対話

 国語力は、コミュニケーション能力が大切であり、それは、「話す力」「聞く力」「読む力」「書く力」です。その中で、乳幼児期から身につけていく力は、「話す力」と「聞く力」です。特に子どもに求められるのは「話す力」です。その話す力は、必ずしも言葉によるだけでなく、非言語コミュニケーションからが大切です。

 今月初めに、園で「おたのしみ会」がありました。その行事は、保護者に子どもたちの言語と表現の発達を中心に見てもらうものです。そこで、保護者に渡すプログラムには、言語と表現の発達過程が示されています。おたのしみ会が始まって、視界によるその意図の紹介の後で、私のあいさつでこんなことを話しました。「言葉の発達の中に“親しみを持って日常のあいさつをする”という発達があります。みなさんは、あいさつというのは“おはようございます!”と元気よく言うことだと思っているかもしれませんが、あいさつの始まりは、朝、私のあった時に、“にこっ”としたり、親の後ろに隠れたり、黙った下を向いたりするのも私はその子の精いっぱいの挨拶だと思っています。また、“元気よく返事をする”という発達も、“はい!”と元気よく声を出すだけでなく、今日の出し物の中で、乳児が自分の名前を呼ばれた時に、手がピクッと動くのも返事です。子どもたちが伝えようとする気持ちを聞いてみてください。」という“はじめの言葉”を言いました。

 この事例を見てわかることは、子どもにとっては「話す力」が重要であるということは、大人の「聞く力」が必要であるということです。それは、社会人になっても同様なことが言えます。最近、学校でプレゼン能力が子どもについてきたとか、就職するときに自己アピールのように話す力を重視する傾向があります。どうも、就活で、学生は、「話す力」を最も鍛えたがるようです。それは、コミュニケーション能力とは話す力だと思っている人が多いことと、話す力はその力をつけるために訓練することが可能で、しかも、その力がついてきたことが実感できるからです。

しかし、重要なのは、まず「聞く力」です。それは「聴く力」とも言ってよく、人の話をただ聞くのではなく、注意を払って、より深く、丁寧に耳を傾け、相手の気持ちや言いたい内容を理解する力のことです。それは、「傾聴力」ともいわれます。最近の就職面接で、こんな若者を多くみるようになったと言われています。「説明会で、司会者が会社の話をしているにも関わらず、傍観者になってしまい単に話を聞いているだけの学生がほとんどである。面接であれば、面接官の質問には必死に答えるが、面接官が話しているときには頷くことさえしない。相手に伝えることだけに必死になりがちで、相手の話している動作にリアクションできない。」

一方的に自分で話をし、いわゆる対話ができない子どもたちが増えています。「対話」とは、「向かい合って話し合うこと」とあります。「会話」とは、「複数の人が互いに話すこと」とあります。「話し合う」「互いに」という言葉が入っています。プラトンは、国家論をアリストテレスと弟子との対話で表し、論語では、為政者の心得を孔子と弟子との対話で語っています。そこには、考えを相手に押し付けるという姿勢ではなく、弟子の疑問をよく聞いて、それに丁寧にわかりやすく答えているのです。それが、「聞く力」「話す力」なのです。