ドイツ報告2013-9

 ドイツ同様、日本でも今保育者不足で大変です。先日、経済産業省からどうして保育者不足なのかを聞きに来ました。その時に、「保育者になりたがらない理由に、いわゆるモンスターペアレントと言われているような保護者からの苦情に原因があるのではないですか?」と聞かれました。確かに、今は学校などでも保護者からの苦情でまいっています。しかし、私は、こう答えました。「確かに保護者の苦情も多いかもしれません。しかし、その苦情の中には、こちらが気がつかないこともあり、また、保護者は仕事などで大変な気持ちをこちらにぶつけることもあります。ですから、ある程度の苦情は想定内です。しかし、苦情でまいるのは、それから守ってくれるどころか、一緒になって、それに輪をかけて園を攻めてくる役所の対応です。いくら苦情を言われても、それにきちんと対応できるのは、園は決して悪気でやっているわけではないと役所がわかっていてくれるのだという確信です。」

 それでも、子どもがけがをしたときの保護者への対応は大変です。したがって、子どもの自主性、主体性を保障しようとしても、けがをしたらどうしよう、また、異年齢での保育がいいとわかっていても、トラブルが起きたらどうしよう、廊下で遊ばせてもいいけど、けがをしたらどうしよぅと思って、なかなか踏み切れないということをよく聞きます。ドイツでは、けがを防ぐためにどうしているのでしょうか?保護者からの苦情にはどう対応するのでしょうか?

 まず、保護者の苦情について聞いてみると、ほとんどないそうです。それは、入園の時にきちんと園の考え方を話すからだと言います。ドイツバイエルン州の統一カリキュラムである「バイエルン」の中には、「申し込み時に聞くこと」という項目が立てられています。そこには、「家庭以外での、社会的接触があったかどうか」「家庭内で、最近何か特別なできごとがあったかどうか」「母親が職場復帰を考えているかどうか」「将来、何か家庭内で変化があるかどうか(出産など)」「離婚経験があるかどうか」「慣らし保育の助けとしてPatenkinder制度があること」などです。この項目から苦情がなくなるという気はしません。私たちは、苦情を少なくするために保護者に説明していると聞くと、「けがをしてもそれは子どもの発達に必要なものです。」とか「園には理念があるので、それを理解してほしい」とかいうものの気がします。しかし、ドイツで保護者に確認することの内容は、もし保護者から苦情があった時には、その背景を考えるための参考にするもののようです。

 もう一つ、けがについてです。ドイツにはトイレの中に救急箱があります。その中身は何か聞いてみました.すると、中には、体温計、バンドエイド数枚、消毒液くらいがあるだけです。しかも、その中身を使えるのは、研修を受けたものだけだと言っていました。バンドエイドを貼るだけででもです。しかも、消毒液も薬品ではないそうで、園では、基本的に薬品を使ってはいけないと言います。では、けがをしたときにどうするかと聞いてみたら、副園長先生は、そこに勤務して2年だそうですが、2年間に一度も救急箱を使ったことがないと言い切りました。

 あんなに自由に室内、園庭を走り回り、保育者は立ち話をしていてほとんど子どもを見ていないようで、0歳から6歳まで異年齢で過ごし、職員配置があまりよくないドイツの園では、ほとんど怪我をせず、保護者から苦情もほとんどなく、アレルギー児もほとんどいないという実態は、日本と比較して、どこかが日本は間違っているということを感じます。