育成プログラム

 組織を改革しようとしたときに、なかなかうまく進まないことは多くあります。保育の世界でも、「もう一度原点に戻り子ども主体の保育、子どもによる自主的な保育を行おう!」とリーダーが取り組もうとしても、なかなか職員の抵抗にあって改革が進まない話を聞きます。リーダーは、変革のために研修を受け、いろいろと勉強するのですが、なかなか職員に変革の機運が高まらないということをよく聞きます。ゴールマンは、変革に失敗するプログラムの例を次のようなことを挙げています。

「組織の現状を無視して、人間さえ教育すれば制度や文化はおのずと変革プロセスを支持するようになるだろう、と考えてしまう。」「職場の規範やそれを取り巻く企業文化を無視して、人間だけを変えようとする。」「変革プロセスの始点を間違える。他人と組織の双方を変革するためのリーダーシップ育成プログラムは、組織のトップから始動し、組織の優先政策とされなくてはならない。」「リーダーシップの言語―考えや理想やEQの高いリーダーシップ慣行を象徴的に伝えるような言葉―が作れない。」が挙げられています。

これらの見直しをするべきところ、職員がついてこないことを、どうもリーダーは理想という原点を疑ってしまうことがあり、そこがぐらつくとより職員はついてこなくなります。変革は、人だけを教育したり、人だけを変えるのではなく、その人たちが築き上げてきた組織の文化をまずよく見つめ、それを大切に思いつつも、リーダー自ら語り、自ら発意し、自ら変革の姿を見せなければならないのです。

変革には戦略、マーケティング、財務、総務などの抽象概念に関する専門家の講義を聞くだけでの内容ではだめなのです。こうした学問的知識もリーダーにとって確かに重要ですが、それだけでは、個人や企業の変革にはつながらず、机上論では対応できないのです。また、組織のあらゆる層に浸透したホリスティックなシステムとしての「プロセス」が必要になります。良質なリーダーシップ育成プログラムは、変革とは組織の三つのレベルである「個人」「チーム」「組織文化」に浸透できる多面的プロセスでなくてはならないのです。こうしたプロセスは、知と情の両面から現実を見つめ直し、理想を追求しようとします。このようなリーダーシップ育成プログラムは、多くのビジネススクールや役員研修センターで実施されている教育とは根本的に異なるのです。

良質な育成プログラムには、難しいけれども危険過ぎない学習の場が必要になります。さらに、リーダーが本当の意味で新しいことを学習するには、有意義でしかも思考の枠組みを破ってくれるような経験が必要になります。創造的思考を刺激する程度に現実からかけ離れ、同時に学習の意義を感じられる程度に現実との接点を保った経験が必要になるのです。ゲシュタルト研究所のジョノ・ハナファン氏は、「人や組織に変化をもたらそうとするなら『違和感指数』に注意せよ」と表現したように、「ルールは破るが怯えさせるな」と言っています。

良質なリーダーシップ育成プロセスは、知と情の両面に注意を払い、積極的な参加者の研修を基本とします。すなわち、学習中のスキルを組織の現実問題の診断および解決に応用する実践学習、指導法です。経験学習とチーム単位のシミュレーションを多用し、受講者に活動を通じて自他の行動を検証できる機会を提供します。

私が主宰するセミナーは、このようなことを意識して保育者育成プログラムを組んでいるつもりです。

育成プログラム” への7件のコメント

  1. 青天の霹靂とはこのことです。これまで私は、今いる“人”がすべてだと考えていました。乳幼児教育は究極の人財育成であり、人が変われば、すべてが変わるものだと思ってました。人の教育をすれば、良い組織が出来ると考えていました。ですが、それだけではないのですね。以前、どうも職場の雰囲気に違和感を覚え、原因を探っていました。その時、「これまで築き上げてきた組織の文化」という物に一切見向きもしませんでした。私にとってその対象は、個人的に感じている現時点にいるその人そのものでしかなかったのです。反省します。組織の文化とは、“これまでその組織に勤めてこられたすべての方々の想い”のように感じます。そこを無視して、変革など出来ないということですね。またひとつ、大きな学びを得た感じです。
    良質な育成プログラムについての「難しいけれども危険過ぎない学習の場・有意義でしかも思考の枠組みを破ってくれるような経験・創造的思考を刺激する程度に現実からかけ離れ、同時に学習の意義を感じられる程度に現実との接点を保った経験」という文。悔しいですが、私にはまだ理解ができません。

  2. リーダーの組織との向き合い方は保育者の子どもとの向き合い方と通じてくるということが今日のブログを読みながら自分の中でいつもより強く残りました。子どもたちに「ああなってほしい」、「こうなってほしい」という思いがあったとして、それをただ口うるさく「ああしないさい」、「こうしなさい」と言ってしまうのでなく、自然とそうしたくなる環境や雰囲気を保育者が作っていかなければいけないなということを日々の保育から感じています。子どもたちの現状を把握して、それにあった無理のない環境の構成は子どもたちと過ごしている保育者ならできるはずです。子どもにひたすら言い続ければいいというものではないですよね。少しの意識の違いなのですが、この意識の違いを全員が持っていればゆっくりでもいい保育ができていくのではないかと思います。なんだかちょっと解釈が違っているのかもしれませんが、保育者として、子ども、職員と向き合い方も学ばせていただいています。

  3. リーダーがどのように力をつけていけばいいかということは、何かの本を読んだだけでそれが果たされるような簡単なものではないんですよね。書店にいけばたくさんのリーダー育成マニュアルのような本が並んでいて買ってしまいそうになることがありますが、現場から離れた理論だけを学んでもしかたがないということだけはわかるようになりました。「ルールは破るが怯えさせるな」という言葉が示しているように、理想論だけを語っていても変化を生み出すことはできません。そこにいる人と現場にある感情をきちんと把握し、そのうえでそこにどう働きかけていくかを考え、そして行動していくことを考えなければいけません。大変なことではありますが、簡単に進める道を選んでしまうことだけは避けなければいけないと思っています。

  4.  今回のブログを読んで少々反省しました。それは文化を大切にするという事です。変える時にはリーダーの真剣な思いや熱意などの姿勢が大切ですが、だからと言って強い思いだけでは具体的に変えるのは難しいのですね。今までの文化というのを大切にしながら、変革する姿を見せていく。とても大切な事です。私も今まで生きてきた事を急に否定されるといい気分にはなりません。しかし、それを相手が理解した上での否定とでは印象が全然違います。自分の事をしっかりと理解してくれていると私だったらプラスに考えます。ただその辺の塩梅は難しいですね。「ルールは破るが怯えさせるな」今までの組織などのルールを破るのは誰でも不安になります。そこをリーダーが支える事で不安も怯えもなくなります。知と情の両面に注意を払う事と言うのは、こういう事なんでしょうか・・・。

  5. 組織を変革させていくということで、そこにある「規範・文化」というものをいかに考えていかなければいけないかということはとても感じます。そこで今まで行われていたことが当然のことであり、当たり前のことだったことが「変革」という時期に来たがために大きく変わることはとても力がいることです。それが実働しなければいけない現場の人間はより、そういった意味では抵抗するのは当然のことだと思いますし、それを考慮に入れていかなければいけません。「リーダーは現状を見て」ということがたびたび出てきましたが、それには今の現状から変化する部分を見つけるというだけではなく、「現状を見て、急ぎすぎない」ということも言えるように思います。あまり急ぎすぎては、現場がいくら理解していても、せかされるがあまりそれがストレスになることもあります。こういうことが「ルールを破っても、怯えさせるな」ということなのでしょうか。ただ、それでもついていこうと思えるようになるためには「知と情に注意する」ことが必要ですね。そこで生まれる安心感やポジティブな意識があることで可能になることも多いのだと思います。あくまで自分なりの解釈なのですが、そのためにEQという能力が重視されるということはとても納得いきますし、もっと学ぶこと、知ること、努力することが必要だということを実感します。

  6. その理念・その方針、方法で始めることに比べて、既存の組織体を「変革」するのはとても大変なことです。既存の組織体を変革できるリーダーは、おそらく、「神」と称される存在でしょう(時に、うん?と思う人が「神」とされることもありますが、これは別な意味の「神さま」でしょう)。「変革とは組織の三つのレベルである「個人」「チーム」「組織文化」に浸透できる多面的プロセスでなくてはならない」とあります。この「個人」に浸透するプロセス、そしてその個人が「チーム」となった時のプロセス、そして個人チームで形成する「組織文化」に浸透するプロセス、さらに変革はおそらくこの3つが同時に進行する過程なのでしょう。「知と情の両面に注意を払い」変革を行うならば、「有意義でしかも思考の枠組みを破ってくれるような経験」を得られるようになり、このことが変革をもたらす原動力として作用することになるのでしょう。もっとわかりやすく、もっと情に訴え、そして変革の先のパラダイスが想像できるように、それぞれの変革プロセスを作り上げていかなければなりませんね。

  7.  〈これらの見直しをするべきところ、職員がついてこないことを、どうもリーダーは理想という原点を疑ってしまうことがあり、そこがぐらつくとより職員はついてこなくなります。変革は、人だけを教育したり、人だけを変えるのではなく、その人たちが築き上げてきた組織の文化をまずよく見つめ、それを大切に思いつつも、リーダー自ら語り、自ら発意し、自ら変革の姿を見せなければならないのです。〉〈机上論では対応できない〉宮城谷昌光著『天空の舟』を読んでいますが、こうして藤森先生のリーダー論に触れ、その見方でもって改めてリーダーのことを考える、何とも贅沢なことで、自分の身になるように感じたこと、心がけたいと思ったことを心に留めておけるようにしたいと思います。学歴は今からどうしようとも思わず、またどうにもできないことで、ただ、生きる上での賢さを今は静かに磨いていこうと、改めて思います。

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