求められるEQリーダーシップ

 EQの提案者であるゴールマンは、これからの時代におけるリーダーシップにおいてもEQ力が必要であることを説いています。そこで「いまこそEQリーダーシップを」と呼びかけています。EQリーダーシップは非常に重要であり、これ次第でリーダーのその他の努力が成功するかどうかがほぼ決まるのです。共鳴を起こすことこそ、すべてのリーダーの根本的な仕事であり、その考えの基礎をなす神経学的側面、とくに感情の開回路からの根拠についてもそれを裏付けています。そんなゴールマンの提案するEQリーダーシップ論を考察してきましたが、それを再度まとめ、確認してみようと思います。

 EQは、共鳴型リーダーシップの最も重要なコンピテンシーであり、個人レベルでも集団レベルでもこうした能力を養い、強化することは可能です。共鳴的リーダーシップは、組織全体に広めることができるだけでなく、豊富なデータが証明するように、組織の効率や業績にも確かな利益をもたらします。そのために、新しいリーダーシップ論が必要になるのです。それに不可欠なEQコンピテンシーを向上させ、維持させるためのステップが必要になるのです。

 次に、グループ、チーム、ひいては組織全体をより共鳴的に変革する必要があります。集団全体のEQレベルを向上させることは、集団内の特定の個人のEQを向上させるよりはるかにビジネス・インパクトが大きいのです。しかし、そのためには、集団の感情を読み取り、規範や文化を正しい方向へ導く明敏なリーダーが必要になります。最終的には、組織そのものが共鳴的リーダーシップの孵化場になれば、組織で働く人々にとっても、組織の採算にとっても、非常に良い結果を招くことになるのです。

 なぜ、こんなことがそれほど大切なのか?しかも、今日だけでなく、将来にわたって大切なのでしょうか?今日、世界中のリーダーは、社会的、政治的、経済的、技術的な変化がもたらす現実の急務に否応なく対応が迫られています。ビジネスだけでなく世界全体が時々刻々と変化しており、新しいリーダーシップを求めているのです。ビジネスの世界では、コンピューターが日進月歩で進化し、eコマースが拡大し、労働力が急速に多様化し、経済のグローバル化が進み、仕事のペースが速くなっています。しかも、その変化は加速しています。

 こうしたビジネスの現実を見ると、EQリーダーシップは今後ますます重要になるとゴールマンは言います。今日役に立っている戦略が、明日は時代遅れになっているかもしれないのです。「ビジネスモデルの半分は、2年ないし5年後には使い物にならないでしょう。」と言います。ある情報サービス企業のCEOが「わが社のケースでは、いま売っている情報が、数年後にはインターネット上で、無料でやり取りされているかもしれないのです。したがってわが社では常に情報を売る新しい方法を模索しています。」と嘆いています。また、投資銀行の行員は、「ほとんどの企業は、経営陣が恐怖で凍りついている間に消えていきますよ。」と言っています。

 企業が近未来の激震に耐えて生き残れるかどうかは、リーダー、特にトップ経営陣が激烈な変化に直面して感情をコンロトールできるかどうかにかかっています。保育園や幼稚園は経営ではないかもしれませんが、そのために危機感を感じることは遅れてきます。そして、その危機を乗り切るための変革は、決して政治的、経済的ではなく、感情をコントロールするEQ力にかかっているのです。