堅実さと挑戦的体質

ウシオ電機会長の牛尾治朗さんは、トップとして48年引っ張ってきました。彼の考えるリーダーシップは、思考の三原則に立ち返ることとしています。それは、表面的なことにとらわれず、本当に大事な根幹まで考えて決断することです。しかし、48年間は決して順風ではなかったのは当然です。会社を創設して18年目にニクソンショックを乗り切り、石油ショックも乗り越えようとしたとき、その自信は崩れ去ります。当時、気鋭の若手経営者としてチヤホヤされていて、テレビに出演した時に、「この難局でも当社は賃上げします。これを乗り越えるのが経営者の使命です。」と大見得を切ります。しかし、そんな格好つけても、きちんと事態を把握し、先を見通さないと失敗します。

 そんな時に、当時の日経連の櫻田武さんに呼ばれ、「君はテレビで賃金を上げると宣言したけれども、こういうインフレの時に賃上げはシングルデジット、9%以内の抑えるのは経営者の見識というものだ。むやみに賃金を上げたら悪性インフレになってしまうから、まず企業が賃金と出費を我慢ずよく抑えることが大事だ」と懇々と諭します。彼は、その忠告に従って、すぐに賃金を抑えます。かつてブログで取り上げましたが、「君子、豹変す」というのは、君子ほど間違っていたと気がついたら、すぐに変えるものだということです。リーダーは、自分だけではなく、皆を率いています。自分一人のメンツや格好つけで変えるのが遅くなればなるほど取り返しがつかなくなってしまうのです。

 牛尾さんは、その時にワンマン経営の弊害に気がつきます。当時、営業本部長、開発本部長、生産本部長をすべて一人で努めていました。それによって視野が狭くなり、全体が見えにくくなります。そして、他人を育てることの大切さにも気がつきます。それには、自ら現場に行って変化をとらえる現場主義が大切であるということは、日本の美質である、変えてはならない経営原則だと言います。組織の最高責任者は、現場を見る人でなければ務まらないと言います。そして、後継者には、現場を見て歩くとき、緊張するのではなく、現場の従業員が「来てくれた」とうれしそうな顔をする人で、温かみというか、思いやりのある人がいいと言います。

 牛尾さんは、33歳で会社を作った時に三つの経営理念を掲げました。一つは、会社の繁栄と従業員の人生の充実が一致する経営をしようということ。二つ目が日本の中堅企業から世界の中堅企業になろうということ。そして三つ目が、安定利潤を確保して研究開発を通じて社会に貢献すること。この三つを会社経営理念として不易なものとして貫いてきたそうです。ところが、この三つにも問題が出てきました。最近は、人生の充実といっても社員それぞれ非常に多様化してきました。そこで、会社の繁栄と一致させることが難しくなってきました。二つ目の世界の中堅企業へという理念については、急激な技術革新によって、新製品の開発には大きな金額が必要になり、独自ブランドだけでは達成できなくなってきました。さらに、三つ目の安定利潤の確保というのも、個別の会社がすべて安定利潤を確保しつづけることは困難な時代になってきました。

 そこで、創業理念を再検討している最中だそうです。不易として大事にし、残すべき部分と、21世紀型に変化させる流行の部分の区別を明確にする必要があると考えているようです。守るべき部分を堅持しつつ、常に変わり続けていく。リーダーは、目まぐるしい時代の変化に、翻弄されることなく、不易流行をしっかりわきまえて道を切り開いていかなければならないと提言します。

 人を育て、民主的な経営を目指してきた牛尾さんとは違って、かなり強引な強いリーダーシップがときには必要な時もあります。

堅実さと挑戦的体質” への7件のコメント

  1. 「自分一人のメンツや格好つけで変えるのが遅くなればなるほど取り返しがつかなくなってしまうのです。」この言葉は強く響いてきました。そのように思うことは実際にありますし、そこで悩むこともあります。そんなときに自分は何を守らなければならないかを優先させられなければいけないんですね。私心が強いとどうしてもメンツにこだわってしまいます。以前から言われていることは重要なことだらけです。そして、変える必要があるとわかったら怖れないことですね。時には強引さも必要とのこと。ただその時を間違えないこと。日々何を見て、何を考えているかにかかってくると思うので、ごまかしは一切通用しないんだと思います。リーダーというのはなかなか厳しいものですね。だからこそやりがいがあるのですが。

  2. とても柔軟な考えをお持ちの方だなという印象です。もちろん、しっかりとした信念も持っておられるのでしょうね。理論や理屈ばかりで、知ったつもりになってしまうと実際の現場をよく見ないで物事を進めてしまいそうになりますね。現場には多くの実際があって、その実際が今、目の前で起こっている事実であるのに、それを理論や理屈と異なるからと排除してしまうのは危険な考えですね。正解は分からなくても、そこでしっかりと見て、考えるという姿勢が大切になってきそうです。と、自分に対してしつこく言い続けようと思っています。それにしてもリーダーといっても様々な人がおられるんですね。様々な場面に対応しなければならないという方がいいのかもしれませんね。そういった意味でも強引な強いリーダーシップのお話は、また気になるところです。

  3. 小さなプライドほど、成長の壁となるものはないと思っています。
    難局でも賃上げするといった牛尾氏は、素晴らしいと思います。働いている従業員の事を想っていたのかもしれません。この状況下でも私はリーダーとして乗り切ってみせるという自分を奮い立たせる決意を表したのかもしれません。しかし、それよりも、櫻田氏に忠告されて自分のやり方は間違っていた、もっと大切なことがある、と自分の考えに固執することなくスパっと方向転換できた牛尾氏の方がより素晴らしく感じます。「君子、豹変す」という言葉。覚えておきたい言葉です。
    また、「守るべき部分を堅持しつつ、常に変わり続けていく」ため、創業理念までも検討している牛尾氏。そして、そんな牛尾氏の経験からも、「かなり強引な強いリーダーシップがときには必要な時もある」と考える藤森先生。
    最高のリーダーには、自分の経験だけでなく他者の経験からも学びとる力が必要なのかもしれません。

  4. 本質を察知し、柔軟に対応する様子はとても憧れます。自分なりに考えてみても、今まで見栄やプライドが邪魔をすることが多々ありました。ブログにもありましたが、「君子豹変す」こういったことが起こることは少なからずあります。しかし、こういった急な方向転換はとても勇気のいる決断です。決断をもつためには「覚悟」や「柔軟な体制」が必要です。「覚悟」や「自信」は自分の持っている「目標」や「信念」がしっかりと持っていなくてはいけませんし、そのうえで行動に移しすことにより、より強固なものになると最近は思います。結局、それを阻害する見栄や小さなプライドはこの「行動」を起こさないことによって、机上の空論になることで、より浮彫になり行動に移せなくなっていくことが多いように思います。いかに真意を見極め、「不易流行」を察知していくか、そのために「組織」とはどうあるべきか「リーダー」とはどうあるべきか、より実践者である人の話には説得力があります。

  5.  人前で見栄を張ったり、格好をつけたいと思うのは、多少はあるかと思います。しかしその判断によって取り返しの付かないことが起きてしまう可能性もあります。そうなってからは遅いので、間違ったと思ったら、一度口にしたことでも変更する勇気が必要なんですね。以前のブログで「君子豹変す」これはマイナスの印象がありましたが、実はそうではないと学びました。リーダーとして自分だけの事を考えてはたちまち会社も組織も崩れていきます。視野を広くし全体を見る事が必要です。牛尾さんのように現場に行き実際に自分の目で現実を見る事。そうすることで従業員の士気も上がり、上手くいきます。時代によって経営スタイルを変えていくのも「君子豹変す」です。ただ豹変するタイミング、方法もしっかりと見極める必要があります。

  6. ウシオ電機会長の牛尾治朗さんがよくテレビに出演されていた頃を知っています。政治や経済に関するトーク番組があり、武村健一さんや渡辺昇一さんと共に牛尾さんもご出演され、結構刺激的なお話をなさっていました。懐かしいですね。時代の寵児ともいえる牛尾さんでも「君子豹変す」ることがあったんですね。牛尾さんがインタビューされたり原稿を寄せられたりする雑誌を最近読んでいますが、テレビによく出られていた頃よりは今雑誌で読ませて頂く内容に共感することが多いですね。「現場主義」の牛尾さんが「後継者には、現場を見て歩くとき、緊張するのではなく、現場の従業員が「来てくれた」とうれしそうな顔をする人で、温かみというか、思いやりのある人がいい」というのはご自身の実践のさまを推察させせられます。やはり難局を幾度となく乗り越えられたリーダーの発言には重みがありますね。「目まぐるしい時代の変化に、翻弄されることなく、不易流行をしっかりわきまえて道を切り開いていかなければならない」、このことは本当にしっかりと理解したいと思います。

  7. 文章を読んでいると柔軟な考えを持ち、周りを見ることができるのはリーダーに必要な能力だと思いました。
    多様な考え方も一人では思い付きませんし、他者からの意見を聞くことも出来ません。やはり、他者がいることでアイデアの幅が広がる、それを受け入れ、共感できることは必要なことだと思います。流されるのではなく、本質的思考を持ちながらも、時代の流れを見て変化していく、ために進んでいける、志を感じます。

    ゛守るべき部分を堅持しつつ、常に変わり続けていく゛
    常に頭に入れておかなければなりませんね。

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