理想のビジョン

 ゴールマンは、「EQの高い組織を育てるために」三つの重要なルールを提案しています。その一つが、「感情的現実を発見すること」であり、その具体的な方法として、「集団の価値観と組織の信頼性を尊重せよ」ということで、組織のみんなが大切にしてきたことに共感し、それを尊重したうえで、改革に向けて自主的に取り組むような働きかけをすることであることの必要性を提案しました。次に「急がば回れ」ということで、いったんペースを落としてでも、人々の言うことによく耳を傾け、よく話し合う努力をしていかなければならないことを言っています。そして、「始動は上から、戦略は下から」というように、上から下へ、下から上へと共鳴に向けてスタートを切ることの重要性を訴えています。

 次に、二つ目のルールとして、「理想のビジョンを描く」ことを挙げています。何度も言っていますが、理想のビジョンと言って、机上の、絵に描いた餅では意味がありません。また、リーダーの独りよがりでも、それは理想で終わってしまいます。周囲と共鳴するビジョンでなければ、組織はついてきません。そのためにリーダーは、まず自分の気持ちを知り、さらに他者の気持ちを知ることから始めなければならないと言っています。本当に自分はそうしたいのか?私は、よく他人からその打ち立てた理想を聞くときに、「本当にそうしたいのか?」「一体、そうすることで何がしたいのか?と思うことがためにあります。そこに、「メンツ」とか「見栄」とか「体裁」とかの気持ちがあると、人々はその理想に向けて進むことをためらいます。他人の心を動かすのは、熱意であったり、信念であったり、心の底からの思いでなければならないのです。

 また、組織の皆にその思いを語るときでも、数字だけでは、心に響くビジョンを構築するには不十分だと言います。リーダーは、感情のレベルで「見る」ことができなければならず、人々が深く個人的なレベルで、一体感を抱けるビジョンを作り上げるのだと言います。逆に感情がこじれてしまっては、どんなに素晴らしいビジョンであっても、うまく機能していきません。特に、保育、教育のように人との関係においての理想は、感情を考慮に入れなければ、うまくいきません。均一な「ネジ」を作るのではないからです。また、数字、データだけでなく、表に出ている行動だけで判断することも危険です。自分の、そして、他人の内面をよく見つめることからリスのビジョンが見えてくるのです。

 「理想のビジョンを描く」ために、「整列ではなく、同調させる」ことが大切です。ビジョンは、人々を動かす原動力になります。そのためには、人々の心に響く、魅力的なものでなければならいのです。実際に見て感じて、触れてみることができるものこそ、価値観やビジョンのような抽象概念が意味あるものになると言います。人々をビジョンに同調させるためには、根幹に信頼がなくてはならないのです。自分の夢や信条や価値観を犠牲にしなくても組織の夢に手を伸ばすことが出来ると感じるものでなければなりません。そして、初めて絵に描いた餅ではなく、現実味を帯びてくるのです。みなが、実感を持ってそれを受け入れることができるのです。

 そして、「まず人があり、次に戦略がある」と言います。リーダーは、命令したり、指示したりして人を動かすのではなく、自ら実践することが必要です。それは、コミットメント、参加、ビジョンの追求、健全で生産的な人間関係などの規範を自ら実践して見せることが必要です。他人との関係において、他人を悪く言ったり、愚痴を言ったりする人間関係からは何も生まれてきません。