フロー

「フロー」という状態は、仕事や学習に情動を有効活用している究極の状態と言われています。情動がコントロールされていなければフロー状態にはなりませんし、抑うつによる倦怠感や不安による同様にとらわれていてはフロー状態にはなりません。そういわれると、随分と難しいような気がしますが、本当は、誰でもそんな経験をしたことがあるはずです。この状態にある間、人は時間の流れを忘れ、ひたすらそのことに没頭し、得も言われぬ高揚感に包まれます。では、なぜこれが幸福感につながるかと言えば、これによって自分自身の複雑性が増し、それが成長につながるためです。ですから、私は、成長を激しくしている子どもには欠かせない状態です。

 子どもの遊びから、この一見難しそうに見える「フロー体験」を身近に感じることができます。この体験が、成長に欠かせないというのは、自分自身の能力を最大限に発揮し、自分にとって最も心理的エネルギーを発揮して取り組むため、そのプロセスを通して、自分の能力そのものと、より複雑なものへと取り組む力が向上し、この繰り返しを行うことによって、自分が成長していくからです。成長は、周りの人がさせるものではなく、自らの行為なのです。それに対して、お金をかけて娯楽を楽しむといったような行為は、気持ちをリセットしたりするのには有用ですが、それ自体は自分自身の成長をもたらすことがなく、長期的に幸せに貢献することはありません。

この「フロー体験」は、乳幼児における遊びからの発達への貢献に非常に重要な観点ですが、遊びだけでなく、生活においても重要なポイントとなります。まず、このフロー体験は、愛着と言われるような、子どもにとっての「安心基地」があります。子どもが負の状況に陥った時に無条件に戻ってくることができる、圧倒的な信頼状況を作り出します。何があっても、愛着存在が無条件で自分のことを受け入れてくれる、という安心感があることで、心理的なエネルギーが分散されることが無くなります。

次に、このフローには、子どもへの期待とフィードバックが明確になっていて、ブレないことがひつようです。何をやるのがよくて、何は悪いかの基本方針、価値基準、ベクトルが明確になっていることで、子どもは自分がどこに心理的エネルギーの焦点を充てればいいかが分かるようになります。そして、責任範囲がはっきりしていることが大切です。どこまでの範囲なら子どもがやってよくて、何を超えることは許さないかが明確になっていることが必要です。子どもがどの範囲のステージで心理的エネルギーを発揮していいか、自分で判断できる土壌を提供する必要があります。

そして、「共感」が必要になります。子どもと一緒になって、常に今起きていること、子どもが現在直面していることに、一緒になって興味・感心を示すことが必要です。子どもが学校から帰ってきたときに、親は、「宿題は?」「勉強しなさい!」というよりもまず、子どもが学校で何があったか、経験したことや、子どもは何に好奇心を感じており、何に悩んでいるかといったことに一緒に興味・関心に関心を寄せます。これにより、子どもの心理的エネルギーは、コントロールすることができない将来というものではなく、今コントロールすることができる、即ち自己統制感が感じられることに取り組むようになり、これが心理的エネルギーの集中につながります。そして、子どもの成長に合わせた適度な挑戦を提供していくことです。そのために、常に子どもがどのくらいの能力にあり、今取り組んでいることをどのくらいの割合でクリアできているか、それを本人はどの程度難しく感じているかということについて、常に注意深く観察する必要がでてきます。

これらによって、子どもは「心理的エネルギー」を自分でコントロールし、集中して発揮することを学ぶとともに、その安定的発揮を通して、高く自分自身の複雑性を増し、成長させることができるようになるのです。