積み木のかたち

 レゴ社が新製品に取り組んでいたことは評価できますが、それは時代に合わせた商品なだけに、人類がもともとも持っている能力を子どもたちにつけていこうとすると、それは少し違ってきているような気がします。それは、たぶん、石とか木片を積み上げたり、並べたりしたと思います。それは、もしかしたら宗教的な意味を持つ模様を作ったり、他人への合図のために積み上げたのかもしれません。また、指が自由に使えるようになった歓びから、子どもたちは高く積み上げて遊んだのかもしれません。

 無藤氏は、積み木についてこのような印象を持っているようです。「積み木は基本単位があって、これが一つとか何種類かであって、それを組み合わせるわけです。この基本単位というのは単なる平べったい四角だけというのもあります。木でできた積み木もいろいろなものがありますので、中には三日月の形とか、何か穴の空いたものとか、そういうのが用意されている積み木もあります。」実際に、保育園、幼稚園では、どうしても集団で使うことが多いので、単純なものが多いかもしれませんし、積み木をする時間を長くとることはできないために、そう複雑なものを作るようなものは用意されていないかもしれません。しかし、積み木が教材になったフレーベルによる「恩物」はもっとシンプルです。その恩物が考え出された背景を無藤氏は考察しています。

 「恩物というのは、明治時代の訳語だから難しげに訳されていますけれども、与えられたものという意味で、与えられたものというのは誰が与えたかというと、神様に与えられたというので恩物です。フレーベルというのはカントやシェリングの流れを汲んだドイツの観念論的な哲学を背景にもった教育者ですけれども、ある種の神秘主義的な傾きを持った人だったと思います。ですから、幼稚園というものを世界を写し込んだ小宇宙みたいな感じにとらえていて、そこで子どもたちが大人がやるような作業をいろいろやることによって自らを形成していくといった発想だろうと思うのです。」

ただ、私たちが普通に恩物というと、木でつくられた方形の積み木のイメージがありますが、実は、フレーベルが考案した恩物は、全部で第1恩物から第20恩物まで20種類もあるのです。しかも、その中の第11恩物から第20恩物までを「手技工作」と呼んでいるように、「第11恩物 穴あけ」「第12恩物 縫う」「第13恩物 描く」「第14恩物 組む・編む・織る」「第15恩物 紙を折る」「第16恩物 紙を切る」「第17恩物 豆細工」「第18恩物 厚紙細工」「第19恩物 砂遊び」「第20恩物 粘土遊び」とあります。

私は、フレーベルの恩物について詳しくないので、これら11~20までの恩物が、どのように提示され、どのように指導するように提案しているのかはわかりませんが、保育の中で、子どもの遊びの中で重要な項目であることには間違いありませんし、現在の保育の中心になっている活動であることは間違いありません。逆に、もう一度、これらの活動を整理して、きちんと子どもたちの取り組みとして意識したい気があります。

しかし、ここでテーマにしている積み木に影響したのは、1~10までの恩物です。フレーベルの考え方が日本に入ってきたときに、教材として、また、今でも知育玩具として「恩物」として取り上げられているのは、こちらの方です。そして、そのシンプルな形に、フレーベルの世界観とか哲学が入っているようです。