集団のEQ

リーダーとしての取り組みでの発見は、第1の発見で「理想の自分」、第2の発見で「現実の自分」をよく見ることですが、実は集団における問題を見つけるためには、まず、現実を検討しなおし、健全な方向へ進めることから始めます。個人レベルでの話と逆になり、まず「現実の発見」から始めます。なぜかというと、モチベーションの問題で、個人の場合は、人生の夢や理想像を自覚した時にモチベーションが最も高まります。将来のビジョンが見えてくると、自分の行動パターンを変えようとするエネルギーやコミットメントが湧いてきます。しかし、集団にとって、理想のビジョンはしばしば遠い概念でしかなく、変化を促すモチベーションとしては不十分な場合が多いからだと言います。よく、企業に行くと社訓が掲げられています。学校には目標が掲げられています。しかし、それが高遠な言葉は、従業員や、子どもたちには日常からかけ離れたものに感じられ、その達成に向けての具体的な行動や取り組みは見えてきません。

 集団が変化しはじめるためには、まず最初に自分たちが現実にどう機能しているかを自覚する必要があるのです。集団のメンバーが問題意識を感じている場合には、とくに現実の自覚がより必要になります。集団が自分たちの直面する現実を感情のレベルで、さらに言えば、本能的なレベルで本当に理解することが、まず何より重要です。ただし、不快感を自覚するだけでは変化に結びつかないと言います。例えば、不満の原因を「悪い上司」というような誰の目にも明らかなレベルではなく、感情に関わる最も深いレベルで特定することが必要です。問題の根は、誰かの責任ではなく、長い年月の間に組織に染みついた行動の基本的原則や習慣である場合が多いのです。チームについて論じる場合は、これを「規範」と呼び、組織について論じる場合は、これを「文化」と呼ぶと言います。

 この「規範」とか「文化」と、感情的現実をきちんと把握できれば、それを基礎に集団のビジョンを構築することができるのです。ただし、集団のビジョンが本物の支持を集めるためには、個々人のビジョンと調和しなければならないと言います。現実と理想のビジョンがはっきりしたら、理想と現実のギャップを把握して、今日から明日へつながる努力を始めることができるのです。現実がしっかりと理想の方向を目指していれば、組織に起こった変化を長く維持できると言います。そして、集団は不協和状態を脱して、EQの高い共鳴で有能な集団に成長していくのです。

 ここ数十年の研究では、集団の中で最も優秀な個人が到達する結論よりも集団全体が協力して到達する決断の方が優れていることが証明されています。まさに、ホモ・サピエンスが生存するために取ってきた戦略なのです。個人の体力、体格、運動能力を高めるよりも、集団全体での協力する力、集団全体で決めることを優先させてきたのです。しかし、ただ船頭が多くては、船は陸に上がってしまいます。集団が調和や協力体制を欠く場合には、決断の質もスピードも低下してしまいます。ケンブリッジ大学の研究によると、たとえ頭脳明晰なメンバーが集まった集団でも、口論や内紛やパワー・プレーが横行するような集団では、良い決断を下すことができないという結果が出ています。

 要するに、集団はEQを発揮できる限りにおいて、個人よりも優れているということになるのです。