リーダーのEQ

 今年の講演の演台で多いのは、「チームワーク」についてです。組織をより強固にするのには、その組織のチームワークが需要です。そのチームは、一つの社会ですので、社会の中で生きていく知恵が発揮されます。それが、EQと言われる力で、IQの高さばかりが求められてきた時代から、真に生きる力として改めて見直されてきました。チームワークのポイントは、チームのEQ力なのです。

 一昨年の講演の演台で多かったのは、リーダーシップ論です。組織の善し悪しは、そのリーダーの善し悪しによることが大きいのです。リーダーシップは、必ずしも一生懸命やればいいわけでもなく、職員に迎合すればいいわけでもなく、ひとがいいというだけでも駄目なのです。そこで、どんな資質が問われるかが論じられるのです。そんななかで、最近、脳科学が進み、脳の研究から、リーダーの雰囲気や行動が部下に与える多大なインパクトを与えるメカニズムが見えてきました。また、EQの高いリーダーが、部下を鼓舞激励し、情熱を喚起し、高いモチベーションやコミットメントを維持させることのできる理由も明らかになってきました。

 人は、感情を持っています。その感情は、社会の中で重要な役目を持ちます。それゆえに、感情の問題は、リーダーシップにおけるもっとも本来的、かつ、重要なテーマだと言われています。それは、太古の昔から感情のレベルで人々を導く役割を担ってきたと言われています。部族の長であれ、巫女であれ、人類の初期のリーダーは、感情面で強力なリーダーシップを発揮したのではないかと思われています。リーダーは、感情の指針なのです。人は、自分の感情をコントロールすることに悩みます。その感情を示してくれる人がいれば、不安な感情や、脅威に直面した時や、課題を抱えて人にとって救いになります。その意味からは、現代においてもリーダーは感情の指針としての役割が求められます。集団の感情を前向きに方向づけ、有毒な感情から発生するスモッグを取り除くことは、リーダーの重要な役目であると、EQの提案者であるゴールマンは語っています。

 EQを提案したゴールマンは、その力が情動をコントロールすることに重要な役割があるということから、企業のリーダーが、部下をうまく動かし、高い業績を上げるマネージャーは、普通の管理職とどこが違うかということを調査しはじめました。共同研究者として、コンピテンシー研究の権威者であるボヤツィスと、企業や組織のリーダーにコンサルティングをしてきたペンシルベニア大学教育大学院教授のアニー・マッキーの二人を選びました。そのリーダー論は、きゅいく分野においてもとても参考になるものですので、ゴールマンの考察について、少し考えてみたいと思います。

 ゴールマンは、感情とリーダーの関係をこのように説明しています。「どのような集団においても、リーダーじゃメンバーの感情を左右する最大の力を持っている。集団の感情を熱意の方向へ導くことができれば、業績の急上昇も夢ではない。反対に、集団の感情を憎悪や不安の方向へ向かわせてしまえば、足並みが乱れる。このことから、リーダーシップの重要な側面がもう一つ見えてくる。本来のリーダーシップとは、単に仕事がきちんとできるかどうかに気を配るだけではない。リーダーには、メンバーとの感情のつながり、すなわち共感も求められているのだ。」

 私が、最初に書いた、一生懸命にやっていても、きちんとした理論で説明しても、どうもリーダーとして違和感を感じたのは、感情のつながりにかけている場合が多いような気がします。人と人との関係は、机上の学問でもなく、過去の研究論文によるものでもなく、面と向かった感情の行き来なのです。