おたのしみ会の考察4

現在の5領域になる前、6領域だったころの分類は、幼児の生活経験を一応組織的に考え、かつ指導計画を立案するための便宜からしたものと説明され、小学校の教科とは異なるとされているものの、小学校の国語、社会、理科、音楽、図画工作、体育等の6教科と幼稚園の6領域とは、よく似ていることから、現場では小学校の各教科と幼稚園の6領域とは同一性格のものと考えられやすかったようです。

しかし、昭和39年に、「幼稚園教育要領」が初めて告示となった際、改訂された教育要領では、活動を分析し、137項目を6領域のねらい群にまとめました。そして、領域は相互に密接な関連を持ちながら、幼児の具体的・総合的な経験や活動を通して達成されるものであると表記されたのですが、特に絵画製作や音楽リズム、健康領域の運動等においては、領域別の指導計画や実際の指導が行われてしまっていました。実際の子どもたちの生活や学習は、領域ごとに行われるのではなく、相互に関連しあい、総合的に経験していくものですが、保育者養成校では、科目が領域別に分かれて開講され、特に絵画制作や音楽リズムは、それぞれ別々に、その内容に特化して学んできてしまうために、そこだけを取り出して指導するようになったのでしょう。

そのような経緯から、「音楽リズム」という領域では、音楽の中でリズムが強調され、全国の幼稚園、保育園で鼓笛隊が組織され、打楽器が中心の指導が行われてしまいました。それは、39年版の幼稚園教育要領の「音楽リズム」の領域には、「幼稚園修了までに幼児に指導することが望ましいねらい」として「1.のびのびと歌ったり、楽器をひいたりして表現の喜びを味わう。」「2.のびのびと動きのリズムを楽しみ、表現の喜びを味わう。」「3.音楽に親しみ、聞くことに興味をもつ。」「4.感じたこと、考えたことなどを音や動きに表現しようとする。」 の4つが挙げられているからです。非常に、教科的ですね。この成果を披露するのが発表会であったら、小学校のような合唱祭であったり、器楽演奏であったりしても無理ないですね。しかも、指導上の留意点を見れば、よりそのことがうなづけます。歌の指導について、「しだいに発声、音程などにも注意して歌うようにさせること」とありますし、楽器の指導について、「リズム楽器を主体として…基礎的なひき方の指導を加えたり、可能な場合には簡易な分担奏を楽しませたりすること。」などが書かれてあります。また、音楽鑑賞について、「できるだけすぐれた音楽に接する機会を多くし、」とあるように、イメージとして、教室内で授業をしている光景が目に浮かぶような内容です。

平成元年版から「5領域」に整理され、これら「音楽リズム」と「絵画制作」は、「表現」に統一されました。そして、保育内容に限っていえば、教育基本法から幼稚園教育要領へと、そして保育所保育指針へとその基本となる考え方は統一されていきました。そして、それぞれの領域は教科ではなく、保育項目から派生し、また保育内容に限定されました。そして、「表現」の領域は、「豊かな感性を育て、感じたことや考えたことを表現する意欲を養い、創造性を豊かにする観点から示したものである。」とされ、歌を歌う、楽器を演奏する、絵を描くこと自体が目的ではなくなりました。ねらいはあくまでも「いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。」「感じたことや考えたことを様々な方法で表現しようとする。」「生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。」というように、「豊かな感性」を持つことで、「表現しよう」とし、「表現を楽しむ」ことになったのです。

この時点で、幼稚園、保育園における発表会は、変わらなければならなかったのです。

おたのしみ会の考察4” への9件のコメント

  1. 戦後、GHQは日本の民主化にとって、民主主義教育が重要施策の一つという認識から、教育制度の改革に着手しました。1947(昭和22)年に「教育基本法」を制定。翌1948(昭和23)年には、「学校教育法」が施行され、幼稚園が初めて学校教育機関として位置付けられました。

    一方、同年には児童福祉法も成立し、保育所が厚生省の管轄になっています。この時、戦後の幼・保二元制度が法的根拠を持つこととなりました。しかし、当時は、「幼稚園は学校であり、保育所は児童福祉施設であるという性格の違いを認識しながらも、保育は本質的に共通であり、ともに乳幼児を保育する施設である」というのが国の考えにあったようです。この年に発表された「保育要領」が幼稚園・保育所・家庭などの保育内容の公的基準になっているのはこのせいです。

    保育要領は、GHQの指示で作成されましたが、ここに示される保育内容は、「見学」、「リズム」、「休息」、「自由遊び」、「音楽」、「お話」、「絵画」、「制作」、「自然観察」、「ごっこ遊び・劇遊び・人形芝居」、「健康保育」、「年中行事」の12項目もあります。幼児の生活全体を保育対象としていて、幼児の興味・関心や経験が重視されています。のちに、保育要領は、幼稚園教育要領と保育指針に分化していきます。これまで就学前の幼児学校としての性格を強めてきた幼稚園に対して、その影響下にありながら、保育所には保育要領の精神が受け継がれているようにも思えます。

  2. 39年版の幼稚園教育要領の「音楽リズム」の領域を読んでいると、これが今のものであったとしたら私たちのやっていることは全く即したしたものではありません。それだけ大きく変わったということなんでしょう。今の発表会のあり方は小学校のあり方を真似したり、指導要領に示されいたりと、それなりの理由はあったということがよく分かりました。ただ、そこから指導要領の内容も変わり、求められる保育も変わってきたことを考えると、今までがこうだったからと変わらずにやっていくことはやはり間違っていることだと思います。必要な変化に対しては柔軟に対応していく姿勢は大事だと改めて感じているところです。

  3.  幼稚園や保育園では鼓笛をしている園が多くあります。実際に私も通っていた幼稚園にも鼓笛が運動会で演奏したのを覚えています。練習はしましたが、辛かったという思い出がないので、そこまでビシバシと指導する方針じゃなかったのかもしれません。歌に関しても音程やリズムなども厳しく言われた覚えもありません。ただ39年版に書かれた「音楽リズム」の領域に書かれた内容を見てみると、かなり厳しい内容になっていますね。それが今の合唱、合奏、そして鼓笛に大きな影響を与えていると思うと、その時点で変わる必要があったのですね。現在、音楽は表現の領域に含まれ「表現を楽しむ」という言葉に変わりましたが、まだまだ昔の影響が残っている園が多くあります。今ブログを読んで感じたことは、見守る保育を実践している保育園に来て良かったと思う次第です。

  4. 音楽リズムや絵画といった領域は確かに保育者の専門学校ではとても重要視される科目かもしれません。というのも、はっきりと目に見えるものでありますし、実に”教える”といったことに関しては教科のようにできるからでしょうか。学生だったころは「環境を通して」というところに重点がおかれるよりも、どう子どもたちに経験させるか、「引き上げる」かという議論が多かったように思います。しかし、それでは感情や感性、特にに自主性といったものはあまり重視されません。「意欲」といったものや「感性」といったものは「引き上げる」ことではなかなか難しいように思います。できても、大人の価値観が多分にあるものになってくるでしょうね。それよりも「引き出す」という方向に我々は持ってこれるように考えていかなければいけませんね。なにより子どもたちの可能性を信じる気持ちが必要に思います。

  5. 今回のブログに紹介されているような領域の移り変わりに伴う要領の変化について学ぶことができ、とても助かっています。従来保育所は幼稚園に倣ってきたところがありますから、保育所の運動会や発表会、作品展、といった行事が小学校や幼稚園のそれらに類似することがよくわかります。そして「保育者養成校では、科目が領域別に分かれて開講され、特に絵画制作や音楽リズムは、それぞれ別々に、その内容に特化して学んで」きた学生がやがて保育者として働くわけですから、そうした養成校を卒業して園で働く人たちに保育を任せると、結局「先生主導」の「教え込んでやらせる」行事になることにも得心がいきます。そして平成元年版から要領・指針が変わって「豊かな感性」「表現する意欲」「創造性を豊かにする」という観点が強調されても、そうした感性・表現意欲・創造性を子どもの内に培うノウハウを養成校の学生たちは意識的に学んでいないようですし、卒業して現場に入っても、その現場が「昭和39年」バージョンで保育が行われていると、指針の改訂によって強調された観点も画餅で終わってしまっています。指針の実践が監査の対象になったのに・・・。本当に変わらなければなりません。

  6. 確かに、「音楽リズム」と書かれてあるだけで、音を楽しむというよりも“リズムよく”の方が印象に残りますね。リズムをみんなで奏で、それを発表するとなると、どうしても「鼓笛隊」が頭の中に出てきてしまいそうです。ましてや「基礎的なひき方の指導を加えたり、可能な場合には簡易な分担奏を楽しませたりすること」などの指導もあったということから、非常に難易度が高く、それを実践する保育者も、大変であっただろうなぁと感じます。そして、平成元年に5領域となり、音楽リズム・絵画制作が「表現」に統合されたことで、今まで抱いていたしがらみから開放されていくと思いきや、決してそういうわけではないようですね。

  7.  保育園に限らないことなのかもしれませんが、一度つくった流れや習慣のように定着してしまったものを変えることは確かに非常に困難なものです。日本の多くの保育園は今までそれぞれの園で独自につくった体制を変えずにここまできたのでしょう。平成元年版から「5領域」に整理された時に変化しなければならなかったという言葉はとても衝撃的で、〝「豊かな感性」を持つことで、「表現しよう」とし、「表現を楽しむ」ことになった〟という文章に異論などあるはずもありません。
     保育所保育指針の内容を知りながら考察をしていくと、新しい保育をしようと言っているのではないことが伺えるように思います。しかし、その変化は十分に捉えてほしいという意図があるにも関わらず、どこそこの園にとっては内容自体が難し過ぎて、今までやってきたことにどういう風に取り入れて、どこを変えていったらいいのかわからないかもしれません。そして、これが〝指針〟である為に、それに従わなくてもいい、言ってみれば従わなくても監査に引っかからないということで終わってしまい、監査の為に保育を、子どもたちのことを放って書類にせっせと精を出すという流れが出来上がっているのかもしれません。
     具体的なモデルが必要です。それが僕は新宿せいが保育園にあると思っているのですが、これも強制ではもちろんない為、知らなくてもよいことですし、真似をしなくても良いことなのです。なぜモデルにした方が良いかと言うと、それが子どもたちの為だからです。子ども達の為に保育園はあるべきだからです。

  8. 39年版の幼稚園教育要領の「音楽リズム」の領域の「幼稚園修了までに幼児に指導することが望ましいねらい」は、今で言う教科カリキュラムに近いように感じます。指導上の留意点の「しだいに発声、音程などにも注意して歌うようにさせること」というのは、まさに〜ができるようになるという教科カリキュラムのままですね。そして、平成元年に5領域に変わったタイミングでおたのしみ会を見直すべきだったのですね。

  9. もし、今の保育に『音楽リズム』があったら、自分は保育者として、こんなに長く続けてはこれなかっただろうな…と、このブログを読みながら思いました。
    このような項目を達成しようとすると、保育者は大変な苦労をするのだろうなと思います。そして、その指導を受ける子どもたちも大変な思いをすることが予想できます。
    平成元年に改定され、〝表現〟にまとめられたことにより変わっていくべきであったのに、そうはならなかったのはどのような理由からなのでしょう。
    つくづくこの見守る保育を実践している保育園に出会えた自分は幸いだったなと思いました。

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