おたのしみ会の考察6

 幼稚園教育要領と保育所保育指針の整合性が図られ、領域が同じ表記になりました。それによって、その発達の切り口を通して保護者に子どもの成長を伝える内容は、幼保共通になったのです。しかし、その内容は、その独自性を重んじるということで、大綱化という、ある意味ではどうにでもとれるような書き方にとどめています。しかし、方法は多様てもであったり、独自性があってもいいのですが、子どもの育ち、その時期としての発達、保育として大切なことは独自性で行ってはいけないのです。きちんと専門性を持って、子どもの発達と、その内容をとらえないといけないのです。

 少し前に、埼玉大学の志村洋子氏に講演をお願いしました。そのテーマは、「保育における音楽」です。まず、幼稚園教育要領と保育指針の中で、表現領域で大切なことを「自分なりに表現すること」と「創造性を豊かにする」をあげました。普段からの保育の中で、この二つを大切にすることが、表現領域であり、音楽においても、これを大切にするべきであることを強調しました。自由に表現できるようにすることが大切で、言われたとおりに表現することは表現することにはならないのです。

志村氏は、こう説明しました。子どもは、発達において、音楽、造形、身体運動等において現れる行動として、子どもが自覚し統制できない場合を「表出」と言います。それが、ある程度本人が自覚している場合を「表現」と言います。赤ちゃんは、日々の生活の中で周囲の人の声や音を選択的に聴いています。そして、周囲からの歌いかけに対して好んで聞きます。また、メディアなどからの多種多様な音や音楽も好んで聴くようになります。そして、それらの音楽に興奮して声を出し、体を動かすことをします。しかし、これらの行為は、自ら意図して行っているわけではなく、本人が自覚しているわけでもなく、自然と反応しているのです。ですから、この時期では「表現」ではなく、「表出」というのです。そして、赤ちゃんは感情表出の手段として、一人でも声を出して「vocal play」をしたり、音や音楽にあわせて身体を揺らし、好きに声を出します。

このお話を聞いて、少し前に私がブログで「生活」と「遊び」について何回か取り上げたことがありました。その時に、私は、赤ちゃんは生きるためにいろいろなしぐさを、自覚なしにします。それを、遊んでいるということがありますが、それは、生きるための活動ということで、「生活」と名付けた方がいいのではないかと提案しました。私は、「遊び」とは、本人が自覚し、目的を持って行い始めてからの行為をさす言葉ではないかと書きました。それは、まさに、乳児において遊びと言われるものは、「表出」であり、幼児になるにつれて、目的を持ち、自覚してする遊びは「表現」ということになります。ということは、音楽にしても、遊びにしても、運動にしても、保育者は、表出から表現へとつないでいかなければなりません。また、その変化の過程を、保育園においての発表会では、保護者に見てもらうことも必要かもしれません。

発表会には直接関係ないかもしれませんが、志村氏は、様々な人が音楽について考察して内容を紹介してくれました。とても興味深いものがあります。まず、MacDermott & Hauser (2006)の研究によると、「ヒトの赤ちゃんは音楽が好き!」ということで、静けさよりも子守歌や遊び歌を好み、類人猿などの赤ちゃんは、音楽よりも静けさを好むのだそうです。また、Trehub & Trainor,(1998)によると、親が乳児に歌いかける行動は文化を問わず観察されるそうです。また、Davidson, McKernon & Gardner( 1981)によると、幼児期になると言語表現とは異なる様相で創りうたを歌うことがわかりました。そして、Mang(2006)によって、幼児は「環境としての音楽」文化の中で聴き、覚え、記憶し、表出・表現することが研究されました。

これらの研究は、日々の保育の中で、子どもたちにどのように音楽と触れ合わせればよいかのヒントになります。