既婚率

 最近の家族の傾向として、少子化、晩婚化、未婚化、離婚の多さなどが問題にされます。それは、本当に最近の傾向なのでしょうか?「歴史的に見た日本の人口と家族」という著作の中で縄田康光氏が考察しています。

 吉野ヶ里遺跡を見ても、人々は農業を共同作業で行っていました。その中で、しだいに権力を持つものが現れ、彼らを統制しはじめます。平安末期以降の荘園・公領は、名主と呼ばれる有力農民の下に下人等、多くの隷属農民が属する形態となっていきます。しかし、室町時代以降になると、隷属農民は徐々に経済的に自立する動きを見せてきました。そして、その流れを決定的にしたのが16 世紀末に行われた太閤検地です。太閤検地は一地一作人制を原則とし、農地一筆ごとに耕作する農民を確定したのです。このことは、家族をどのように変えていったのでしょうか。縄目さんは、「小農の自立を促し、家族を単位として耕作を行う近世農村への道を開いた。」と書いています。

 そうはいっても、まだ江戸時代初期には、名主的な有力農民の下に、下人等の隷属農民、名子や被官などと呼ばれる半隷属的小農、半隷属的傍系親族等が大規模な合同家族を形成するという形態が見られました。しかし、これらの下人、名子、傍系親族等は徐々に独立して小農となっていったのです。それに伴いこれら小農は新たな世帯を形成し、大規模な合同家族を中心とした家族形態から比較的小規模な直系家族を中心とした家族形態への転換が起こったということを縄目さんはこんな例を挙げていいます。例えば、諏訪地方の平均世帯規模は17 世紀には8人程度であったものが、19 世紀には4人程度と半減しているといいます。世帯規模が、半分になったのですね。それは、他の地方でも認められるようです。

 このような新たな世帯の増加とは、即ち「今までは結婚できなかった隷属的農民が結婚して世帯を構えることが可能となった」ということであり、有配偶率の増加と未婚率の減少につながったということで、江戸中期以降、農村部では「皆婚」に近い社会が生まれたのです。これも縄目さんが数値で表しています。例えば信濃国湯丹沢村の16 歳以上の者の未婚率は、1675 年時点で男子の46%、女子の32%であったのに対し、1771 年時点ではそれぞれ30%、14%に低下しているのです。 また1716 年から1870 年の陸奥国下守屋村と仁井田村の未婚率は、45 歳から49 歳の男子で4.8%、同じく女子で 0.6%であり、ほぼ皆婚といってよい状況となっています。逆に言えば、それまでは、男子の半分近くが結婚しなかったということです。2011年のNHKのテレビ番組で「日本人の生涯未婚率の上昇が止まらない。現在は男16%・女8%であり、2030年には男29%・女22%までになるであろう。」と危機感を訴えていました。しかし、全員が、結婚すべきだというのは、家族単位で農業をするようになった江戸時代に始まったのですね。

 縄目さんは、「このように小農が独立し、結婚して世帯を形成することが可能となったこと、旺盛な新田開発もこれを経済的に裏付けたこと、小家族経営による農耕が農民の勤労意欲を高めたこと、兵農分離や参勤交代による都市人口の増加が農産物需要の増大を招いたこと等が相まって、17 世紀の“人口爆発”を招いたものと推測される。」と人口増についても考察しています。しかも、現代において伝統的家族と考えられている直系家族という考え方も江戸時代に生まれたのであると言っています。

 では、そのまま人口増加が進んでいったのでしょうか?

既婚率” への6件のコメント

  1. 大規模な合同家族を形成することで、その家族を構成する人達が生活していける、食べていけるようなシステムになっていたのですかね。しかし、有力農民があり、隷属農民がある家族形態には階級の差から生じる関係性などもあったのかなと想像してしまいます。そのような形態が当たり前だったということもあるのかもしれませんね。男子の半分近くが結婚していなかったというのは驚きました。そのような人達はどんな生活の仕方をしていたのですかね。合同家族から小家族へ移っていき、現代はそれから個人へと移ってきているのでしょうか。家族形態と人口…どんなお話になるのか楽しみです。

  2. 未婚率が「2030年には男29%・女22%までになるであろう」と推測されているということは、何かしらの対策を打った方がいいということでしょうか。、少子化も進む一方ということかもしれません。そうすると、子育ての価値観や社会に対する意識も、変化していくかもしれませんね。直系家族というのは、大規模家族より関わり数が少なくなる印象ですが、その分、関わりが密になっていく傾向があるのかもしれません。現代は、関わりがより少なくなり、密になる具合もより増しているように感じます。その密になる対象が、家族だけではではなく、地域や社会との横のつながりにおける人間関係に向けばいいのですが…。現代でよく耳にする「〇〇ファミリー」という言葉は、本能的にそういった関係を求めている証拠かもしれません。

  3. 家族構成について、人口の推移について、このように深く考えていこうとされるのが藤森先生のいつもの姿勢だと思うのですが、そのことにいつも驚かされています。結婚にしても家族にしても、そのあり方に政治が関わっているということは間違いないと思います。そんな意味では今日の参院選挙の行方も気になるところです。少子化は解消しなければいけない、人口は維持されることを前提に経済を考えることなど、今起きていることを流れの中の結果として受け止めることでしか道を見いだせないと思っているのですが、なかなかそのような流れにはなりそうにないですね。ということは置いといて、次以降の藤森先生の解説を楽しみにしておきます。

  4. 「大規模な合同家族を中心とした家族形態から比較的小規模な直系家族を中心とした」という江戸時代の家傾向は第二次世界大戦後の我が国の家族あるいは家のありようと類似しているような気がします。私は「本家の長男」として生まれ、一族の跡取り、という意識を私は抱き、若い頃を過ごしたのですが、今やそれは私自身の立派な思い込みであって、かつて思われ言われたほどではない、ということに気づいて何だかホットしています。未婚率のデータは面白いですね。産業の推移と連動していることがよくわかります。ということは現在から2030年にかけてパラダイムシフトが起こり、その割合もまた変化していくことになるのですね。私は幸い結婚できましたが、私の同級生の何人かは独身で通しております。結婚したくないわけではないのでしょうが、これは現在の課題、すなわち出会いの機会の少なさ、かつ異性と一緒にいる時自分に自信を持てなくなるような不安感先行、ということなのかもしれません。「人口爆発」は当然反動を招くでしょう。すなわち「人口減少」。江戸時代の人口減少は子どもの出生率にも影響を及ぼしていたのでしょうか?現在は少子化対策としてこれまで何兆円規模の予算執行をしてきたのですが、少子化に歯止めかかったとは思えません。「少子化対策」は何だか「生めよ増やせよ」という戦争当時のスローガンに通じるような気がします。人口減少も少子化も人為という自然のなりゆきだと思います。自然が必要であれば人口は増えも減りもするような気がします。「少子化対策」とは何か?もっともっと根本から考えていかなければならないと思います。

  5. まず結婚をすることに関して考えてみると、結婚をするべきという考え方は少し違うように思います。社会に出て色々な人の話しを聞くと結婚願望が無い人もいるということです。少し前までは結婚はみんながするものだと思っていたので、未婚率が今後上昇していくという数字は驚いています。今問題になっている少子化は、既婚率の減少に大きく影響しているかもしれません。少子化の解決法も重ねて、人口がどのように増加していったのか、解決の糸口になるかもしれません。

  6. 今と比べると男女の既婚率はとても少なかったんですね。既婚率と出生率は当然比例してくるものだということはわかります。また、こういった人口増加の背景には国の施策が密接に関係しているということもよく分かります。現在、少子化ということが日本でも言われて続けていますが、既婚率の低下もそれに比例して上がってきているんですね。確かに、景気や所得によって、既婚率や少子化が進んでいるというのも一つの要因なのでしょうが、今の社会での人同士の関わりや社会のあり方も少子化につながっているように思います。

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