ドイツ報告2012-23

 よく何かをとりに部屋に行くと、何をとりに来たかを考えてしまうことがあります。この行為の中には、部屋に行くことと何かをとることの二つの行為があるのですが、どちらか一方をすることでもう一つを忘れてしまうのです。まだふたつであればいいのですが、複数になるとより忘れやすくなります。これは、私は年を取ってきたからだと思っているのですが、そうでもない人がいます。職員が電話を取り次いで私に伝える時に、「どこかの園の誰だかが、園長先生に電話です。」ということがあります。相手の情報には、かけてきた人の園名、名前、そして、だれにかけてきたかという三つの情報があるのですが、最後の情報だけ覚えていて、その前の二つは忘れてしまうことがあるのです。
 また、妻は、出かける時に持っていくもの、チェックすることを紙に書いておいて、それを見ながら確認していきます。どうしても、頭の中だけでは、つい何かを忘れてしまうことがあるからです。実際に文字を見ることで、思い出すことがあるのです。また、よく講演などで、必死にメモを取る人と、何も取らずにいる人がいますが、それは、その時の話を真剣に聞くことを優先するか、後で、話した内容を思い出そうとするかでも違ってきます。これらは、五感の中で、二つ以上の手段で覚えようとするものです。耳で聞くだけでなく、目で見える形にして覚えようとする手段が文字です。または、しぐさです。人を呼ぶときに、「おいで!」叫ぶと同時に手招きをするとより伝わりやすくなります。耳からの情報だけでなく、目からも同時に情報を得るようにするのです。
 耳の聞こえない人に言葉の代わりをなすものに手話があります。手話は、言葉の代わりをするだけでなく、言葉による伝達をより確実にするために使うこともあります。しかし、それは正確に言うと、手話というよりも手振り、身振りかもしれません。この手段は、何も耳の聞こえない人だけでなく、聞こえる人に対しても有効的です。特に、子どもには伝達方法としては分かりやすくなります。「だめ!」と言いながら、手で×を表現するとわかりやすくなるのです。
 このように、複数の指示をするときの理解は、障害を持った子は、より困難になります。そこで、指示するときには、なるべく、ひとつずつ指示するようにする配慮が必要になります。また、何かを指示するときには、言葉だけではなく、手振り身振りでもするという配慮が必要になります。また、約束事でも、文字であらわすだけでなく、絵でもあらわすとか、今、何をするべき時なのかを、言葉で伝えるのではなく、絵や写真でも示すといいとも言われています。これらの配慮は、障害を持った子だけでなく、子どもにとっても友好的です。
 障害児のいるインテグレーション幼稚園では、そんな工夫が多くみられました。まず、クラスの子の紹介は、写真が多いのですが、この園では手形で表していました。そして、1日の流れを、時計と絵で表しています。もし、子どもが今、何をしている時間なのかがわからないときには、時計と絵を示しながら説明をします。「いま、この時間だから、これをする時間ですよ。」と具体的に示します。そして、他にも指示するときの身振りを一つずつ示していきます。これは、必ずしも手話ではなく決めているそうで、9月に新学期が始まって、現在は6種類まで覚えたと言っていました。そして、当番表は、自分の写真を貼った洗濯ばさみで、その日の当番のところに留めます。洗濯ばさみは、違うところにも使います。自分が、どの部屋に行くかを示します。数字は、他のグループの番号で、ドットと数字で表されているのですが、「3」は、3のグループを表わし、そのグループの部屋に行くときにはその場所に洗濯ばさみを挟んでいくのです。また、やっていいことと悪いことも絵で表されています。五感を使って、様々なことを示しているのです。