本音

 よくチームで物事にあたるときに「チーム一丸になって」ということをいうことがあります。また、「団結力を強め」ということもよく聞きます。その言葉を聞くと、「進め一億火の玉だ」という第二次世界大戦中に大政翼賛会が掲げたスローガンを思い出してしまいます。リーダーは、チームを強化しようとするときに「団結」「チーム内の機能分担」「「戦略実行プラン」などというスローガンを掲げることがありますが、そんな無難な話題から踏み出そうとしなければ、そこから企業戦略や団結の話で止まってしまいます。このスローガンの下では、互いに、本音をさらけ出して話し合うのが難しいからだと言います。それは、戦時中のスローガンの下での腹蔵なく意見を述べ合うことができなかったことを見ればわかります。

 共鳴的なチームを作るための最初の有用なステップは、話し合いにより組織の感情的現実や職員の行動を見ることです。しかし、腹蔵なく意見を述べ合うと、感情的に取集がつかなくなるのではないかと恐れて、話し合いを避けようとしてしまうことが多いようです。また、互いに本音をさらけ出して話し合うのは難しいかもしれません。私は、ひと仕事を終えて、ゆったりとお酒を飲むのは嫌いではないのですが、酒の力で議論するのはあまり好きではありません。付き合いであまり酒を飲まないので、ある人から「ためには酒でも一緒に飲んで、本音で語り合おう」と言われた時に、「じゃあ君は、いつもはうそ音で話しているんだね。」と切り返したことがありました。それ以来、私は誘われなくなりました。いくら上司に対しても、意見をきちんと言うべきで、上司もそれを素直に聞く姿勢が必要だと思います。酒の力で何かを言うと、なんだか愚痴っぽくなる人がいるのには閉口してしまいます。

 普段、職員が本音で話し合うには勇気がいりますが、それには、実はチームを導くEQリーダーシップが重要なのです。そうした話し合いには、三つの利点があるとゴールマンは言っています。第1に、組織の文化やリーダーシップに関して本音で話し合い、率直に評価しあえるようになります。第2に、こうしたプロセスに関わること自体から新しい習慣が生まれてきます。組織のリーダーたちが、真実を探り、夢を語り合い、健全な人間関係を育んでいこうと努力する姿を見て、職員たちもそれを見習うからです。そして、第3に、トップが真実をはっきりさせようという姿勢を見せれば、下の者たちもリスクにひるまず、真実を求めるようになると言います。リーダーは、「本音で語り合いなさい!」と号令をかけるのではなく、まず自ら本音で語ることです。というよりは、私は、常に本音で語るようにしています。というよりは、物の本質を見て、「そもそも…であるか?」から考えることにしています。それは、真実を探り、夢を語るためです。そうすると、夢は現実味を帯びて、職員間に共鳴を起こすのです。

 チームが本音で語り合えないような不健全な規範に縛られている限り、リーダーは共鳴を持ってチームを導くことができません。リーダーが部下たちの感情やチームの感情的現実に対処する姿勢を持たなければ、チームの規範を変えることはできないとゴールマンは指摘します。こうしたことは、組織のレベルになれば、一層顕著になると言います。規範が企業全体の文化に影響を及ぼすからです。どんなに勇気があっても、システム全体を個人が動かすのは不可能に近いのです。