農林水産省でした。農水省では、食育の問題からというよりも、和食が世界に認められれば、日本のコメや野菜、肉や魚の消費と外国への輸出が増え、生産地も活性化するのではないか、と考えたからです。
 私たちは、世界に誇る「和食」というと、味だけでなく、器、盛り付けなどの飾りつけを含め、季節感を感じることができる、繊細ともいえるプロの料理人が作る豪華な「会席料理」を思い浮かべます。農水省でも、最初はこの会席料理を登録しようと思ったそうです。しかし、11年に韓国が「宮中料理」を登録しようとしたところ、王や王妃ら一部の人たちだけのものと判断され、登録されませんでした。そこで政府は、たくさんの人たちに親しまれている各地の郷土料理なども含めることにしたのです。

しかし、「会席」ではないといえば「和食」といっても、具体的にはイメージが付きません。そこで、農水省では、和食の特徴として四つの観点を示しました。「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」「栄養バランスに優れた健康的な食生活」「自然の美しさや季節の移ろいの表現」「正月などの年中行事との密接な関わり」です。しかし、では、ラーメンは和食なのか?おにぎりは?というように具体的には「和食」とは何かわかりにくさがあります。

実は、今回の登録では、「何が和食か」ということは議論になっていないようです。というのは、今回の対象は、たとえば、「正月などの年中行事との密接な関わり」という中で、「おせち料理」があります。その時に、「おせちが和食である」ということが登録理由ではなく、「正月におせち料理を食べるという文化」が登録理由なのです。ということで、私たちが子どもたちに伝えなければいけないのは、「おめでたいときに赤飯を食べる文化」、「人をもてなすときに会席料理を出す文化」、「雛祭りにちらし寿司を食べる文化」です。園では、給食で行事食を出すことが多いのですが、それが、どうも対象になった「和食」のようです。ですから、よくテレビで取り上げられている「和食文化」は少し違っているようです。

毎日の食事でいうと、こんな例が書かれてありました。日本人がよく食べる「ご飯」や「味噌汁」ではなく、「ご飯・味噌汁・おかずといった組み合わせを基本とする文化」を和食としているために、「おかず」が何であるのかは問われていないと言います。あくまでも対象となるのは社会的慣習(文化)なのです。