戦後の食事

 戦後、日本では進駐軍の指導の下、子どもを大切にしようということで、児童福祉法が制定され、「子どもの日」が制定されました。そのほかにも、子どもの環境は、過酷なものでした。その一つに、子どもの栄養状態が非常に悪く、体格は著しく悪くなっていました、そこで、アメリカ軍は、ララ物資により学校給食、保育所給食を斡旋しました。そして、昭和24年には、ユニセフ粉乳が配給されるようになり、25年からガリオア資金で賄われることになったのです。しかし、その救援も一部の地域に限られ、たとえば、東北地方の農山村などには、その生活レベルの低さの上に、戦争の打撃がのしかかり、生まれ出る者は、栄養も足らず、乳幼児の死亡率が高まっていったばかりでなく、多くのひ弱い子供が育ちつつあったのです。いつの時代でもそうですが、都会での子どもの現状は目につきやすいために、その対策が練られるのですが、過疎地における状況にはひどいものがあるにもかかわらず、なかなか手が差し伸べられませんでした。

 こんな状況の中で、民間レベルで社会一般に訴えようとする人がいました。宮本氏は、そのような運動を取り上げています。石川県珠洲市の井舟万全師は、その一人です。

 「彼は、あまりに多くの子どもたちの死んでゆく事実に心を痛めた。また、村々を歩いて見ても、血色の悪いひよわな子供を多く見かけた。がんらい田舎の子供は、町の子よりも頑健だとせられていたのに、現実にはそうでなかった。そこで綿密な計画と長い努力を重ねて、部落部落の子供たちのための栄養状態と、健康状態について調べ上げていった。この報告書は、昭和26年に公にせられている。それによると、この山村には、カルシウム分の不足や、室内における光線の不足のために見られる「くる病」がきわめて多いことが窺われます。」

 このように、子どもの実態調査は民間レベルで行われ、それを政府に提出したのです。しかし、戦後手を付けなければならない課題がいろいろとあり、なかなか対策が行き渡りませんでした。そのころの状況を宮本氏はこう書いています。「子どもたちの給食ですら、昭和26年9月、日本の独立以来、日本人自らの手で行わねばならなくなると、全国小学校への一斉実施な困難になってきたのである。あたらしく学校給食法の制定を見たが、それにおればその経費の一部分を児童の負担によることにしたため、経済力の弱い農山村では、中止するものが続出し、今日では、主として都会とその周辺に行われるにすぎなくなった。実はその給食を中止した地帯こそ、給食を必要とするような貧しさ、栄養の悪さの中にいるのである。」

 地方では、いまだの給食を実施していないところがあります。それは、このような時代的背景もあったのです。しかも、その裏には、母親の愛情論があり、せめて子どもの食事くらいは、親の責任であるという、無責任な決めつけもあったことも事実です。しかし、戦後、給食の果たした役割には大きなものがありました。その給食の役割も変わってきました。子どもたちは、栄養不足というよりも、栄養過多になり、それでいて栄養の偏りが激しく、また、生活の中での食事の意味も忘れられがちです。それは、少し前まで、相変わらず、給食は「栄養摂取」だったのです。園でも、こんな現在の時代になっても、給食を「少しでも食べなさい!」と注意する保育者がいますが、それは、子どもたちが栄養不足で、食事も満足にできなかった時代の指導の仕方をそのまましているような気がします。

戦後の食事” への8件のコメント

  1. 背景を考えるということは大切ですね。当時、栄養不足を補うという意味が大きかった給食と栄養過多の現代の給食とでは目的や意味は違ってくるのが当然ですね。様々な物事を「前もそうだったから」や「ずっとそうしてきたから」という理由で続けていくというのはもう一度しっかり考えなければいけないことだなと感じます。それで結果としてよかったとしても、なぜそれを続けることにしたのかという部分に思いがないというのはどうなのかなと思います。今、自分がしていることを思い出してもそういう整理できてないことはたくさんあります。丁寧に丁寧に目の前のことに向き合っていこうと思います。

  2. 地方には、給食制度が行われていないところもあるのですね。昔の流れを何となくそのまま引き継いでいくことは簡単かもしれませんが、現状に疑問を持って本当に子どもにとって良いことは何かを考える、そんなプロセスを常に目指していきたいです。都会と過疎地との違いは、“目のつきやすさ”が関係しているのですね、保育でも、目のつきにくい場所、視点、考え方は、職員の“多様性”でカバーしていくように、過疎地における問題も、過疎地ならではの学校給食方法を、多様な価値観で考えられるよう、同じ土俵に持っていった井舟万全師の活動は、多く人の支えとなっていたことでしょう。

  3.  戦争中や戦後の混乱期の状況を知ると、赤ちゃんや子どもは、大人がちゃんと手をかけてやらないと生きられないという面を強く感じます。けれどこの発想がいまだに強すぎて、赤ちゃんや乳幼児は、「何も出来ないのだから、すべて大人がやってあげなければいけない」という発想につながっているような気がします。
     戦後のベビーブームのころは、いくら大人が子どもにやってあげようとしても、多くの庶民は生活が苦しく、子どもの兄弟姉妹が多く、家事の仕事量も多かったので、親の過保護、過干渉にはなりにくかったと思います。ところが少子化のいまは、その気になれば親はいくらでも過保護、過干渉になることができます。祖父母など子育て経験者がそばにいると少しはバランスが取れそうですが、そういう人がそばにいないと、親も子どもも大変です。

  4. 変化するということは難しいことなんだなあと考えさせられる内容です。それは何のために行っていることなのかを掴んでいれば、状況が変わった時は合わせて変化していくものだと思うのですが、行動が受け身であるとそこから変わっていくためには何か大きな力が必要なんでしょうね。自分で考え、自分で行動を決めるということを子どもたちに示していくことは、大人の大事な役割だと思います。保育園はその一番最初の大事な場であるはずです。考えることをもっと磨いていかないといけないですね。

  5. まず戦時中や戦後の話しを聞くたびに、戦争というものは決して行ってはいけないことだと強く思いました。結局、戦争のしわ寄せは子ども達にも及び、食事もろくに食べれず弱っていきますし、地方の田舎の方に行けば行くほど食事は食べることが難しいです。当時の給食は楽しく食べる、美味しく食べる目的よりも、明日を生きる為に食べる、その為にも栄養をしっかりと取るというのが目的だったようですね。当時の時代を知ると給食のあり方が理解できますが、今の時代でも同じような目的で給食を考えるのはおかしいですね。子ども達にとって給食という存在はどのような存在なのか、しっかりと考える必要があります。

  6. 改めて、しっかりと時代の背景とそれにおける保育の在り方を考えさせられます。保育士として持っている先入観や文化的なものはなかなか変えずらく、気づくことも難しいのかもしれません。実際に、このブログをみて、「う~ん」とうなり、考えてしまう自分がいます。しっかりとこういったことを一つ一つ洞察していく視線はしっかりと持ち続けていきたいと思いながらも、その難しさを改めて感じました。「食事」というものはとかく保育園では「離乳食」などのこともあるため、重要視されることが多く、そこが保育を変えることのネックになることがあります。今の時代にあったやり方や考え方は見直していくように考えていくことは必要ですね。

  7. 昔の給食事情を知るとなるほどと思う部分が多くありますね。過疎地での栄養不足、母親の愛情論、なかなか頭を悩ますような単語が出ますね。その時代背景を受けて「少しでもちゃんと食べなさい」という意識が出てくるのは納得がいきます。子どもは自分の食べる量は決められるのでそんなに強く言わなくてもいいように思いますし、そもそもの給食が実施されるようになった意味を知ると尚更無理して食べさせる言い方というのは考えてしまいますね。必要なときは言うかもしれませんが、頻繁に使うことをないように思います。昔のことをしっかりと伝承していくことは良いことだとは思いますがその時代時代に合ったことを見極め冷静に判断することも大事になってきますね。食事だけでなく保育にも同じことが言えますね。なんでも昔と現在をしっかりと見て子どもにとって何がいいことなのかを考えていきたいと思います。

  8. 戦中戦後の食べるものがなかった時代のことを母から聞くことがあります。お米はほとんどないのでわかめやめかぶの海藻類をご飯代わりに食べていたとか。私の田舎は海岸沿いだったので、それでも海に頼ってなんとか生き延びることができたそうです。しかし、海のない内陸部では、生き延びられない子どもたちが多くいたそうです。そうした地域の子どもたちにとって「給食」とはありがたいシステムだったでしょう。それこそ、出されるものは何でも食べたでしょう。一日の主要な栄養をその給食によって得ることができたのですから。私は「学校給食」というものを経験せずに成人しました。「地方では、いまだ給食を実施していないところがあります。・・・母親の愛情論があり、せめて子どもの食事くらいは、親の責任で」というのが大人たちの理屈でした。時が移り行き「飽食」という時代になると「給食」の持つ意味合いも変わってきたと思います。「栄養摂取から食の営みへ」という本のサブタイトルが示すことの大切さを認識しなければならない時代を迎えているのです。

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