おたのしみ会の考察19

 数年前の「おたのしみ会」での年長さんの演目が「どうぞのいす」にすると担任から聞いた時に、「どうして?」と思いました。なぜかというと、この絵本の内容は、シンプルで、3歳児くらいにちょうどよい話だったからです。どうしてこの絵本を題材にしたのかを年長の担任に聞いてみました。すると、「実は、木工ゾーンを開設したのですが、このゾーンに対してどう導入したらよいかを迷っていました。そこで、みんなで、木工ゾーンで“椅子を作ってみよう!”と盛り上げるような環境を作りました。その一つとして、絵本の“どうぞの椅子”を子どもたちに興味を持たせることにしたのです。そうしたら、みんなに座ってもらうことにしたらどうかということが子どもたちから提案されました。そして、それを劇にしようということになったのです。」

 実は、ここには担任の意図があるのです。おたのしみ会の出し物は、普段の子どもたちの生活、子どもたちの活動から取り出すのですが、その逆もあるのです。それは、おたのしみ会の出し物にし、その取り組みから、普段の保育の動機づけにしていくのです。子どもにつけたい力、子どもたちに取り組んでもらいたい活動を、おたのしみ会に取り組む中から、普段の保育につなげていくという保育もあるのです。

 また、おたのしみ会の出し物について、保育者の意図がなく、子どもたちからの活動から、次々に発展していき、次第におたのしみ会につながっていくこともあります。年長さんが、こんな保育に取り組みました。「“ねぇテント作りたい!”…ある日の誰かの一言で始まったテント作り。新聞紙を一本一本丸めていき、骨組みを作ってそれをつなげて。“あと何本作らなきゃね!”“私もやるー!”…だんだんと仲間が増えて、何日もかけて年長さんの新聞紙のテントが出来上がりました。」しかし、材料が新聞紙のためか、壊れてしまいました。こうして始まったテント作りは、次につながっていきます。

ちょうどその時、おたのしみ会が近づき、出し物を検討することになりました。そんな時に、子どもたちはこんな会話をしています。「するとまた誰かが提案をしました。―“このテント、お楽しみ会で使ったらいいんじゃない??”そこから始まったお話探し。“テントが出てくるお話がいいよ!”“森だから動物がいいんじゃない?”と、次々にお話の案が持ち上がる中、無惨にもテントは壊れてしまいました。…それでもお楽しみ会のイメージは膨らんでいき『もりのてがみ』に決まると、お話の展開もみんなで考えていきました。そしてキャンプをすることに。すると、“じゃあテントが必要じゃん!また作ろうよ!”」

せっかく作ったテントですから、子どもたちはどうしたら壊れないテントが造れるかを考えます。そこで、骨組みを新聞紙を丸めて作ったのから、角材に釘で打ち付けて作ることにしました。釘が曲がりながら、みんなで打ち付けていきます。そして、覆いも新聞紙ではなく、布で作ることにしました。そして、みんなでテントを作り上げました。子ども集団における遊びには、人間として発達していくための、人間関係における共感、協同、また、表現における想像と創造の力などの基礎的な能力を育むプロセスなのです。

保育所保育指針の発達過程の「おおむね六歳」には、こう書かれてあります。「仲間の意思を大切にしようとし、役割の分担が生まれるような協同遊びやごっこ遊びを行い、満足するまで取り組もうとする。様々な知識や経験を生かし、創意工夫を重ね、遊びを発展させる。」
また、「人間関係」領域のねらいには、「?友達と一緒に活動する中で、共通の目的を見いだし、協力して物事をやり遂げようとする気持ちを持つ。」とあり、「三歳以上児の保育に関わる配慮事項」には、「ク 感じたことや思ったこと、想像したことなどを、様々な方法で創意工夫を凝らして自由に表現できるよう、保育に必要な素材や用具を始め、様々な環境の設定に留意すること。」とあります。

保育とは、特定の領域に限られるものでもなく、特定に年齢の発達過程に限られたものでもなく、総合的なものなのです。

おたのしみ会の考察19” への9件のコメント

  1. 「工作ゾーン」はドイツでは一般的ですが、日本では子どものけがを心配して、こんな環境を用意できるところは少ないと思われます。のこぎりでも金づちでも、先生がお手本を示して使い方を教えれば、子どもは上手に使いこなします。危険だからと環境から排除するのではなく、危険を教えるための環境も必要ですね。昔の子どもは、ナイフで鉛筆を削ったり、リンゴの皮を器用に剥くことを親から自然と学んだものです。

    ただ、この「工作ゾーン」は、他の遊びのゾーンと違って、工具をおもちゃにできないので、何か一定の目的・動機がないと子どもたちが寄りつかないかもしれませんね。そこで、役に立つのが「お楽しみ会」のような行事ですね。もともと子どもは、工具に強い興味を持つようです。父親や近所のおじさんが使っているのを見ると、自分もやってみたいと思うものです。友達と協力してお楽しみ会のテントを創りあげた喜びや達成感は、何物にも代えがたいでしょうね。

  2. 年長さんのテントの話、ワクワクしながら読ませてもらいました。このようなイキイキとした活動が行事につながっていったり、行事が後のイキイキとした活動につながっていったりすることが大事なんですね。それにしてもテントが発展していく様子はすごいですね。このような活動を保障することも、ここに至るまでの子どもたちがしてきた経験も、全部がつながっていると考えると、これが幼児教育なんだと身が引き締まる思いです。環境が整っているだけでなく、保育者がどんな関わりをしているか、理念を共有し、それをどう保育に展開しているか。そんなことの一つ一つを丁寧に見ていかなければいけませんね。

  3. 改めて行事はその時期のゴールではなく、子どもの保育園生活の通過点ということを感じさせられました。まだ、どこかで行事をやることで、一つの区切りを作ってしまっているように思います。行事が終わっても保育は続くわけですから、それが導入になってもなんら不思議ではないと思います。また、行事を超えることでいろんな部分で自信をもって、その後も木工ゾーンなど楽しんでいることが目に浮かびます。あくまで行事は日頃の保育から出てきたものであってそのために何かをすることではない、ということ、そのために保育者はどう日頃の保育とつなげていくか、それを今後にどうつなげていくか、ひらめきと見通しを持つことが必要ですね。

  4.  私の保育園にも木工ゾーンがあります。木工道具はノコギリ、かなづち、ペンチなど使い方を間違えると危ない道具があるので、どうしても大人が一人つく必要があるのと、勇気がいります。一番は子どもが嬉しくてテンションが上がってしまい、怪我をしてしまうのでは??とつい考えてしまいますが、木工以外の遊びでも、子どもからの自発的な活動を見ていると、自分達で約束を守りながら遊ぶ姿が見られます。ブログに書いてある、子ども達の姿を聞いていると、とても楽しそうですね。また友達を協力し話し合いながら、一つの物を作り上げる。保育指針の発達過程を自然と達成していることに驚きます。何よりも大人が主体になっているのでなく、子どもが主体というのが前提として活動が行われていることに、保育士の環境から保育するという重要な意図が感じられます。

  5. 行事の取り組み内容を決めていく時、どうしても先生たちが「その時だけ」のために決めていくことが多いような気がします。ですから、準備の段階では、先生たちが作成したシナリオどおりに子どもたちを動かしてしまうのです。そして、その行事が終わると、残るのは少しの達成感と多くの疲労感なのです。私たちの園の行事は、多くが子どもたちの活動から生まれ、あるいは「どうぞのいす」のように、通常の保育を膨らませるための「保育者の意図」から出てきます。日常の保育の中の一通過点である「行事」がその前後の保育内容を規定していきます。それは子どもたちにとっても先生たちにとっても、です。「もりのてがみ」の「テント」、あれは壊れることなく朽ちることなく今でもテラスにありますね。子どもたちにも先生たちにもモデルとなる「テント」です。そして、先生たちにはこのブログによって自分たちが取り組んだことを是非振り返ってほしいと思いました。また、「保育所保育指針」の当該項目がこのように紹介されると、実にその内容がよくわかりますね。

  6. ゾーンの充実を図るために行事を活用し、子どもにつけたい力をそこで意図するといったやり方もあるのですね。そういった一連の活動からは、行事以降に子どもが意欲的にそのゾーンで遊ぶ姿が想像できます。行事に向けて楽しみながら取り組む過程において、普段の保育の良きスパイスにもなり、子どもが自ら環境に働きかける場所の魅力が上がっていくのでしょうね。また、子どもたちの普段の活動から発展していき、次第に行事へとつながっていく方法からも「子どもが主体」であることが伝わってきます。「表現における想像と創造の力などの基礎的な能力を育む」ことができるそれらの活動の共通点は、必ず「子ども集団」であること、また「遊びを発展させている」ということ、そして子どもたちの中に「共通理解」があるということだと感じました。

  7.  新宿せいが保育園のわいらんすいの壁にこの時の写真が掲示されていますが、これは改めて見ても本当に素晴らしい取り組みです。何より、純粋に子ども達からの提案が成立しています。保育者は工具を揃え、きっと新聞紙を揃え、と材料を集めること、つまり子ども達がテントをつくりやすいように環境を整えることをしたことでしょう。むしろそれ以外にすることはなかったと思いますし、それこそが保育者の仕事なのだと思います。まさに環境をデザインすることです。
     新聞紙でつくったテントが壊れてしまったことも子ども達にとっては成功への原動力になったようですね。これも子ども達のレジリエンスですね。以前投稿させていただいた『私の保育記録』の結果が今月の末に出ますが、このような取り組みこそ、そういった機関紙に載って多くの保育園に見ていただきたいものと感じます。

  8. 年長さんとどうぞの椅子をやった担任の先生の考えは、とても面白いですね。まさに、おたのしみ会を保育の通過点に過ぎないと見ているなと感じます。むしろ、おたのしみ会の出し物をきっかけとして、今後に保育が展開されていくような形で、私からは生まれそうもない発想でした。
    そして、もう1つのテントの例は、また違ったアプローチの仕方でいいですね。

  9. このブログを読むと改めて行事は保育においては通過点なんだ、と思うと同時に『どうぞのいす』の時の年長さんの担任の先生の考え方が、斬新で面白いなぁと思いました。
    保育においての通過点なら導入の部分におたのしみ会がきてもいいはずですよね。そのことに気づかされ、もっと広い視点で行事というものを見つめていかなければならないということを感じました。

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