チームとしての共感

 保育所保育指針の中の養護に「情緒の安定」があります。その内容として2番目に書かれてあることは、「一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。」この言葉は、「子どもの」という部分を、「職員の」とか「チームの」とか「保護者の」という言葉に置き換えても十分と通じますし、とても大切なことです。しかし、相手を「受容し」とか「共感しながら」という能力は、その人のEQ力によるものです。

 チームにおいても、EQの高いチームほどチームとしての共感力を発揮することができるのです。この共感力は、何度も取り上げましたが、あらゆる関係を発展させていくスキルの基礎となる能力です。EQの高いチームは、組織内で自分たちの成功にとって重要なグループを見分け、そうしたグループと良好な関係を築くための努力をします。ただし、チーム・レベルの共感とは、個人と個人との関係のように友好関係を築くことだけではないのです。組織全体にとって何が必要かを考え、関係者全員が満足できる結果を求めて努力することであるとゴールマンは言っています。チーム対チームなど組織の壁をこえて発揮される共感は、組織の能力や効率を著しく向上させる力となるのです。さらに、この種の共感は、組織全体に健全な感情風土を形成し、チーム自体にも前向きの感情環境を作り出す力となるのです。

 私が主宰する「ギビングツリー」は、一つの園というチーム同士が、お互いの壁を越えて共感しあうことにより、それぞれの園の能力や効率を著しく向上させようという意図で発足しました。そして、それぞれの園全体が健全な感情風土を形成していき、園自体も前向きな感情環境を作り出す力にしてもらえたらと思っているのです。そして、EQの高いチームを作るために、リーダーはまずチーム全体の自己認識を高める努力から始めなければなりません。私は、これが、公開保育だと思っています。公開保育をするために、まず、職員が自分たちのおこなってきた保育について説明をしなければなりません。他人に説明することは、自分たちの保育を整理し、理念を共有するためにとても効果的です。そして、その時の園長の役目は、職員間の感情的傾向を見守り、そこに潜んでいる不協和感をメンバーに認識させてやることです。その手助けになるのが、同じ理念を持った他者からの目であり、助言なのです。

 そして、リーダーは、集団内で進行していることに耳を傾け、変化の口火を切ることです。それは、単にメンバーの言動を観察するだけでなく、彼らが何を感じているかを理解することだと言います。職員が、みんなで変化しようとしているときに、それを素早く察知し、変化することを妨げているものを見出し、それを乗り越える手助けをします。それは、変化への動機、意欲を湧き立たせることです。それには、リーダー自ら前向きのイメージや、楽観的な解釈や、共鳴する規範を示すことです。

 先日、高校までアメリカで過ごした職員に、「自分が生きてきた時を大切にし、ぜひ、これまでの経験を生かしてほしい」と話した時、日本に帰ってきて、大学に行き、ある会社に就職し、保育者養成校に通っていた時どのところでも、「ここは日本だから、アメリカで過ごしたことは忘れなさい」と言い続けられ、「今までのことを生かせ!と言われたのは初めてです。」と言いました。

一人一人のメンバーが、チームのために最高の能力を発揮できる環境を用意する力を持っているのもリーダーです。