かむ2

子どもの「かみつき」は、他を攻撃するための行動であると思われがちですが、私は、現在、世界に広く生活しているホモ・サピエンスという種は、「歯」を攻撃には使ってこなかった気がします。物をかむことを、人間では「咀嚼」というのですが、それは、口腔内に運ばれてきた食べ物を飲み込めるように細かく噛み砕くことを言います。「かむ」という行為は、食べものを体内に取り込むための、最初の消化活動なのです。また、食べ物の消化・吸収を助けるだけでなく、顎の成長発育、脳を活性化させる重要な役割も果たしています。人間は咀嚼する事で顎が発達し、発達した顎でさらに噛み砕くことで食べ物を摂取します。もし、歯を攻撃に使うのであれば、もっと鋭くなり、犬歯の本数が増えてきているはずです。それが、物をすりつぶすための臼歯が多いのです。

特に、日本人は、古くから狩をして動物や魚からも蛋白質を摂っていましたが、田畑を耕して農作物を収穫し、大麦・黍・稗・あわ・はと麦などの雑穀を主食としてきました。縄文時代にはすでに雑穀を食べており、雑穀は白米と比べて硬く、たくさんの咀嚼回数が必要とされます。しかも、口腔内で唾液と混ぜて澱粉が麦芽糖に変化するまで咀嚼していたと考えられています。そのかむ力も、人間の場合、体重の2?3倍だそうです。このように見てくると、かむという行為は、人間だけではなくて地球上の動物が生きていくために行う必然的な行動です。ただ、何を優先して歯を整備したかは、その生物の生存戦略によります。

人間は、噛む事で、「顎を発達させ歯を丈夫にする。」「噛み砕くことで消化を助ける。」「唾液の分泌を促進する。」というほかに、「集中力を高め、同時にストレスを緩和する」効果があるのです。これらの効果を見ると、子どもがほかの子に「かみつき」をするのは、四番目の行動としか思えないのです。ということは、多くのかみつく場面では、子どもたちは人とかかわる中でストレスを感じているか、今取り組んでいることにより集中したいために、他人に邪魔されたくないためということになります。

子どもの「かみつき」を、咀嚼の意味から考えるととても面白いことがわかります。もう一つ、咀嚼にはある効果があります。それは、「大脳を刺激し認知症を予防する」ということです。かむと大脳が刺激されます。これにより認知症の予防につながると考えられています。また、さまざまな研究では、人間の記憶力は、ガムをかむ前より、かんだ後の方が高いことが証明されているそうです。また、ただ噛めばいいのではなく、回数を多くかんだ方がいいのですが、ガム1枚をかむときには、約550回かんでいるというのが平均とされています。どうも、他人にかみつく赤ちゃんは、1回だけなので、認知症予防のためではなさそうです。

これらのことを考えると、「かみつき」を予防するためには、おしゃぶりやタオルなど、かむものを口にくわえさせておけばいいということになります。瞬間的にストレスを解消し、集中力を高めるために、瞬間的に何かをかみたいわけですから。大人ならガムをかんでいてもいいかもしれません。、

子どもの「かみつき」のついての私の考察は、全くアカデミックではありませんが、そのように、当たり前のように思っていることを、そもそもどうしてだろう、違う観点から考えるとどう見えてくるだろうということが、4つの行動的スキルである最後の、「実験力」だと思います。これは、「新しい経験に挑み、新しいアイデアを試す」ということに通じるのです。

「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」の四つのスキルを大切にしたいと思っています。