変化の持続

 組織を変化させようとするときには、大きなエネルギーが必要ですが、それでも職場全員が共鳴した時に、職場内に意欲が生まれ、皆で力を合わせて改革を始めます。それは、大変ですが、ある意味で生み出す楽しさ、取り組む楽しさを感じることができます。しかし、最初に立てた理想の形が構築された時に、一区切りがついた気になり、ホッとします。しかし、本来はそれで終わりではありません。まず、その変化を維持しなければなりません。また、さらに発展させていかなければなりません。そのために、職場内に、前向きな意欲を継続させていかなければならないのです。

 そんな時に、保育園や幼稚園のような施設において有効な方法があります。ビジョンに基づく共鳴が人々を結束させ、消耗を食い止め注意と意欲をつなぎとめる決め手があります。ペンシルバニア大学では、こんな取り組みをしました。ペンシルバニア大学は、1990年代半ばから後半にかけて、大規模な組織改革を行いました。職員の役割は劇的に変化し、多くの職員が長年慣れ親しんだ環境から放り出されて将来に不安を抱き始めました。

 そこで、総長と学長は、職員たちのエネルギーを組織改革の努力に向けさせるために何かする必要があると感じ、改革を始めます。まず、はじめに実行したのは、大学周囲のコミュニティから恩恵を受け取るだけでなく、貢献を返したいと考えました。改革の対象の、組織内だけでなく、より広範な対象に視野を広げ、大学周辺のコミュニティを含めて考えることにしたのです。大学とコミュニティは、それまで緊張関係にあり、開発計画の時期や場所について、環境の美化と安全の維持について、あるいは犯罪の増加にどちらが対処すべきかについて、長い間もめていたのです。

 このようなことはよく言われています。「地域に開かれた学校」「コミュニティの中の学校」などお題目はりっぱなのですが、実際に行動しているかというと、なかなかその成果を見ることは少ないようです。しかし、総長と学長の二人の取り組みは、単なるレトリックではなかったのです。

 実際に大学側は、市の職員と相談をし、小中高校の教師や校長たちと話をし、警察や都市開発専門家とも協議を重ねて、明るい街灯のついた道路や公園を新しく作り、地域の学校における教育の質を高め、住民に住宅修繕費用を融資する計画を作りました。大学の教職員に大学周辺へ引っ越すための住宅融資を用意し、新しいホテルや小売店舗やサービスを開発して住民にも観光客にも魅力的な街づくりを目指しました。さらに、大学は地域の住民を雇用し、マイノリティや女性が経営するこの地域の企業を建設プロジェクトやその他の取引に参入させる大胆な方針を打ち出しました。

 この新しい戦略に参加するメリットが見えてくると、大学の職員たちは変革の努力にエネルギーと情熱をもって取り組むようになっていきました。周囲のコミュニティと友好関係を築こうという方針に、誰も反対するはずはありません。新しい公園や街灯、犯罪の激減、家屋の改築、融資を利用してエキサイティングな市街地へ引っ越すチャンス、市街地の再生と活力ある多様なコミュニティを掲げる戦略は、それ自体が魅力的であり、人々は再び自分たちの大学であるペンシルベニア大学の一員であることに歓びを感じるようになっていったのです。

 二人の試みは、組織に共鳴を生み出し、組織の戦略が個々人の価値観と同調することで職員を巻き込むことに成功し、そのおかげで変革のビジョンが意味あるものになっただけでなく、維持可能なものになったのです。