自己管理のEQ

 子どもたちは、生活の中で「負の状況」に陥った時に、愛着存在がそれを支えてくれます。というより、子どもたちが負の状況に陥った時に、それから立ち直るために、母親を中心とした身の回りの大人はその子と愛着形成をする必要があるのです。以前、その王な話をしたときに、リーダーが負の状況に陥った時にはどうすればいいのかという質問を受けたことをブログで取り上げましたが、実は、リーダーが不満や怒りや不安やパニックなど負の感情に支配されてしまうことは、非常に困った状況を引き起こします。

 それは、負の感情は、圧倒的に支配力を持っているからです。脅威を感じたときに注意を促すため、脳はそのように働くようにできているのです。その結果、負の感情が「考える知性」を圧倒してしまい、経営戦略であれ、株価下落への対応であれ、目の前の課題に集中できなくなってしまうとゴールマンは言います。

 怒りや不安に駆られた状態の脳をCTスキャンで観察すると、扁桃体と前頭葉前部の右半分から扁桃体へつながる神経回路が活発に働いていることがわかるようです。快の気分を生み出す脳の回路は、前頭葉前部の左半分に集中しており、これが苦痛を増幅させる扁桃体やそれにつながる部分の活動を禁じているのです。人を苦痛の虜にする扁桃体の働きを抑制するうえで重要な働きをしているのは、前頭葉前部の左半分なのだと多くの科学者たちは考えているようです。この神経回路のおかげでリーダーは感情を静め、自信と熱意に満ちた雰囲気を保つことができるとゴールマンは言います。

 この負の状況に関して、ゴールマンはリーダーシップ論として述べていますが、実は、リーダーに限らず、負の状況に陥った時の対応は、すべての人に言えることです。そして、それは人との関係においてもいえることです。例えば、前頭葉前部の左半分の働きが特に活発な人、いつも明るい人と、意見が異なる相手にけんか腰で突っかかる性癖のある人を対峙させると、明るい人がけんか腰の人をなだめてしまうケースが多いと言います。怒りぽい人は、相手をイライラさせて、そのうちに相手まで怒らせてしまいます。言い換えれば、開回路のせいで、イライラしている扁桃体は、相手の扁桃体にも動揺を与えてしまいます。ところが、相手が同じような攻撃性を示さず、あいかわらず明るい空気を保っていると、興奮した扁桃体は鎮まるチャンスを与えられるのですが、少なくともそれ以上興奮することはなくなるのです。

 プレッシャーのもとでも、楽観的で明るい気分を維持できるリーダーは、前向きの気分を発散し、共鳴を起こします。自分の感情や衝動をコントロールできるリーダーは、信頼や安心や公平感に満ちた環境を醸成することができます。しかも、自己管理をするリーダーの姿勢は、下の者たちに伝わっていきます。いつも沈着冷静な上司のもとで、短気のレッテルを貼られたいと思う部下はいないはずです。

 このように、自己管理は人間の感情を縛り付けるものから解放するEQだとゴールマンは説明します。リーダーシップに必要な明晰な思考力や集中力を可能にするには、自己管理のEQだと言います。破壊的な感情に襲われて脱線する危険を防いでくれるのも、自己管理のEQだと言います。自己管理のEQを身につけたリーダーは、明るく楽観的なエネルギーを発散し、人々を前向きに共鳴させる力があるのだというのです。

 これらすべて、EQにとって不可欠な要素なのです。