ドイツ報告2012-24

 今年のドイツの研修を、様々な観点から振り返ってみました。その観点は、ドイツ研究としてドイツの姿を報告するのではなく、ドイツの保育から日本における保育を見直そうというものです。それは、現場における問題に関係づけて、どのように考え、何をどのように日本の保育の参考にするかということを考えてみたのです。今回訪れたミュンヘンでの取り組みは、日本からのたびたびの訪問によって知られているようです。厚労省や文科省、大学の研究者たちがよく訪れると言っていました。それも、随分と昔からのようで、「国にも、研究者にもドイツの保育、教育を見てほしい!」という言葉は意味がないのです。それは、ドイツだけでなく世界のいろいろなところに研修に行っているようです。
 そんなに多くの人が世界を見てきて、いろいろなことを研究してきているのに、なぜ、保育、教育が変わらないのでしょうか?それは、世界で見てきたことが、日本では実現できなかったり、日本ではあわないことも多いからかもしれません。北欧における幼児教育での子ども集団の適正規模が7名くらいという話を聞きますが、この数の集団の中で多くの時間を過ごしているとしたら、例えば、東京の山手線は乗れなくなるかもしれません。外国での保育をそのまま日本に取り入れるには無理があります。そこで、日本での保育の現場における取組に照らし合わせながら外国の保育をみないといけないのです。ということで、役所の人や、研究者では、現場を変えるような見方をすることが難しくなりますし、現場できちんと実践していない園長が見ても、自分の園の改革への参考にはならないのです。「へえ、そんな保育をしているのだ。」「わあ、かわいい!」「この装飾をまねよう!」という程度で終わってしまうのです。
 ドイツでも少子化は深刻です。そのために、各種対策に試行錯誤しています。また、PISAの学力調査でも、学力低下が課題です。それらの課題がなかなか解決していません。それは、どこに原因があるのか、何がいけないのかという考察は日本でも参考になります。学力低下については、今回紹介したバイエルン州の特にミュンヘンでの取り組みは非常に成果が上がっており州法が連邦法に影響しています。しかし、少子化は成果が上がっていません。その原因は、出生率が現在1.36であるドイツと比べて、隣国のデンマークでは30年ほど前は今のドイツと同水準だったのが、現在は1.84人にまで伸びています。この差を作った大きな違いは、ドイツでは、各種対策に多額の予算を割いているのに、女性を家庭に戻そうという試みがあるからのようです。
ドイツでは保育・幼稚園不足が問題視され、待機児が多いのにそれほど保育所の数を作りませんし、小学校もほとんどが半日で終わり、子どもたちが昼食を自宅で食べるという状態です。また、「母親」の育児休暇が3歳まで取得でき、母親が育児をするというのが自然な流れとなっています。そのために、女性の所得が男性の所得よりOECD平均では16%少ないのに対し、ドイツでは平均25%少なく、これが「育児は女性の仕事」という構図につながってしまっているのです。さらに子どものいる家庭で、父親か母親のどちらか一方のみに収入がある場合、税金面で優遇されることも、「母親」が仕事をあきらめる事態に“加担”しているといわれています。また高学歴の女性ほど、子どもを持たない傾向が顕著に高いこと、また子どもがいる女性の生涯賃金は、子どものいない女性のそれより半分以上少ないこともそれを裏付けています。また、ドイツでは子育てを支援する各種政策のうち、減税による対策が全体の32%を占め、OECD平均の10%を大きく上回っていて、現金支給も39%と高いのですが、学校施設などへの投資はわずか28%です。一方、少子化が改善されたデンマークでは学校施設などへの投資が全体の60%と大半を占め、現金支給はそれより低い40%です。
そんな背景を踏まえたうえでドイツの保育、教育を参考にする必要があります。