インド報告12

 インドの幼児施設で、今回見学した園はモンテッソーリ教育を基本とすると言っても、どの園でも年齢別にクラスを構成していました。それは、まだ多くの園では、スクール形式と呼ばれる一斉に椅子に座り、前を向いて先生のやること、話すことを聞くというスタイルですから、年齢別に分けて保育をすることになったのでしょう。今回のインドでの訪園は、冬休みだということもあり、子どもたちの普段の活動を見ることができなかったので、どのくらい子どもたちが自主的に遊んでいるか、主体的に生活しているかを見ることはできませんでした。

 そんな理由で、最初の見学園では、4,5歳児の保育室も3歳児の保育室とほぼ同じような設定で、部屋に数人が集まれるような机と、化粧コーナー、絵本コーナー、隠れ家が用意されていました。インドは、幼児教育については、まだまだプログラムを統制する規則や基準が存在しておらず、提供主体によってカリキュラム、教員の保有資格、教育の質が大きく異なっています。この園は、大きな法人で、幼児施設だけでなく、小、中、高校まであります。園の見学の後、同じ経営の小、中、高校を見に行き、その校長から話を受けました。
 校長先生は女性で、校長室でチャイをごちそうになりながら話を聞きました。おおむねの方針は、「いまの競争から学力を上げようとする風潮には反対で、ひとに対しての感情を育てたい。競争すると、子どもたちは自分を見失ってしまう。そのために、まず他の子どもに対して観察すること。そして、世界を知らせるために、経済的問題のある子、障害のある子など多様な子どもと共に学ぶことをする。そのために、彼らに対しても就学援助をしている。いくら英語を教えるにしても、最初は母国語で話す。そして3歳では自信をつけさせ、聞いて、考えて、そして話すことをしていく。早期教育は必要ないと思っている。その年齢に合った活動をする。きちんと子どもの成長を見たら、まず、自己肯定感をつけることが重要である。」

 そして、いまの子どもたちの様子、家庭での状況についてこう分析しています。「核家族化が進み、子どもに対してのはっきりしたビジョンを持つ家庭が少ない。また、価値観が多様化し、見失っている。知識をインターネットから知る人たちが増え、実体験からの知識が減ってきている。今後は、人同士の関わる力が必要である。」というような内容は、人口増加が課題であり、人口が多いインドでも、欧米にある少子社会国家でも同じようであることには少し驚きました。その原因を、この校長は、核家族化ということを言っていましたが、ネット社会や、豊かな社会における協力の必要性の減少などにも原因があるように思います。この問題は、次の日に訪れたビルの1階の自宅から園を立ち上げたところでの園長先生が指摘していました。こちらの園は、それほど高い階級の子どもたちを保育しているわけではないのですが、やはり核家族化による子ども同士の関係が希薄になっていることを危惧していました。

 次の日に訪れた「PLAYWAY SCHOOL & KIDS CLUB」では、園長先生の話ではこの園はとても人気があり、今度新しくもっと広い別の場所で開園するそうです。当日は、冬休みに関わらず、特別に私たちのために子どもたちを登園させてくれて、保育を見ることができました。しかし、狭い部屋で、みんな前を向いて、一斉に歌を歌ったり、手遊びをして見せてくれた保育は、先日に見た保育が先駆的というか、私たちの考えに近いという意味が解りました。また、部屋は、三部屋あったのですが、どの部屋もディズニーキャラクターの絵で壁が覆い尽くされていました。
政府による、早い時期での質保証を実現するための法制度整備を進めつつあるのは、納得がいきます。

インド報告12” への5件のコメント

  1. モンテは基本異年齢の自由保育ですから、このインドの保育園も今は年齢別でもいずれ異年齢に移行するんでしょう。同年齢保育は子どもたちの競争意識をかきたてる保育としてモンテでは明確に否定されています。

    ≪同一年齢によるクラス編成は、教師中心の教育のための便宜さから生まれた不自然な集団である。年齢混合の縦割りクラスは自然的で、子どもたちはよく助け合っている。ここでは、上の子は英雄になり教師になり、下の子は賞賛者になる。上の子は下の子を愛し援助するとともに、自重して自らも励む。下の子は上の子を慕い尊敬し、これを見習おうとしてやる気を起こす。≫(「創造する子ども」)

    多子社会を迎えたインドでありながら、きちんと子ども一人一人の関わる力を養う保育の重要性を語るインドの教育者の慧眼と専門性に敬服します。保育室の環境構成にも精一杯の工夫の跡が見られます。多様性を認める教育、母国語重視による国民意識教育、コミュニケーション教育、自己肯定感の醸成、どれも今の日本に欠けているものばかりです。インドは教育大国としても底知れない可能性を秘めている国ですね。

  2. 校長先生が話された方針はすごく大事なことですね。教育全体がいかに効率的に経済活動に有利な力をつけていくかという方向に進んでいるように思えるのですが、乳幼児教育ではまさにその弟分の様な感じで、英語を教えてみたりというところが注目を浴びているようなところがあります。でもそうではなく、きちんとそのときに遂げるべき発達を遂げられるように、そして共に生きることを楽しめる体験ができる環境を用意するという視点が、これからの社会を見据えた上でも必要なんだと思っています。そう考えたとき、社会環境は日本とインドでは大きく違うんでしょうが、本質的なところで子どもたちの置かれている環境の課題はこんなにも似ているものかと驚きました。ネット社会による実体験の減少なんかは、今でも日本の課題でもあると思います。乳幼児教育の役割は大きいですね。

  3. 世界での人口が一・ニを争うインドでさえ、人とのコミュニケーションが希薄になっていることが問題にされているんですね。意外といえば意外です。そこには核家族化や便利になったがゆえに人との付き合いや協力する経験が少なくなっている社会状況は日本やその他の国の問題点と合致することが多いですね。単に人口が多いからということはないのかもしれません。特にインターネットなどのツールは人とのコミュニケーションの場をより少なくするでしょうし、ブログにもあるように生の経験が不足することになりかねません。その時代のなかで求められる資質や保育の目標となる部分はやはり「自己肯定感」なんですね。また、多くの人や環境にいる人との多様性のある環境にも触れられていました。どれも今課題になっていることばかりです。日本とインドでは環境も法制度整備も違います。しかし、「子ども」というものについての考え方は実に似ていますね。どんな状況下でも普遍的に大切なものがあるということを改めて感じます。

  4.  モンテッソリー教育を実践しているのに、年齢別で保育を行っているのは不思議に感じました。ただ部屋の中の環境はコーナーに分かれていて、子どもたちがそれぞれのコーナーで遊ぶと思いますが、まだまだプログラムがしっかり統一されていないので、まだまだ発展途上のようですね。しかし、今までのブログを読む限りでは、インドの底力を発揮すると、すぐに世界に対抗するくらい立派なカリキュラムを作りそうな気がします。実際に、見学された施設の校長先生の話しを聞く限り、これからの子どもに必要な能力「子ども同士の関わり」というキーワードを掲げているのを聞くと、とても親近感が湧きました。日本と同じような課題を抱えるインドと今後とも何かしらの形で繋がりがあり、保育を通して国が密に結ばれるといいですね。

  5. 競争の激しいインド社会にあって、訪れたセントメアリー小中学校の校長先生のお話は貴重ですね。曰く「ひとに対しての感情を育てたい。・・・その年齢に合った活動をする。・・・まず、自己肯定感をつけること」等々。どうやらインドではこうしてエリートを作っていくのでしょう。「核家族」化は東アジア、南西アジア、南アジア共通の社会的現象のようですね。日本も核家族ですが、横の関係を密にして、核と核とが結びつき合い、互いの子どもたちを観れる機会が持てればいいのにと思います。「政府による、早い時期での質保証を実現するための法制度整備を進めつつある」とありますが、おそらくやり始めたら、速やかに実現させるのだろうなと思いました。インドはやはり大国ですから、やり始めたら早いはずです。今は欧米化の保育室ですが、カリキュラムがきちっと決って補助金でもつこうものなら、あっという間に素晴らしい保育室が現れるよう気がしました。今回のブログの一番下の壁絵、マーメイドとスパイダーマンの腰から下が見て取れます。子どもたちに楽しい環境、雰囲気を、という意気込みがディズニーキャラクターなのかもしれませんが、子どもたちのこなすデイリーは結構小刻みにしっかりと時間割されていましたね。それにしても家具や壁絵、カラフルですね。ヒンズー教の寺院とはまた異なるカラフルさです。

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