感情のやり取り

 最近、どうも日中関係、日韓関係がぎくしゃくしています。その根底には、様々な歴史、思惑などがあるかもしれませんが、一番は、感情の問題です。国家間という、非常に政治的な関係でありながら、その根底的な部分では、感情的なことが左右するのです。コミュニケーション力というのは、赤ちゃんは母親との間で交わし始め、両親、家族、地域の人へと広がっていき、国家間においても必要になります。そして、コミュニケーションは、感情のやり取りであるとすると、国家間においては外交というのですが、基本的には国同士のコミュニケーションは感情のやり取りなのです。

この感情のやり取りでまず必要なのは、「情動チューニング」であると言われています。ハーバード大学で心理学の博士号を取得し、同大学で教鞭も執ったダニエル・ゴールマンという人がいます。彼は、IQ(知能指数)重視の伝統に疑問を呈し、脳の働きの体系的研究をEI(Emotional Intelligence)、すなわち「心の知性」の概念として確立し普及させた人物として広く功績を認められています。このEIについて以前ブログで取り上げましたが、もう少し、非言語コミュニケーションという観点から参考してみたいと思います。ゴールマンによると、「社会的気づき」という他者の感情に寄り添う能力、 および非言語的な情動の手がかりを読み取る能力を次のように分類しています。

まず、「原共感」という非言語的なやり取りによって相手とスムーズにコミュニケーションする能力があります。村田厚生氏と森若誠氏の共同研究「因子分析による社会的知性、 感性測定尺度の妥当性検証」での研究では、社会的知性(SI)、感性(EI)に関する質問による調査を実施しています。その時の具体的な質問として、この「原共感」についての項目は、「コミュニケーションを通じて相手のウソを見抜くことができるか?」「相手が感じていることを、自分のことのように感じることができるか?」「表情や目配せだけで、おおよその意思を伝え、 さらには相手が伝えようとしていることを読み取ることができるか?」「相手の表情の変化に気づくことができるか?」「相手の感情の変化を予測できるか?」としています。

さらに、「情動チューニング」という、全面的な受容性を持って傾聴する能力、 および相手に波長を合わせる能力についての具体的な質問項目を、「相手に応じて、対応の仕方を変えることができるか?」「人と話をするとき、自分の興味のあることばかり話さずに人の話を聞くことができるか?」「映画やドラマの登場人物といっしょに泣いたり笑ったりすることができるか?」としています。これらの質問項目を見るだけで面白いですね。これらの項目が、非言語コミュニケーションの最初の段階なのですね。

この「原共感」「情動チューニング」が、感情のやり取りに必要だと言っているのです。この「原共感」についての項目を皆さんはチェックできるでしょうか?私は、自分では自信がないのですが、赤ちゃんは、これらの項目はできている気がします。と同時に、これらの能力を学んでいる気がしているのです。では、赤ちゃんは、母親との関係から、いつごろから、多様な人々との関係から学ぶようになるのでしょうか。私は、孫を見ていて、かなり早い時期から、多様な人、他の子どもから学んでいる気がしています。頭の中で考えていたころは、授乳中は母親で、離乳食を食べ始めると父親、普通食になることには、他の家族と関係が広がっていくと考えていました。しかし実際に新生児から見ていると、人類は、出産のときから他人の手を借りる宿命を背負っている生き物として、生まれながら、母親だけを見つめるのではなく、広く周りを見回し、様々な環境から学んでいるように感じます。