怒りのコントロール3

 よく、頭にくると「やけ食い」とか「やけ買い」をするということを聞きます。また、思いをためるよりも、ぶちまけてすっきりするということを聞くこともあります。確かに、タイスの調査でも気晴らしは大なり小なり怒りの連鎖を断ち切ってくれます。テレビや映画を見る、読書をするなどの楽しみは怒りをあおる考えを中断してくれるようです。しかし、タイスによれば、ショッピングや食事で気晴らししようとしてもあまり効果がないそうです。

 また、「カタルシス」という言葉があります。この言葉の意味は、「文学作品などの鑑賞において、そこに展開される世界への感情移入が行われることで、日常生活の中で抑圧されていた感情が解放され、快感がもたらされること。特に悲劇のもたらす効果としてアリストテレスが説いた。浄化。」と書かれてあります。もともとこの言葉は、医学的療法のことで、毒などを飲んだ時に薬を使って吐かせたり、下痢によって体外に出してしまうことをいう意味のギリシャ語でした。そして、体内にたまった汚物を体外に排出し体内を浄化するという意味から、心の浄化にも使われるようになりました。このカタルシスは、怒りを発散させることにも使われます。怒りを発散させると、すっきりすることから怒りをコントロールには有効であるという人がいます。

しかし、ツィルマンの研究では、怒りの発散は、怒りの解消には役に立たないという結果が多くみられたそうです。それどころか、タイスの指摘によれば、怒りの発散は怒りを静めるためには最悪の方法だと言っています。怒りを噴出させると情動の脳が興奮状態になり、怒りが静まるどころか一層カッカとなってしまうからだと言います。アンケートの結果によると、相手に怒りをぶつけた場合、不快な気分がかえって長引く場合が多いと言います。それよりも、いったん頭を冷やしてから前向きのあるいは断固とした態度で相手と対決し、争いを解決する方が、はるかに効果的のようです。

これらの考察を見ると、つくづく私たちホモ・サピエンスは、相手をやっつけることでは生き延びてはこなかったのだということを確信します。また、子どもたちを見ると、そのような怒りのコントロールの力を持っていることも見ることができます。また、けんかをすることによって、怒りをコントロールする力を学んでいる気がします。赤ちゃんは、よく、物をとられて大声で泣いて、とった相手に怒りをぶちまけます。そんな時に、子どもはその評価を冷静にすることはできませんが、意外と執着せずに、さっさと違うことに目を向けます。そして、怒りを持ち続けることはしません。大人と違って、次の楽しいことに取り掛かるのです。

また、3歳以上になると、私の園に設置されている「ピーステーブル」という場所にいって話し合いをしています。その話し合いをしている姿を見ると、まず、そこまで行くまでに頭を冷やし、断固した態度で相手と対決しています。しかし、普段の生活で、それほどストレスがないのか、簡単に解決し、仲よく一緒に戻っていきます。たまに、自分で自分の気持ちの整理ができないときには、仲裁する子がいます。こんな時に、変に大人が仲裁に入ると、怒りが増大してしまうことがよくあります。大人は、集結しようとその怒りの原因を聞きだそうとしますが、子どもたちは、腹の立つことを思い出すたびに怒りが少しずつ積み重なっていくばかりです。そして、最後には大人の権力を持って、集結させてしまうのです。子どものけんかは、けがのない限りは、放っておけばいいのです。