おたのしみ会の考察5

5領域に整理された平成元年の幼稚園教育要領で、「表現」という領域が「この領域は、豊かな感性を育て、感じたことや考えたことを表現する意欲を養い、創造性を豊かにする観点から示したものである。」ということであるということが書かれたのは、幼児教育は小学校教育と違って、教科を指導することではないことが明確になりました。ですから、もし、発表会で「表現」療育の発達を保護者に見せるとしたら、上記の観点をきちんと押さえないといけないのです。しかし、それをある活動を通して行うとしたら、それは、絵画の面であったり、音楽リズムの面であることは変わりません。

では、この教育要領の「表現」領域において、直接、音楽リズムに関することは、どのような「内容」として書かれてあるのでしょうか?「 (4) 感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり自由にかいたりつくったりする。」「 (6) 音楽に親しみ、歌を歌ったり簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう。」の2点しかありません。しかも、「留意事項」として、「(3) 幼児が自分の気持ちや考えを素朴に表現することを大切にし、生活と遊離した特定の技能を身に付けさせるための偏った指導を行うことのないようにすること。」とあるように、「生活と遊離した特定の技能を身に付けさせる」ような指導はしないようにと警告しています。

それが、平成10年になると、「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。」となります。表現領域から「表現する意欲」は消えます。その代わりに「自分なりに」というように、より教え込むようなニュアンスは消えていきます。しかし、その内容については特に変わりはないのですが、「留意事項」は、「内容の取扱い」と変わり、そこに「意欲」が書かれます。「(2)幼児の自己表現は素朴な形で行われることが多いので、教師はそのような表現を受容し、幼児自身の表現しようとする意欲を受け止めて、幼児が生活の中で幼児らしい様々な表現を楽しむことができるようにすること。」と書かれ、自己表現が素朴な形であっても、それを受容するようにと書かれます。

それが、現在使われている教育要領まで引き継がれています。では、保育所保育指針では、どのように音楽関係は取り扱われているでしょうか。平成10年施行された保育所保育指針では、6か月未満児、6か月から1歳3か月未満児、1歳3か月から2歳未満児、2歳児、3歳児、4歳児、5歳児、6歳児と年齢区分ごとにねらい及び内容が設定され、3歳末満児については、その発達の特性からみて各領域を明確に区分することが困難な面が多いので、5領域に配慮しながら、基礎的な事項とともに一括して示してあり、3歳児以上においては、内容のところにだけに領域ごとに記述されています。しかし、「保育の原理」の中の「保育の目標」に領域の内容が書かれてあります。そのカに「様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。」とあるのは、表現領域でしょう。

それが、平成20年保育所保育指針では、年齢区分は子どもの発達での記述のみで、ねらい及び内容は平成20年の幼稚園教育要領と同様に、 子どもが保育所終了までに育つことが期待される事項が、 領域ごとにねらい及び内容が記述されるようになりました。それにより、幼児期の教育について幼稚園と保育所での整合性が強まったのです。その整合性は、記述の仕方が同じになっただけでなく、5領域に関わる保育の目標も、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定されている幼稚園の目標と共通のものとなったのです。

この改訂は、保育所保育指針においては大きな出来事でした。それは、この指針の中で保育所における保育の内容に関する事項及びこれに関連する運営に関する事項が定められることになったために、保育所保育指針は、大臣告示となったのです。そのために「指針」ではなくなり、法的規制がかかり、 各保育所は保育所保育指針に規定されていることを踏まえて保育を実施しなければならないことになったのです。

おたのしみ会の考察5” への9件のコメント

  1. 保育指針の位置づけが変わり、ここに書かれているようなことを実践していかないといけない立場になったわけですが、それでも変わることのない保育園はこれからどうなっていくんでしょうか。内容が変わったことの理解は進んでいるように思いますが、告示化についてはイマイチ伝わりきっていないように感じています。と、そのように自分が感じているのであれば、まずは自園の取り組みをしっかりしたものにし、そして周りにも影響を与えていけるようにならなければいけないのですが。表現活動というとどうしても様々な受け止め方があるもんだとか、そもそもわかりにくいことでもあると思うので、取り組みが様々になっている現状も分からないわけではありません。でも、だからこそ園長はきちんと学び、その意味を理解することが大事なんだと思っています。でもやっぱり難しい内容ですね。

  2. 1948(昭和23)年施行の「学校教育法」(第77条)には、幼稚園の位置づけを『幼稚園は、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする』とあり、学校教育機関の一種でありながら、年齢に応じた教育内容すなわち保育の必要が論じられています。「適当な環境」「発達の助長」という経験主義的な教育理念が初期のころから意識されていたのは特筆すべきことです。GHQはたぶん欧米の教育思想でもって幼児教育を構成しようと試みたのでしょう。

    その後、幾多の改訂を経て平成20年の教育要領と保育指針の大改訂を経て、日本の幼児教育はこの原点に回帰したかに見えます。しかし、ドイルのバイエルンカリキュラムのような補助金交付に関わる罰則規定がないので、国の定めた保育の大綱と現場との間にはかなりのギャップがあります。教育要領や指針を読んでいるはずなのに、発表会や運動会となると、自園の一大“イベント”として企画や練習に全力を傾ける園もあります。このような園は、子どもの最善の利益を謳った子どもの権利条約に違反していることを自覚すべきですね。

  3.  今は一保育士として園の理念を基に保育をしています。とは言っても「見守る保育」は藤森先生がよく講演でも言われるように保育指針、幼稚園教育要領、子どもの権利条約をよく読み込めば、自然とこういう保育になるように、平成20年に指針が告示化された今はどの施設も同じような考え方になる必要があるのに、なかなか変わろうとしません。もしかしたら変えたくても変え方が分からない園もいるかもしれません。こうして見守る保育を実践している私達の役目は、そういう人たちの道しるべになる役割かもしれません。

  4. 保育所保育指針が告示かされたというのは知っていましたが、それに準じている保育園がどれほどそれを考慮し、実際の保育が変わってきたかというのは少々疑問が残るように思います。しかし、保育所の指針と幼稚園教育要領の内容がかなり共通してきたというのはとても重要なキーワードですね。より主体的な内容に進んでいるというのがとてもよく分かります。保育をする上でこういったことはもっと考え、理解し、整理していかなければいけませんね。そのなかで保育を変えていくことは必定でしょうし、その内容や意味は正確に洞察していくことを意識していかなければいけないと思います。まだまだ、知らずにいることや意識していないことが多く、まだまだ学ぶことが多いですね。

  5. 平成20年に「保育所保育指針」が大臣告示とされ、その遵守が最低基準監査の対象となりました。そして、行政による監査が毎年あちこちで行われているのですが、「指針」通りに保育が実施されていないことによる「文書指摘」「口頭指摘」ということは未だに聞いたことがありません。ということは、認可保育園の全てが「保育所保育指針」に沿って保育を行っているということでしょうか?どうもそうではないような気がします。厚生労働省の保育課には保育専門官がいますが、監査を行う地方自治体には「保育専門官」は存在せず、運営指導の行政官がいて監査の実施を行っている、というのが実態です。それ故、労務や会計、いわゆる一般的な児童処遇についてはわかりますが、たとえば「様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。」を確かめる手立てを持っているようには思えません。まぁ、監査で指摘される前に、税金が投入されている施設は「要領」や「指針」に拠らなければならないと思います。そうした「要領」や「指針」に拠りつつ変えていかなければならない事項は次の改訂までに明確にしていく必要があると思います。「生活と遊離した特定の技能を身に付けさせるような指導」をしてはならないのにやっている現実を目の当たりにするたびに複雑な思いを抱いてしまいます。

  6. 指針や要領の改訂と共に、一人ひとりの発達・個性・指導ではない環境などが重視されるようになっていった経緯が感じられます。改訂は、なぜ行われるものであるのかと考えた時、時代に合っていないからとか、新しい発見があったとか、将来を見通してどのような力が必要かが明確になったとか、ある重大な問題が発生した等の理由が考えられそうですが、実際のところはどうなのでしょうか。少なくとも、改訂が目指すものは現時点からの改善であるわけで、現場が何も変わらないのはそもそもおかしいということになるのでしょうか。指針を上手に読み解き、国が向かっている方向を把握する力が必要になるわけですね。

  7.  先程、強制ではない為にとコメントしたのですが、勉強不足でした。平成20年の改訂が、大臣告示となり、そのために「指針」ではなくなり、法的規制がかかり、 各保育所は保育所保育指針に規定されていることを踏まえて保育を実施しなければならないことになったということを初めてしりました。大変勉強になりました。
     なら尚更、鼓笛隊などを園の特色やいわば〝売り〟のようにして、行事の度に日常的に子ども達に「生活と遊離した特定の技能を身に付けさせる」ような指導をしている保育園というのはおかしいのではないでしょうか。改めて行事にしても、日々のいわゆる〝表現活動〟にしても見直していただきたい点が、日本の多くの保育園には見られるように思うのです。

  8. 平成元年の幼稚園教育要領では、「留意事項」として、「(3) 幼児が自分の気持ちや考えを素朴に表現することを大切にし、生活と遊離した特定の技能を身に付けさせるための偏った指導を行うことのないようにすること。」とあり、正直驚きました。そう言ったようなことを教育要領に書くんだという驚きです。
    そして、保育所保育指針は、大臣告示となる地、法的規制がかかり、保育所は指針に則り保育をしなければならないというのは知りませんでした。

  9. 〝「生活と遊離した特定の技能を身に付けさせる」ような指導はしないようにと警告しています。〟と定められているのにも関わらず、そのような活動や行事をその園の独自性と捉えてしまい、今もなお行っている園も少なくはないと思います。
    生活とは、生きていくための活動だということが前回のブログに書かれてありました。それに照らし合わせてみれば、いろいろな問題が見えてくるように思われますが、どうなのでしょう。
    変えたくても変え方が分からないから、そのままのやり方をしているということもあるでしょう。そのような人たちの道しるべ的な役割を、自分たちは担っていかなければならないということを感じます。

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