夢と希望

 「不易と流行」という言葉は、「変わっていいもの」と、「変わってはいけないもの」というように物事を二分にするような考え方をすることがありますが、実は、そのようにとらえるのではなく、「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。」ということなのです。物事の本質をきちんととらえることで、新しい変化をしていくことができるのです。保育を変えようとしない人は、保育という本質を理解していない人のことだと私は思います。

 人にとっての「夢」や「希望」は、どうでしょうか。ゴールマンは、それは、キャリアにつれて変化し、人生や仕事において大切なことも変わっていくと言います。そして、同様に、「理想の自分」も人生につれて多面化していくものだと言います。こうした変化によって、どの才能や能力を発揮するかが決まるだけでなく、どのような状況で才能を発揮する意欲が湧くか、どのようなときに共鳴を引き出すことができるか、なども決まってくると言います。自分の夢や大切なことが変化しているのに、それを無視して同じことを続けていれば、進むべき道を誤る可能性があると警告します。

 理想像はその人の情熱や感情や動機と不可分一体のもので、人生に何を求めるのかを最も深く掘り下げて表明したものであると言います。その理想像が、決断を下すときの指針となり、同時に人生に対する満足度を測るバロメーターになると言います。ただし、リーダーとして組織を率いていこうとするならば、自分一人の理想像だけでは十分でなく、組織の理想像を提示しなければならないのです。目的意識や方向性がなくては、組織全体に興奮が伝わっていかないと言います。個人の理想像が組織全体の将来像へと発展していくことが肝要なのです。全体のビジョンをまとめ上げるには、リーダー自身が他者の希望や夢に対して心を開いていかなければならないのです。

 よく、好き嫌いをなくすためには、目の前でそれをおいしそうに食べることが効果的だといわれています。私は、夢や希望も、他人の前で心を躍らせながら語ることで、その人に移っていくのだと思います。それは、必ずしも同じ夢であったり、希望でなくとも、自分の夢を見つけようとする動機にはなると思っています。そしてその夢は、現在をよりよく生きることにつながると思っています。保育に「長期計画」が必要と書かれてありますが、それは年案ではなく、もしかしたら園の理想像を語ることであり、将来の夢を語ることかもしれません。

 自分の理想を明らかにして、本当に歩みたいと思える道を確認するためには、自己認識のEQが必要です。しかし、いったん理想像が明らかになれば、希望が生まれて、沈滞した習慣を打破することができると言います。ゴールマンは、ナポレオンのこんな言葉を引用しています。「リーダーは、希望を売り歩く人」という言葉です。リーダーは、自分の内面を見つめて、希望の源泉を探り当てなくてはならないと言います。そこに、自らの理想像を目覚めさせるパワーがあり、そこから組織全体の理想があふれ出て、皆を一つの方向へ導いていくというのです。

ただし、このようなリーダーシップを発揮するにはビジョンだけでは不十分で、自分が直面している現実をはっきり見る能力が必要になってくると言います。将来を語るには、現在を語れることが必要ということなのでしょう。

夢と希望” への7件のコメント

  1. 60兆もあるという人間の細胞は、たとえば脳は1ヶ月で約40%、1年で全く新しい細胞に入れ替わる。身体全体が別の細胞に新陳代謝されるのに6年かかるという。つまり、細胞レベルでは人間は6年ごとに別の生命体になるわけだ。しかし不思議なことに6年経つとAさんがBさんになるわけではない。Aさんは6年ごとにA´(ダッシュ)また6年経つとA´´になるのだ。人格の本質は不変だが、時間や環境や人との関わりで変化する。これが人間における「不易と流行」なのだ。歳とともにさらに上の理想を追い求めるように変わり続けて生きていきたいものだ。挫折や生死に直面した時こそ、変われるチャンスなのだ。

  2. 昨日(3月30日)、大阪で藤森先生の講演を伺って、臥竜塾を拝見させていただきました。ホモ・サピエンスが生き延びられたのは、「協力」したから。協力の武器は「笑顔」。それから、ダイバーシティとインクルージョン。社会脳と共感。どれも興味深いお話でした。
    このブログを拝見して、藤森先生が篤い方だと再確認しました。毎日2000字!内容も濃くて、励まされました。今後もお邪魔します。
    私もときどきブログを書いています。今日は、藤森先生の講演について載せました。見ていただけたら幸いです。そして、不都合な点がありましたら、教えてください。
    ありがとうございました。

  3. 不易と流行の正しい意味を教わり、悩みが解決したわけではないのですが、考え方を整理することはできました。変化させるべきモノは何なのかをずっと探していたのですが、変わることが難しくなっているのは本質を理解できていないからということなんですね。結局はそこで、そこが理解できれば何を変えるべきで、どう変わっていくべきかは、自然と見えてくると考えると少しスッキリしました。本質を正しく理解し、確かな軸を持つことができていれば、細かな方法なんかは様々な考え方や出来事に触れるたびに変化していくべきものだと思っています。正しい意味で確かな軸を持つことができれば、それは頑固になることではなく、逆に柔軟になることだと思っていますので。

  4.  「リーダーは希望を売り歩く人」なんだか素敵な言葉ですね。少し前まで友人や職場の同僚などの前で自分の夢を語る事を少し恥ずかしいと思っていましたが、今では自信を持って話せるようになりました。おそらく自分に自信がついたと言うよりも、ナポレオンの言葉のように、リーダー自身の夢と希望を、自信を持って語る姿を見ていたら、共鳴したのかもしれません。また夢だけでなく、しっかりと現在の状況を把握した上での内容ですので、とても納得もいきます。冷静に考えてみても現状も把握せずに理想論を語ってばかりでは解決もできないですし、部下は自然と離れていくかもしれません。おそらく子ども達も大人の発言をよく聞いていると思います。子どもばかりに将来の夢を言わせるのでなく、大人もしっかりと自分の今後の将来を考え、夢を話す事も大切な保育の一つのように思います。

  5. 「変わっていいもの」と「変わってはいけないもの」、ブログの中でもたびたび話に出てくることが多く、その都度考えてしまいます。今は見切り発車のように「変えていいものかどうか」を考えるよりも、「変化」という科学反応を見ているといってもいい状態にいるんですが、しっかりとその本質は探して、吟味して、ぶれないようにしていきたいと常々思っています。そんななかで、「夢や希望」を語ることがこんなにも大切なのかと最近では感じるときがあります。どうも日々の日常を追うだけだと、ただ日課を過ごすことに集中してしまい、そこに目的がなくなっているように思います。そこでどこに向かっているのか、それがたとえ理想でも綺麗事でも語るということが一つの原動力になってきますし、保育にもハリがでてくるように思います。もちろん、今の現状を加味した上で話さないといけないですし、そこに気づいている人をある程度選ばなければいけません。しかし、組織にはそういった人は必要だというのをとても感じます。

  6. ネガティブな感情は伝染しますが、それと同じくらいポジティブな感情も相手の心を揺り動かすようです。隣の人が美味しそうに食べていると、食べてみようかなと思い口にして以降かつて嫌いと思っていた食材を普通に口にできるようになるという経験をしました。このことと同じように隣の人や周囲の人がポジティブにモノを考えているとやはり伝染してきますね。あらゆる面で、「よかったじゃない」は有効です。私自身もわりと「よかったじゃない」を連発するようになりました。これは生きている人の特権なんじゃないかと思います。311の津波の犠牲者には申し訳ないのですが、幸い生き残った人々には「よかったじゃない」と声をかけたくなることがたくさんあります。どうもそういうことを言うと不謹慎と思われる節がありますが、私はあえてポジティブに対応しようとしています。「夢や希望」、これは逆境や不幸の最中にある人ほど、耳にし考える必要があることだと思います。夢や希望を抱くことによって、その逆境や不幸を乗り越えられると思うのです。

  7.  〝保育を変えようとしない人は、保育という本質を理解していない人のことだと私は思います。〟気軽に読み飛ばせない一文が最初の段落から登場し、思わず息を呑むような思いがしました。〝「不易と流行」という言葉は、(中略)「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。」ということ〟スイカに塩をかけることによってその甘みを存分に引き出させるかのように、その本質を十分に味わう為に、異なる刺激に対して柔軟な姿勢、態度を示すべきであると捉えます。それに対して保守的であると、本来の美味しさを知らずに、もしくは知っていても忘れていってしまいかねないものなのかもわかりません。
     そして、〝「リーダーは、希望を売り歩く人」という言葉です。リーダーは、自分の内面を見つめて、希望の源泉を探り当てなくてはならないと言います。そこに、自らの理想像を目覚めさせるパワーがあり、そこから組織全体の理想があふれ出て、皆を一つの方向へ導いていくというのです。〟この一文にも、とても心が安らぐような思いがしました。自力の後に他力あり、必ず見つかる希望の源泉をいつでも探し出していきたいと思います。

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