仕事に必要な能力

 大学に入学するとき、企業に就職するとき、そんな時にはIQの高さがものをいいます。また、人に指示され、言われたとおりに動くためには、EQ力よりもIQの方が必要かもしれません。しかし、調査の結果、優秀な人材を説く特徴づけるコンピテンシー、その企業における地位が上がるほどEQ力の高さが必要であることがわかっています。最近、多くの1流という企業では、グローバル化を標榜し、英語力重視の社員教育を進めています。特に、楽天、ユニクロは有名ですが、ほかにも、日産、新日鉄、明治安田生命、東京海上日動、ブリヂストン、JR東日本などの大手企業をはじめ、2500社以上の企業が、社員にTOEIC受験を義務づけています。

 しかし、2013年4月27日号の「週刊現代」に、楽天のある幹部の言葉が掲載されていました。「一度、英語が堪能だという新入社員に、海外の取引先に電話をさせたことがあった。一見スムーズにやりとりしているように見えたのですが、あとで相手の担当者から私のところに電話がかかってきた。電話先の相手は中国人で、英語はできるがネイティブではなかったため、内容が全く通じていなかったんです。そういう人と話すとき、ましてや電話では、簡単な単語を使ってゆっくり話すものですが、その新人にはそうした常識がなかった。話が通じているのかわからないまましゃべり続けるなんて論外です。コミュニケーション能力がないんでしょうね」IQが高くても、EQが低い例でしょう。

 また、こんな例があります。’12年に大手損害保険会社へ入社したA君のことを、彼の同期が語っています。「A君は、グローバル採用という制度を利用して、ボストンで採用されたUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の卒業生でした。その肩書通り、確かに英語はペラペラで、TOEICの点数も同期40名のうち、トップの940点だった」当初A君は、同期だけでなく、上司からも「あいつのスペックはすごい」と期待されていた。しかし、入社後まもなく始まった、研修センターでの集団行動からボロが出始めた。「まず、敬語がまったく使えない。研修担当の社員に注意されると『向こうには敬語がないから』と言い訳し、ふて腐れる。会議中にも、『頭の中では英語で考えているから、日本語がすぐに出ない』などと言っては周囲をいらつかせ、夜の宴会で社員から『ウーロンハイを作ってくれ』と言われると、『ぼくは店員じゃないです!』とキレるといったありさまでした。上司からの評価もガタ落ちです」「グローバルかぶれ」の典型のようなA君。研修を終えた後は、島根配属が決まった。しかし、彼にはそれが我慢ならなかった。「俺はグローバル人材だ。田舎の中小企業のおっさん相手に営業をするために入社したんじゃない」と言い放ち、島根の地に一歩も足を踏み入れぬまま会社を去ったという。

 仕事で本当に役立つものとは、どんな力なのでしょう。
大手鉄鋼メーカーの若手社員がこんなことを言っています。「英語ができて、自分の能力に自信がある社員ほどダメになりますね。」同社では、新人は各地の工場勤務となり、3~4年経理や生産管理を担当する。工場に大卒は彼らだけで、管理責任者も地元雇用の叩き上げだ。英語エリートは彼ら「非エリート」との付き合い方がわからない。「本社から月毎に生産目標が下されるんですが、それはいつも、普通にやっていたのでは達成できない値です。職人さんに無理を言い、休日勤務やサービス残業をお願いして、どうにかクリアしている。そんな現場で必要なのは英語ではなく、人情や謙虚さです。自分には能力があるなどと思っていると、とてもじゃないが上手くいきません」