杉とブナ

 最近は、「花粉症」の原因として悪者にされている「杉」は、日本人にとってはとても貴重な樹木です。「真っすぐな木」という意味のアイヌ語である「シンクニー」から「スギ」になったという説があるように、まっすぐで、成長が早く、木目がきれいなことから火rく使われてきました。しかし、和名でスギといっても、「マキ、イヌスギ、ホンスギ、ベニアカ、ヤマトスギ、ヤブトウシ、エゾスギ」などの品種を含む名称が四十種もあります。そして、数多くの杉の中で、最も美しいと言われているのが、日本三大美林の一つとされている「秋田杉」です。なぜ秋田杉が日本三大美林かというと、それは、節がなく通直で、目が細かく、年輪は均一で、特有の淡紅色をおび、優美な色と香りがあるからです。

また、本来植物の育成には太陽の光が必要ですが、秋田杉が繁茂する県内の杉林は、直射日光の入らない林が多く、日光の入らない原始林で成長するために強度の耐陰性を持っているのです。また、杉をはじめとする針葉樹の繁殖には、2種類あって、親木から出た下枝が地面を伏すように這い、そのうち落土などによりその枝が土をかぶり、その枝から根が出て親木から2?3m先で垂直に立ち上がり成長して繁殖するのを「伏条」と言い、趣旨から発育し繁殖するのを「立条実生」と言います。雪の多い秋田県に育つ秋田杉は、積雪のため伏条による繁殖率が非常に高いために、この天然杉は、自然の厳しさに耐え、まっすぐで弾力性の高い木目を持っています。この自然の力を利用した秋田の伝統工芸があります。それは、「曲げわっぱ」と呼ばれる秋田杉を曲げ加工して作られるさまざまな工芸品です。

この曲げわっぱは、秋田杉の柾目をうすく挽いて煮沸し、柔らかくして曲げ輪を作り、山桜の皮で縫いどめ、底入れをし、木地仕上げ、塗りと磨きを数回繰り返しというような膨大な手間と時間、訓練を積んだ職人によって作られます。この曲げわっぱの歴史は古く、奈良時代にマタギ(木こり)が杉の生木を曲げ、桜皮で縫い止めた弁当箱を作ったのが始まりだといわれています。こうして作られた弁当箱は、「夏は保冷、冬は保温」と言われ、杉の木の殺菌効果により食べ物が痛みづらく、夏場でもご飯が二日は持つと言われています。この曲げわっぱによる「コーヒーカップ」と「とっくりとおちょこ」をいただきました。それは、持っていて非常に味わい深いものです。
もう一つ、やはり樹皮を使った工芸品をいただきました。それは、青森県のブナの原木をかつらむきの原理で約1mmの厚さにスライスし、テープ状にカットにしたものを巻き重ね、成型していきます。それが、日本一の蓄積量を誇る青森県のブナの木を有効利用するために開発された「BUNACO」です。現在ANAの機内放送イノベーティブチャンネルで、「発想の来た道」が放映されていますが、この番組では様々な新しい発想と、その取り組みを取り上げていて、興味深いものが多いのですが、その中で、昨年の10月に取り上げられていたのが「「伝統工芸が奇跡の復活! 倉田昌直」ということで、「ブナコ」が取り上げられていました。
倉田さんは、ブナコによる青森の伝統工芸品を制作する父の跡を継ぎますが、一時は低迷し、もう後がない状況のなか、強い発想力により『BUNACO』として復活します。そのきっかけは、「限界は自分の中にある。自分で限界をつくっているのでは?」という弟さんの言葉だそうです。そして、この会話がきっかけとなり、限界を吹き飛ばし、ユニークな作品?製品を連発、ブナコは、デザイン賞を受賞し、イギリスの国立博物館では永久収蔵品に選ばれています。割れ、狂い(ゆがみ)がなく、海外などの気候風土の異なる場所でも安心して使え、耐水性に優れたコーティングを表面に施しアルコール系中性洗剤で洗っても大丈夫なのでお手入れが簡単です。

木材資源を有効に活用する「地球にやさしい」環境に配慮した独自のエコ製法は、これからますます求められてきます。