インド報告13

 日本において、保育者の社会的地位の低さが問題になっています。特に保育園における保育士さんは、社会的地位だけでなく、その処遇の低さも問題です。人生において、ヒトとしての重要な時期を担い、国としての将来の投資であるべき乳幼児教育、また、それだけでなく、最近は保護者や地域の人々の安全基地としての役割まで求められてきているのです。その低さは、日本だけの問題でもないようです。それは、長い間、乳幼児期を相手にする仕事は、子どもの面倒を見る、世話をするというということであり、特に専門性を要しないと思われていたことと、保育者は、母親の代わりというイメージのためにほとんど女性だったために、処遇が低いようです。それが、最近の研究で、とても重要な時期としての乳幼児という捉え方に変わってきているのです。

 インドでは、非常に格差が激しく、中、上流家庭では、子どもの面倒を見たり、食事や掃除などの家事をするメイドさんがいます。それにならって、幼児施設にも、先生とメイドさんがいます。先生は保育室内で子どもたちにいろいろと教育する担当で、メイドさんは、廊下で待機していて、子どもがトイレに行くとき、服を着替える時などを手伝います。よくアメリカなどで見られるケアギバー(child-care giver)よりも、子どものやることを手伝うようです。そして、先生と呼ばれる教員は、モンテッソーリ教育の指導などを養成校で受けた人ですが、私立の就学前教育施設に従事する教員の多くは、教員訓練を受けた経験が乏しい無資格教員であり、低い給与で雇われているようです。それは、インドではいまだに乳幼児の世話は女性が行うものという社会通念もあって、幼児施設の保育者の多くは女性であり、これら低賃金で子どもの世話に従事する保育者は、法的にその身分が守られず、経営者によって搾取されていると指摘するひともいます。

 三日目に訪れた、ビルの1階の自宅を改装した保育施設では、1歳から3歳までは9時から12時まで、3歳から10歳までは8時30分から18時まで保育しているそうです。保育の目的は、最近の核家族によって失われてきた「仲間づくり」です。職員配置は、一クラス13?17人で、教員2人にメイド1人です。ここにいる教員は、1年間養成校で、絵を描いたり、子どもの面倒をどう見るか、モンテをどう教えるかを学ぶそうです。また、園長は、大学で修士課題をクリアした人と言っていました。この園の近くの家庭の保護者の年収は50,000インドルピー(現在レートで83000円くらい)で、共稼ぎで年収8?10万インドルピーだそうです。この乳幼児施設の入園料は6000インドルピー、保育料は月1600インドルピー(2670円)だそうです。ほかの園もほぼそれくらいだそうです。それに対して、保育者の給料は、月給4000?5000インドルピー(6700?8350円くらい)だそうです。

 最後に訪れた園は、純粋にモンテッソーリ教育を行っている園でした。入り口近くに、教具が部屋いっぱいに並べられており、保育者が一つずつ、その意味を丁寧に説明してくれたので黙って聞いていたのですが、正直そんなことは知っているということばかりでした。
 そのほかの保育室は、他と同じように、部屋にはカラフルな机といすが並べられ、壁には英語で書かれたり、生活に関係する図、棚には、車やぬいぐるみなどが並べられています。

 いよいよ最終日は、今回の目的である私の著書「見守る保育」を英訳してくれたネルー大学の大学院教授モトワニ氏の表敬訪問で、彼のご自宅での夕食に招待されています。

インド報告13” への5件のコメント

  1. 処遇の低さももちろんですが、保育の重要性や乳幼児期の大切さについて十分に理解されていないのが辛いところですね。でも何となくですが、理解という点では少しずつ変化してきているように感じています。現場からわかりやすい言葉で発信していくことや、地域や社会と共に活動し、そのことの意味や楽しさを感じてもらうなど、1つずつ事を進めていくしかないんですよね。焦っても仕方ないことなので、こちらも少しでも楽しみながらやっていければと思っています。ところでインド報告ではモンテッソーリばかり登場していますが、HOIKUの認知はどの程度なんでしょうか。日本と同様で、インドの状況も気になるところです。

  2. 新政権になって、消費税増税分を財源にした『幼児教育無償化』が話題になってきました。3?5歳までの保育料を無償なら、幼稚園はたぶん諸手を挙げて賛成でしょうが、保育園への影響はどうなんでしょう?自民党は「乳児は家庭で育てよ、1?2歳児は保育、3歳?5歳が幼児教育」といっていますが、はたして少子・核家族化の時代にそれでいいんでしょうか?消費税増税分から7000億円。それに3000億円積み上げて計1兆円が「子ども子育て関連三法」関連事業に使われるそうです。しかし、3?5歳の無償化にかかるコストは7900億円とも言われます。これでは施設に下りてくる予算はどれほども残りません。子ども手当と同じで何とも政治的な匂いがしてきます。

    せっかくの1兆円もの予算。優先順位からいうと、少子化対策・待機児童対策のための施設の拡充や保育サービスの充実、そして保育の質の向上のための保育士の待遇改善のためにもっと予算を使うべきだろうと思います。特に、公立と私立の保育士の処遇はあまりにも格差がありすぎます。新宿せいがのように男性でも働ける私立保育所がもっと増えてくれれば、母親の子守りの代わりと言った古いイメージが払拭されると思うのですが・・・。どうしても幼児教育無償化を実現したいなら、せめて5歳児だけでも。でもそうなると5歳児義務教育化なんてことになりかねない。いや?それは困る(笑)!

  3. 日本でも保育士の処遇に関してはあまりいいとはいえない現状ですね。しかしドイツもそうですが、どの国でもそれほど保育者の処遇はよくないと聞きます。まだまだ、乳幼児の育ちについて、あまり目が向いていないように感じますし、託児、早期教育といったようにプレ小学校といった印象が根深いですね。乳幼児に対しての育ちや発達といった部分にもっと目が向くといいのですが、しかし、確かにすぐに改善することはないので、地道にまず自分の周りの意識を処遇だけに捉われず、この仕事に誇りをもってやっていけるような職場にしていくことが先決ですね。そのためにももっといろんな情報を取り入れ、勉強していければと思います。

  4.  先日、テレビで成人した人と有名人との対談を見ました。その中で保育士になりたいが、給料が安いため不安という話しをしていました。確かに日本で社会的に見ると地位の低さはあるのかもしれません。それはブログにも書いてあるように子どもの面倒を見る人という印象はあるかもしれません。しかし、藤森先生の講演の中で私達が保護者や社会に保育園の役割の重要性を伝えていく必要があると言われました。それはインドでも同じようですね。乳幼児期の育ちが国の経済の成長につながるなど、データとして実証されているのにも関わらず、まだまだ日本もインドも乳幼児教育に重要せず、目の前の経済政策に追われていると思います。乳幼児期の大切さが今後注目され、私達保育園の役割も明確になるといいと思います。

  5. 保育士の処遇については、今回のブログにあるように、日本もインドもそれほどよくありません。やはり、託児、すなわち本来お母さんが家でやる育児を、労働等で行えないから、保育にかける子を預かる保育所に、ということになります。そうすると、ではお母さんの代わりに保育をする、といった場合、保育士の先生の処遇をどうするか、ということになり、結局、保育事務を委託する、ということで「事務」だから、給与は行政の事務職、から算定された額、ということになり、幼稚園の教諭の処遇を大きく下回る、ことになったのでしょう。今後の日本の保育園で働く保育士さんたちの処遇は今後どうなるのでしょう?株式会社が保育事業に参入し、保育園はますます「託児」の色を濃くしていっています。

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