質の高い就学前プログラム

 日本時間で昨晩、オバマ米大統領は、一期目の就任以来6度目となる一般教書演説を行いました。この一般教書演説とは、毎年1月の第4火曜日に、アメリカの大統領が年間の政策を簡単にまとめて発表する演説を指します。ですから、1月28日に行われたのです。それは、初代大統領であるワシントンの代から、一部の例外を除いて、240年近くも、毎年続けられて来ているアメリカの政治において非常に重要な意味を持つ演説となっています。

 日本では、その内容はそれほど騒がれませんが、実は、アメリカでのことだけではないのです。アベノミクスによって、日本の力が強くなったと思われ、それに反して、アメリカは、リーマン・ショック以降、力が衰えたと思われています。しかし、今でもアメリカが世界一番の経済大国であり、その動向は世界に影響を及ばします。そんなアメリカの政治・経済・外交の年間の方針がまとめられているのが、「一般教書演説」なのです。

 つまりは、政治・経済を初めとし、日本も含めた世界全体の流れを左右するだけの様々な政策がこの「一般教書演説」の中で話されているのです。ですから、今後、どのような社会になっていくのか、どこに重点を置いていく施策になっていくのかを見ることができるのです。そんなこともあって、世界中の成功者たちは、その年にどんなことが起きるのかを誰よりも先読みするために、アメリカ大統領の「一般教書演説」に注目しているそうです。

 オバマ米大統領は2013年2月12日、2期目の一般教書演説で野心的な目標を掲げ、議会に支持を訴えて、その内容は有名になりました。その中で、どうもヘックマンらの研究による提言の影響があると思われる個所がありました。それは、このような内容です。

「製造業、エネルギー、インフラ、住宅でのこれらのイニシアティブ――これらすべては、企業家と中小企業所有者たちの事業拡大と新たな雇用創出を促進します。しかしそのどれもが、もし私たちがまた国民たちにこれらの雇用を埋めるためのスキルと訓練を授けなければ意味がありません。それをできる限り最も早い世代で始めなければなりません。研究を重ねて、子どもは学び始めるのが早いほど、うまく軌道にのることがわかっています。しかし今日、質の高い就学前教育プログラムを受講している4歳児は10人中3人以下です。ほとんどの中流階級の親たちは個人的な就学前教育のために週に数百ドルの余裕を持てません。そして支援を最も必要とする貧しい子どもたちにとって、就学前教育への利用の欠如が人生の残りを暗くさせ得ます。そこで今夜、私は州と協力して質の高い就学前教育がアメリカのすべての子どもに利用できるようにすることを提案します。それこそ私たちができるはずのことです。」

 この内容は、就業支援は、なるべく早いうちに行うべきであり、そのために幼児教育の大切さを踏まえ、国は州と協力して幼児教育をすべての子どもが受けられるようにするという内容です。さらに、「私たちが質の高い就学前教育に投資するすべての1ドルで、のちに7ドル以上を貯蓄できること」になるといいます、それは、できるだけ幼児期に投資する方がその見返りが大きいという研究データを参考にしています。その具体例として、幼児教育を受けさせることによって、卒業率を押し上げ、十代の妊娠率を下げ、さらに暴力率を下げることにもなると言っています。さらに、就学前教育の重要性をオバマは強調します。

質の高い就学前プログラム” への9件のコメント

  1. アメリカの教育状況について全く詳しくはありませんが、2013年の一般教書演説でオバマ大統領が明確に就学前教育の重要性を訴えたというのは大きな影響を与えそうな気がしました。国のリーダーが具体的な問題の改善を表明すると周囲にいる人の行動も変わってくるようにも思います。「こうしよう!」と納得のいく取り組みを提示されると、注目も集まりますし、それに対応する意欲も湧いてきそうです。日本でも幼児教育の重要性が叫ばれてはいますが、どちらかというと就学前教育というよりも少子化対策に重きがあるのでしょうか。少子化対策も考えなければいけないことなのかもしれませんが、将来を見据えた就学前教育ということももう少し具体的に考えていただけたらなとも思います。もしかすると、就学前教育の重要性を理解している人も多いのかもしれません。ただ、それでは目先の票にならない、支持率にならないと思っているということもあり、表にでてこないのでしょうか。それは、少し考え過ぎですかね。オバマ大統領のように、リーダーが先を見据えた考えを表明する意味はきっと大きいのでしょうね。

  2. 全世界の「成功者」が注目する米国大統領の「一般教書演説」。確かに毎年1月に行われていたと記憶していましたが「毎年1月の第4火曜日」と決められ、なんと「240年近くも、毎年続けられて来ている」とありますから、驚きです。流石ユナイテッドステイツオブアメリカです。さて、オバマ大統領の「教書演説」の中の触れている「質の高い就学前教育プログラム」とは一体どんなプログラムなのでしょうか。まぁ、大統領の演説ですから具体性には欠けますが、質の高い教育プログラムが就学前に必要だという一国のリーダーの発言は重要です。教育について言及して「愛国心」や「道徳」とばかり言うどこかのリーダーとはエライ違いです。「できるだけ幼児期に投資する方がその見返りが大きい」という今や世界中の常識になっている研究データを参考にするあたり、国の将来を本気で考えている証拠です。我が国ではどうでしょうか?やはり敬老精神、乳幼児は家庭が大事、・・・ということでしょうか?ヘックマン教授らのデータは日本でも大いに知らされているはずなのですが、日本の政治家の皆さん、知らないのでしょうか?我が国は法治国家なので立法を司る政治家の皆さんが乳幼児教育の大切さを法律(乳幼児教育法)できっちりと規定し、予算に反映して頂かないといけません。この国の将来はこれから大人になっていく子どもたちの手に委ねられています。

  3. 世界の情勢に、影響を及ぼすであろう演説というものがあるのですね。一国の大統領が「一般教書演説」という場で訴えるほど重要な事項を、自分も含めてですが、知らなかった人は日本に大勢いるという現状を見直さないといけないでしょうね。知っていても、種類の異なる「就学前プログラム」を実践してしまっているということでしょうか。また「事業拡大と新たな雇用創出を促進」したとしても「雇用を埋めるためのスキルと訓練」の場を設けなければ意味がないという提案は、保育園をたくさん作っても、そこに質の高い就学前プログラムがないと意味がないということと関連しているように思いました。過去の反省、現状、そして未来への方向性を感じることができる「一般教書演説」から、私たちは時代を先読みして、そこに必要になる力を先取りして与えることも重要かもしれませんが、その内容が、発達の先取りをしてしまっているようであれば本末転倒であることがうかがえますね。

  4. 自己責任の考え方が強いアメリカで、他者に投資をするという考え方がどこまで受け入れられたのかはわかりませんが、乳幼児期の教育に力を注ぐことが社会にとってプラスであると訴えることには大きな意味があるのは間違いないですね。発言が注目される立場にある人がどのような方向を示すかは重要なことですし、それをどう受け取るかも大切な点だと思います。できることなら日本でもこのような思いが語られてほしいですし、それを受けて社会がググッと動き出すという流れも体験してみたいのですが、やればできるとか、そういう話ではなく、広い社会に通用する話を期待するのはまだ早いんでしょうか。

  5. 日本と諸外国の就学前教育への取り組みの違いを比較教育行財政が専門の畠山勝太氏の論をもとにまとめてみる。

    安倍政権が掲げる教育改革の目玉の一つが、少子化対策として子育て世代の負担減を狙った、3-5歳児の幼児教育の無償化の導入である。制度的な不備は認めつつも、無償化による教育予算の増額は一歩前進である。しかし、目を海外に向けてみると、就学前教育が重要視されるようになったのは、日本のような少子化対策という観点からよりも、おもに学力・貧困・ジェンダー格差対策という観点からである。この点は重要である。

    少子化対策は所詮国の人口維持のためであり、子どもの幸福を第一とすれば、さらに踏み込んで就学前教育の質の向上で学力や貧困格差をなくす努力をすべきである。将来の効果的な投資効果を考えれば、その方が良いと考えたアメリカでは、貧困層出身の子どもに良質な就学前教育を提供すべくさまざまな試みが行われてきた。その代表的なものが、Abecedarian Project (ABC)・High/Scope Perry Preschool Program (PPP)・Chicago Child-Parent Center (CCC)である。これは日本にはない動きである。

    さらに問題なのは、他国では小学校の教員給与と就学前教育の教員給与がほぼ同じであり、就学前教育に従事する教員の給与水準が小学校教員の61%しかない日本は、かなり待遇が悪いことである。他の教育段階の教員との格差がここまで大きいと、就学前教育に従事する教員の職業的な地位が向上せず、有能な人材を就学前教育へと惹きつけることも引き留めることも難しい。幼少の連携も困難である。ちなみに日本は幼稚園教員では23.9%だけが大学・大学院卒なのに対し、修士卒が保育教員採用の条件であるフィンランドとは大きな違いである。おまけにフィンランドの一クラスあたりの生徒の最大数約7名に対し、日本は35名。もっと教員を増やすべきである。

    結局、OECDの他国並みに就学前教育のレベルを上げようとすると、無償化だけでは不十分で、教員の待遇の改善によって優秀な人材を確保できる政策が求められるということです。優秀な人材無くして子どもの幸福を実現できる質の高い保育はあり得ないのです。

  6. オバマ大統領の演説の中で幼児教育の重要性について語られた事で、日本にも良い影響を与えてくれるといいですね。ただヨーロッパ、とくに藤森先生が毎年行かれているドイツでは保育料、教育費が無償となっていて、幼児教育への早期投資を始めている事と比べると、少し遅かったのかもしれませんが、世界で影響力の強いアメリカのトップが具体的に就学前教育の重要性を政策として打ち出すことでアメリカはもちろん諸外国はどう反応するのでしょうか。そして日本はこのオバマ大統領の演説を聞いて具体的にどう動くのでしょうか?ただ今の日本の流れだと、質よりも施設の量を増やすことに予算を注ぎ込み、保育、教育の中身は二の次になってしまいそうな気がします。

  7. 恥ずかしながら一般教書演説というのを初めて聞きました。先進国であるアメリカが就学前教育という具体的なことを始めるとなるとやはり日本も少なくとも影響を受けてくるのでしょうか。希望としてはおおいに受けてほしいとこではありますね。ただ、思うのは日本は教育に対する考えが遅れていますし就学前教育どころか今は待機児童を減らそうという運動や保育園を増やすといった運動で頭がいっぱいにのようにも感じます。増やすだけで保育の質が失われてしまうのではないかと心配なところはあります。確かに保育園がないと大変なのでなんともいえませんが。少々的外れな対策を聞くと残念ではありますがこのオバマ大統領の演説を受け日本が良い方向に捉え早期投資に目を向けていくことを願い、日々の保育に励んで行きたいと思います。

  8. 国を治めるために「教育」は不可欠であり、その重要性は以前のブログにも書かれていましたね。しかし、今までの教育の中心はあくまで小学校以上のことが多く、または赤ちゃんを育てやすい環境というだけで、あまり就学前教育というものはそれほど重要視されていなかったように思います。その中でオバマ大統領の演説は影響がありそうですね。つい日本の場合、「待機児」や「少子化」といった問題が先にでるがあまり、就学前教育の重要性は二の次、三の次になっている部分が少なからず見えます。「生きる力の基礎」ということが言われている乳幼児期、就学前の時期をどう見ていくか、すぐに結果がでないことでありますし、今の子どもに対する考えや価値観も変えていかなければいけないことはブログを読んでいると常々感じます。国が徐々にしか動かない分、現場を見ていくうえでその下地となる教育をもっと考えていかなければいけませんね。

  9. アメリカの政治・経済・外交の年間の方針がまとめられている「一般教書演説」の中で、就学前教育の大切さが語られていることを初めて知りました。最近はTPPなどそちらのイメージが強かったので、そんなさなかにもしっかりとそういった発表をしているところは、さすがだなと感じます。それに比べ日本は、その当時はいじめの問題に揺れていたり、今も就学前教育というよりも、育休を伸ばしたりと働くことがメインの政策しかとられていない気がします。
    目先のことにとらわれず、長い目で、そして本当の意味でいいことを目指すことを大切にしていきたいと思います。

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