現実の発見

 「保育所保育指針」には、「施設長の責務」としてリーダーの執るべき行動が書かれてあります。その役割として「保育の質及び職員の資質の向上」があります。そして、その方法として、子どもの保育と同様に「必要な環境の確保」に努めなければならないとあります。環境を通して行う保育に通じるものがあります。それは、子どもの発達と同じに資質の向上はさせることはできずに、自ら行うことが重要だからでしょう。そのためにリーダーは、必要な環境を用意する必要があるのです。

 その時に、何が必要なのかを考えなければなりません。そこで、社会的認識、自己認識が必要になるのです。それが、指針には、留意点として書かれてあります。社会的認識として、指針には、「取り巻く社会情勢などを踏まえ」とあります。社会情勢は変わっていくものです。その変化の中で、子どもの育っている環境は変化します。環境を通して行う保育は、その変化をきちんと把握しなければ、変化を求めることはできません。
そして、資質向上のために「保育の計画及び評価」と「保育士等の自己評価」が挙げられています。しかし、ここで問題があると思っています。それは、職員の仕事の評価は、ある品物を作る仕事の評価と違って、見えない要素も多いからです。一つの精巧な「ネジ」を作る場合は、きちんと高い品質を保つために評価する基準を持ちます。しかし、それは、最終的に「ネジ」自体の評価です。もし、そのような「ネジ」を作れなくなった時の原因を探るときには、機械の点検はまだいいのですが、作り手の検証は難しくなります。それは、「こころ」の問題が関係するからです。したがって、こころの知能と言われるEQ力が影響してくるのです。

ゴールマンは、変化を始める時にこのようなことを言っています。「多くの企業では、従業員の態度、価値観、信条などを体系的に評価するプロセスを採用している。感情的現実を把握する作業の代用だ。こうしたプロセスは非常に有用だが、問題は、こうした調査では測定の対象となった項目しか評価できない。ということだ。表層の下を流れる微妙な気持ちや複雑な規範は、ほとんど把握できない。こうした盲点が生じるのは、調査担当者が知りたい項目しか評価しないからだ。さらに、こうした調査で問題のある文化やリーダーシップの一面が明らかになったとしても、それを正面から取り上げるには意識的な努力と勇気が必要になる。その結果、せっかくの情報がそのまま放置されてしまうケースが少ない。」
このような評価の欠点を修正するために、マサチューセッツ大学のセシリア・マクミリンとアニー・マッキーが、「広角的設問法」とよばれるプロセスを開発しました。この方法は、「見ようとしたものしか見えない」調査の欠点を修正するものです。この方法によって、組織の感情的現実である「人々が何を大切に思っているか、個人やグループや組織が成功するために何が役に立つか、何が障害になっているか、などが明らかになると言います。

この「広角的設問法」は、人々の気持ちを引き出すために、ポイントを絞った会話と自由回答式の質問を用います。感じていることを口に出せない限り、文化の根本的な問題や意欲の源泉に迫ることはできません。自分たちの組織について感じるところを容赦なく話し合えるようになると、何が有効で何が無効かについて非常に高いレベルの合意に到達できる可能性が出てくるのです。

まず、組織に影響を及ぼしている力の正体を把握することが必要で、そうすれば、将来への希望も見えてくるのです。