ドイツ報告2013-12

 ドイツに行くと、全体の取り組みのほか、細かいところでも参考になるところがたくさんあります。書類にしても、先日紹介した指導計画や保育日誌などのように、保育者自身のためのものや、園のためのものの書類は非常に少なく、保護者に対しての書類はいろいろとあります。他には、発達経過記録のようなものです。子どもたちの発達を園が記録をしておくというよりも、保護者に子どもの発達を伝えるような書類です。それは、最近、よく言われる「ポートフォリオ(portfolio)」というものです。
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ポートフォリオとは、もともとは「紙ばさみ」を意味する英語です。「持ち運びができるように書類を入れるもの」をさし、一般には「書類カバン」「携帯用書類入れ」「折りカバン」などをいいます。また、「画家・写真家・デザイナーなどが自分の作品を整理してまとめたもの」「モデルなどが売り込み用の自分の写真を入れるもの」もポートフォリオといいます。経済・金融分野では、もともと株式用語で「有価証券一覧表」をさしますが、「資産一覧表」「顧客リスト」などの意味でも用いられます。

日本では、学校においても、総合的な学習の評価方法として近年注目されています。このポートフォリオ評価は、たとえば「学習活動において児童生徒が作成した作文、レポート、作品、テスト、活動の様子が分かる写真やVTRなどをファイルに入れて保存する方法」と定義されています。そして、ポートフォリオは、残す意味があるものを選んで子ども自身の目の前でファイルすることを通して、1)子どもが達成したことが何であるかを子ども自身に明確に伝え、2)どうしてそれが高く評価されることなのかをわからせ、3)子どもの達成感や自尊心、あるいは自己効力感を高め、そして4)次の課題が何であるかを示して自分の学習活動をコントロールするためのメタ認知を育てることを意図するものです。

これを幼児教育に応用しようということで、子どもの発達経過を保護者に伝える手段として利用され始めています。園児が、保育の中で作成した作品や、活動中の写真、活動内容などを個人別に作成し、いつでも保護者が見ることができるようになっています。当然それは、保護者のためだけではなく、保育者も園児一人一人の発達を確認し、次の活動への参考にするものです。
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他に面白い写真を見つけました。それは、家族が写っている写真で構成された用紙です。この用紙は慣らし保育中に、保護者の方に作ってもらうものだそうです。子どもが園の体験をする中で、保護者は家から持ってきた写真で家族のパネルを作ります。園長先生は、よく子どもたちはここに家族の写真を見に来るそうです。ドイツを含め、海外の園には、家族の写真がよく掲示されています。アメリカの「保育環境評価スケール」には、「子どもに関係する展示」という項目で、「とてもよい」という評価内容に、「グループにいる子どもの自分、家族、ペットその他親しんでいる顔の写真が目の高さに貼ってある。」とあります
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また、今年の流行なのか、子どもたちの手形を使った装飾がどの園にもみられました。上記のアメリカの乳児篇の評価の中に、「子どものなぐり書きとか手形などが展示されている。」という項目もありました。
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ドイツ報告2013-12” への6件のコメント

  1. 保護者に対して、子どもの発達経過をしっかりと伝えるという姿勢には保育者としての専門性や意識の高さを感じます。発達を伝える手段は様々なのでしょうが、保育の専門家としてこの姿勢は見習わなければいけないと思っています。そのためにも自分たちが行っていることにしっかりと意味や目的をもっておくことも大切なんだろうと思います。本当にまだまだです。

  2. 保護者に対してだけでなく、子ども自らも自分が何を考え、何を得たのかを再認識し、次の課題を自ら見つけていくという意図もあることに驚きました。ここにも、自発性を高める要素が入っているのですね。ただの“記録”で終わらず、ポートフォリオという分野からも、“保育”を行っている様子が感じられます。また、ポートフォリオから保護者との連携のきっかけになったり、話だけでは伝わらない、視覚から直接的に得られる情報というのは、やはり説得力があります。そこには、保育者の目線や考察が随所にちりばめられ、保護者にとっては子どもの発達過程だけでなく、保育者の人間性も感じることができる要素も入っているのかもしれません。

  3. 子どものための書類をどう作り、その意味をどう整理していくか、そこが弱い部分です。?子どもが達成したことが何であるかを子ども自身に明確に伝える。?どうしてそれが高く評価されることなのかをわからせる。?子どもの達成感や自尊心、あるいは自己効力感を高める。?次の課題が何であるかを示して自分の学習活動をコントロールするためのメタ認知を育てる。この4つの流れは非常に参考になります。ポートフォリオに限ったことではなく、様々なことでこの視点で関わることが大事だと理解しました。大人が一方的に評価を与えるのではなく、その評価の意味を子どもが感じ取り、次の活動への意欲につなげていくことが保育であるはずです。保育者のためだけに、園のためだけに、監査のためだけに、というのはもったいないです。

  4. 今はデジカメに関して言えば一人一台持っているのが当たり前のようになってきました。さらに携帯電話のカメラ機能も画質もデジカメに負けないくらい良くなってきているので、現場の先生は子ども達の姿などをよく写真におさめています。その日のうちに写真を掲示して子どもたちの活動を保護者の方に伝えているときがあります。そのことが今回のブログにも書かれているポートフォリオに値するのか分かりませんが、ただ子どもに達成感を伝え、次の課題を示すという目的までは考えていませんでした。ただ子どもたちが掲示された写真を保護者やお迎えに来た友達の親に伝えている風景を見ると、自分の活動に対して達成感を感じているのかもしれません。ただそれだけで終わるのでなく、?の子どもに次の課題を示し意欲的に活動させる事が個人的に少し足りないように思います。

  5. 保護者に発達や成長段階を見せることは主に行事においてが多いのかなと思っていましたが、こういった取り組みも考えると保護者に園の内容を伝えることはもっとできるのではないかと思います。「発達を理解する」とはいえ、毎回ふりかえることは必要です。また、自分がしっかりと環境を作れているかといった。自己評価にもつながることになると思います。なおかつ、保護者に見せるとなるとより丁寧に発達を見ていくことになるかもしれません。しかし、そのためには「見守る」ことが重要になってくると思いますし、そのための保育士の考え方や理念の理解も求められていきますね。

  6. 日本でも「ポートフォリオ」は徐々に取り入れられているようです。実施しているご近所の園さんのポートフォリオを見せてもらいました。私たちの園にも子どもたちの作品を綴ってファイル保存してあります。保護者はお部屋まで入ってくるので、そのファイルを見ることができます。これもポートフォリオですね。この「ポートフォリオ」や「ラーニングストーリー」の作成について悪くはないと思うのですが、それには条件があります。それは、現場が一旦作成するとおそらく二度と振り返らないだろう「指導計画」やわざわざ5領域ごとに計画を策定する期案や月案、週案等について見直すことです。ウイッシュリストでどんどん増えていくと、現場の先生たちはとても困ります。それにしても、ミュンヘンの保育施設のなんとスマートなことか。専門家集団であればこそ、書類に振り回されずに、子どもたちにとってどのような環境が必要か、養成校時代に学んだことを思い返しながら、園の環境を検討していくことができるのでしょうね。

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