ドイツ報告2012-9

ホールで校長からの挨拶

 数年前から、日本では保育園からも「保育要録」という子どもについての記録を小学校に提出することになりました。ただ、いくつか問題があります。まず、その作成にかなり時間と労力を費やすということです。それまで、同じ学校教育法に根拠を持つということで幼稚園からの提出はありました。しかし、その書類の作成にあたって園児が帰ってからの午後を当てることが多かったのですが、幼稚園でも預かり保育などで園児は夕方までいることも多くなりましたし、保育園では、基本的に職員の勤務時間よりも園児の在園時間の方が長いわけですから、その書類を作成する時間の確保が難しいという点です。二つ目の問題は、それだけ労力と時間をかけて作成しても、小学校側あではあまり活用されていないという現状です。かつて、教師は子どもへの刷り込みを持ちたくないという理由から、また、あまり利用価値がないということもあるでしょう。もう一つの問題は、その書類には、子どもの教育上の問題点を書くことが多いので、保護者から開示要求をされては困る内容があるからです。だからといって、差しさわりないことを書いても、教師は参考にならないでしょう。

 ドイツの今回の視察先に、二日目小学校を入れてもらいました。昨年、午後に小学校見学を入れてもらい、その教室のレイアウトから幼児施設からの連続性を踏まえた取り組みを感じることができ、とても面白かったのですが、ドイツでは小学校は半日制で、午後は子どもたちはもういませんでした。そこで、今回は午前中の見学で、授業参観もすることができました。

ドイツの小学校へは、日本と同じように6歳になると入学します。というよりも入学する権利があります。というのも、6歳になると、わが子を小学校に何歳で入学させるか保護者が決めます。今回の見学で、私は2年生のクラス二クラス授業参観したのですが、そのクラスの子どもたちがやけに大きい子が何人もいるので、2年生ではないかと聞いてみたのですが、2年生だと言います。ドイツには、飛び級といって、子どもの成績によって学年を飛び越えてしまったり、ステイといって、日本の落第のように学力が達していないと、その学年に翌年もとどもったりすることがあるので、いくら2年生といっても、様々な年齢の子がいるのだと思いました。しかし、すでに2年生の時点でこんなに落第がいるのか、また、何を基準にして落第させるのか聞いてみたところ、この時点では、全員が、親の希望で入学を遅らせた子だそうです。また、数人は、やはり親の希望でもう1年繰り替えさせた子も数人いるそうで、学校側から一切落第はさせていないそうです。

また、ドイツでは子どもが4年生の時に、学力テストをしてその先の進路を決めます。ミュンヘンでは、いわゆる大学まで進むギムナジウム(高等学校)には87%、レアールシューレ(実家学校)には約1割、ミッテルシューレ(中等学校)にはクラスで1?2名進学するそうです。4年生の時点で進路を決めるのはいかにも早いようですが、保護者の意向や、落第などで、基本的には4年生の時点では、ほとんどその学力はついていることになるからです。ですから、ギムナジウムに入学した時にストレートにここまで上がってきて、その年齢に相当していた子はクラスで5人しかいなかったという話を聞きました。そのように、保護者は、わが子をきちんと評価するようです。

 ですから、ドイツでも保育要録のような子どもの様子を小学校に提出する書類があるそうですが、保護者と話し合って、合意したものを提出するそうです。

ドイツ報告2012-9” への6件のコメント

  1. 臨床心理学の河合隼雄先生は、スイス在住の折、スイスの幼稚園でとても背の高い園児を見て「スイス人は日本人に比べて背が高いのですか?」と聞いたところ、その先生はにこりともしないで「小学校から落第してきた子です」と言われてびっくり。「スイスは小学校から幼稚園への落第があるのか?日本ではそんなことはやっていません」といったら、「日本はそんな不親切な教育をやってうまくいくのか?」と逆に質問されたそうです。

    1年生で出来ないなら幼稚園にしてあげようというのがスイスの親切。1年生で出来ないけど、2年生にしてあげようというのが日本の親切。できないまま進級させるのがかわいそうと思うか、出来ないけど進級させないのはかわいそうと思うかの違いですね。前者は過程主義、後者は年齢主義というそうです。日本は世界に類を見ない年齢主義の国です。保育の世界でなかなか年齢区分から発達区分に発想が切り替わらないのは、年齢主義の強い学校教育の影響です。

    ただ、学校教育法で、年齢相当の下の学年で学ぶことを認めていないかというと、決してそうではありません。学校教育法第17条第1項但し書は、「子どもが小学校の過程を修了しないときは保護者はその子を15歳まで小学校に就学させる義務を負う」と規定しています。法的には15歳の小学生も存在しうるのです。厳密に精査すると、学校教育法は完全に年齢主義に立っているとは言えません。むしろ、教育課程を修得しなければ進級・卒業を認めないという意味では「過程主義」を採っている法律だと言えます。

    オランダのイエナプランでは、3学年の異学年での協同の学びを重視した教育を実践して大きな効果を上げています。一人も落ちこぼれを出さないという意味ではこれほど平等な教育はありません。一斉授業の座学による教育ではなく、子どもたちの学びの意欲を促す工夫と環境づくりが先生たちの仕事の大半を占めています。見守る保育の原理を小学校に置き替えると、限りなくイエナプランに近づくように思えます。

  2. ステイという制度もそうですが、何よりもそれを当然のことと受け止めて子どものことを考えているドイツからは、やはり学ぶことが多いと思います。日本の教育のあり方、もしかすると子ども観の問題なのかもしれませんが、まだまだ変わっていかなければいけないところがあるのが現状でしょう。保育要録についても、書かれているような問題点は実際にやっていて強く感じているところです。子どもたちがどんな環境でどんな力をつけているか、そして次の課題のためにどんな環境がいいのか。そのことを保護者と保育園や小学校が一緒になって考えているようになるのが理想だと思うのですが、そのために子どもとはどういう存在なのか、教育とは何なのかといったことの共通理解が必要になるはずです。そのための「今」であって欲しいものです。

  3.  ドイツの報告を聞くたびに日本との大きな違いに驚きと、面白さがあります。小学校のステイと言うシステムは過去のドイツ報告で知りましたが、子どもにとっても親にとっても、ありがたいシステムのように思います。同じ職場で受験を控えたお子さんがいる先生に話しを聞くと、全く勉強しないし、高校に行けるか心配と言っていました。ドイツのように4年生の時点で進路を決めるというのは確かに早いと思いますが、ステイというシステムのお陰でしっかりと計画がたてるのでしょうね。日本は勉強が出来ても出来なくても、自然に中学校まで自動的に進級します。その学年で必要な知識を知らなくても進級できます。結果的に職場の先生のように子どもにも親にも負担がかかってきます。おそらく、このシステムを日本で行うのは難しいと思いますが、学校と親が子どもの事について密に連携をしながら、子どものことを第一に考えるという事は出来ると思います。本当にドイツからは学ぶことがたくさんあります。

  4. 改めて子どもを取り囲む大人の意識の高さに驚きます。日本も決して意識が低いというわけではないとは思うのですが、最近の少子化の流れか大人も自分の時間を大事にするようになってきましたし、どうしても子どもたちが育つには少し大変な時代になっているように感じます。保育要録の考え方も保護者に開示することに対して、保護者もしっかりと自分の子どもを評価するほどの意識の高さに日本との差を感じます。どこか日本の場合は教育や保育を子どもの内面や発達といった長期の目線をもって見るというより、今どう変えるかや今の生活の行動の変化など短期的なものを追い求めているように思います。子どもたちが無理なく、教育や発達を遂げることができる社会を持つために保護者や小学校など教育機関などと関わっていかなければいけないことを見ていて感じます。

  5. 「保育要録」を保育園が小学校へ提出するようになってから何年が経ちましたかね。そして、保育要録の効果なり、何かを検証したのでしょうか?保育要録のおかげで、保育園から小学校へのスムーズな移行が可能となり、いわゆる小1プロブレムという問題は解消されたのでしょうか?いくつもクエスチョンマークがつく「保育要録」です。さて、今回掲載された写真をみて気づくのは、グループとグループとの間の空間が結構広いですね。そして、教室全体に空間的余裕を感じます。ゆったりと学習できるような気がします。私の息子が通う小学校の教室は結構きつきつです。「ゆとり教育」をやっている頃からの教室で、その空間にはゆとりがありません。まぁ、現在は脱ゆとり教育で、教室空間のゆとりのなさと合致しています。飛び級やステイはあちこちの国で行われているシステムです。これは与える側の平等ではなく、受け取る側の平等を保障したシステムと言えます。平等ということを考えたら、飛び級やステイは自然となり、勉強ができるとかできない、という判断基準は消えてなくなるのでないかと思います。どうでしょうか?

  6. 「保育要録」について書かれていましたが、小学校と保育園が連携することはいいことだと思いますが、作成にあたっての、労力と時間や、利用価値がないこと、保護者から開示要求をされては困るという点を考えるとデメリットが多い気がしてしまします。ドイツでの保育園と小学校の関係を見ると、六歳で入学できるという点は変わりませんが、進学、落第など保護者に決定権があるというところが日本と違いますね。そのために、子どもと保護者がしっかりと向き合う形が作られているように感じました。また、保育要録についても保護者と話し合い合意したものを提出するとのことで日本との違いを感じました。日本の良い面やドイツの良い面を上手に活用してさらに良い形を作っていけたらいいですね。

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