運動会の考察1

 日本の幼児教育が、随分と小学校教育から影響を受けていることが、問題をもたらしていることを随所に感じることがあります。それは、ハード面である園舎にしても、園庭にしても、保育室にしても、校舎、校庭、教室を小さくしたようなものになっています。また、保育者も教師のようであり、ソフト面である保育の内容も、影響を受けています。ですから、五領域は、何となく五教科のようにとらえて指導計画を立てることがよく見受けられます。そして、同じ「指導」という言葉を使っていても、その内容はずいぶんと違っているのです。

 例えば、いわゆる「体育」という教科で見てみます。幼児教育ではそれに該当する領域は「健康」です。幼稚園教育要領の留意点を見ると、「幼児が教師や他の幼児との温かい触れ合いの中で自己の存在感や充実感を味わうことなどを基盤として、しなやかな心と体の発達を促すこと。特に、十分に体を動かす気持ちよさを体験し、自ら体を動かそうとする意欲が育つようにすること。」また、「様々な遊びの中で、幼児が興味や関心、能力に応じて全身を使って活動することにより、体を動かす楽しさを味わい、安全についての構えを身に付け、自分の体を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。」「自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶことにより、体の諸機能の発達が促されることに留意し、幼児の興味や関心が戸外にも向くようにすること。その際、幼児の動線に配慮した園庭や遊具の配置などを工夫すること。」

 これらの書き方に比べて、小学校学習指導要領では、「第1 教育課程編成の一般方針」には、「学校における体育・健康に関する指導は、児童の発達の段階を考慮して、学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。」とあります。この両方を比べて、その違いを簡単に言うと、小学校での体育という教科は、内容に書かれてるように、「次の運動を楽しく行い、その動きができるようにする。」すなわち「何々ができるようにする」という、できるようになることを目標に掲げ、その教科の中で行っていきます。それに比べて、幼児教育は、「自ら体を動かそうとする意欲が育つ」とか、「楽しさを味わい、…気持ちが育つようにすること」が目標となり、その手段として、教えるのではなく、「体験し」「様々な遊びの中で」「自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶことにより」など、ある目的が決められて時間内でなく、子どもの遊び、生活の中で体験して得ていくものであることが書かれてあります。

 また、健康領域には、「食育を通じた望ましい食習慣の形成が大切であることを踏まえ、」とあり、そのために「和やかな雰囲気の中で教師や他の幼児と食べる喜びや楽しさを味わったり、」というように「共食」の大切さを謳っています。また、基本的な生活習慣の形成には、「幼児の自立心を育て、幼児が他の幼児とかかわりながら主体的な活動を展開する中で、」というように、他児とのかかわり、主体的な活動の必要性を謳っています。

 こうしてみると、当然、健康領域を保護者に披露する「運動会」と、「体育」という教科の習得を保護者に披露する「運動会」との違い、また、運動会を通して健康領域を体験させるという意図と、運動会を体育の授業の一環として位置付けるのとはずいぶんと違ってくるはずです。

 しかし、どうしても幼稚園、保育園で行われる運動会は、小学校の運動会のミニチュア版になっているところが多くあるようです。