新たな発想

 教育界での改革や取り組みは、OECDで行われるPISAの学力調査結果が影響しています。各国が、その順位に一喜一憂しています。どうしてでしょうか。それは、子どもたちが将来、社会に出たときにその力が必要になるために、それらの学力が到達しているかどうかを調査し、その学力をつけるような取組みしてほしいのです。ここで、気を付けなければいけないのは、この調査の学力の順位を上げるための取り組みではなく、将来子どもたちが社会に出て必要な力をつける取り組みをしないといけないのです。いわゆる、試験問題の練習をたくさんさせ、予想問題による模擬試験を繰り返してこの試験を受ければ、順位を上げることはできます。いわゆる詰め込み教育をしても、あげることはできるのです。前回の調査で、一躍トップに躍り出た上海は、そのような努力をしたようです。しかし、その結果、意欲をなくし、自主性をなくしては、その学力が付いたとしても、社会に出てからそれを生かすことはできないのです。

 例えば、スイスのビジネススクーIMDが、毎年、国際競争力ランキングを発表しています。日本は調査対象59ヵ国中で1993年までは第1位の位置を占めていたが、その後徐々に低下し始め、2011年時点でのランキングは26位、2012年時点では27位と下がっており、世界からは、日本は、もう国際競争力はないと思われています。その時に、問題となるとからとして「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」ということが言われています。この力は、「企業家精神。新しい事業の創造意欲に燃え、高いリスクに果敢に挑む姿勢。」と書かれてあります。

 この力について、「戦略的企業家の養成こそが喫緊の課題」ということで、神戸大学大学院経営学研究科教授 忽那憲治氏による記事が、先週のダイヤモンド・オンラインに掲載されていました。こうした国際競争力低下の主要因として同調査で指摘されているのが、「アントレプレナーシップ」「柔軟性・順応性」「中小・中堅企業の成長性」だそうです。それらにおいて、日本は非常に低いのです。アントレプレナーシップは、昨年は59位で最下位、今年は54位ですし、柔軟性・順応性は、昨年は54位、今年50位、中小・中堅企業成長性は、昨年54位、今年39位と、随分と低く、これらの力が欠けているというのが、日本に対する世界の評価であるといいます。

 忽那氏は、アントレプレナーシップ教育の意義について、異なる視点で物事を考えることの重要性を知ることが重要であるとしています。その例として、スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授の著書『20歳のときに知っておきたかったこと』 (阪急コミュニケーションズ)の中で紹介している例を紹介しています。

 「伝統的なサーカスの特徴を挙げるとどのようなものになるだろうか。“大きなテント”“動物による曲芸”“安いチケット”“土産物売り”“一度にいくつもの芸”“けたたましい音楽”“ピエロ”“ポップコーン”“肉体自慢の男たち”“フープ(リング)”といったものである。それでは、これらとまったく逆の特徴をもたせたらどうなるだろうか。“動物は登場しない”“高額のチケット”“物売りはいない”“一度に上演する芸はひとつ”“洗練された音楽”“ピエロはいない”“ポップコーンもなし”といった特徴となろう。それでは、伝統的なサーカスが持っている特徴と、全く反対の特徴を持つようなサーカスがなりたつ可能性はないといえるのであろうか。伝統的なサーカスが衰退しつつあった1980年代に、カナダ(ケベック)の大道芸人ギィ・ラリベルテが新しいサーカス団を立ち上げた。『伝統的なサーカス』とは全く異なる、『シルク・ドゥ・ソレイユ風のサーカス』の誕生である。つまり、伝統的・既存の見方とは全く異なる見方で物事を考えてみると、そこには新たな発想が生まれる可能性が高いことを示す興味深い例である。」