都市の中の自然

 随分と前になりますが、私がウィーンに行ったときに、フンデルトヴァッサーという人の市営住宅「フンデルトヴァッサーハウス」と、ギャラリーが入っている「クンストハウス」を見学したことがありました。同じような建築家として、日本ではガウディーという建築家は有名ですが、彼のことはあまり知られていません。しかし、その建築は一般的な言い方をすれば、とても奇妙です。しかし、私は、新宿の園の理想的な設計は、彼が1989年に設計をしたガソリンスタンドのようなものがいいと思っていました。それは、園の裏側は、傾斜地に続く、新宿の中でもこれから「区民の森」構想されているような森があり、下から園舎を見ると、その森と一体になるように、森が下まで続いているような緑で覆い尽くし、その下に園舎があるようなものがいいと思っていました。そこで、実際は、壁面緑化して、少しでも園舎が景観に攻撃的にならずに、一体化するようにと思って設計をしてもらいました。

 フンデルトヴァッサーは、自然と調和する人間味あふれる建築をめざしました。私は、そんな彼の思いがよく表れている作品は、「草原の丘」と呼ばれる場所に計画されたクアホテルが代表だと思っています。この作品を見ると、彼は「建築」とは単なる住むための道具ではなく、彼の生き方を表現する重要な創作活動で、そこで表現したかったのは「自然との共存」です。彼の生きた時代では、そのような建築は異空間であり、現実離れをした、特殊な建物という印象があります。しかし、最近、このような建築が現れだしました。

 昨年、大阪の難波のホテルに宿泊した時、窓からフンデルトヴァッサーの世界が眼下に見え、とても興味を引きました。その時は、すごいと思っただけでその場には行く機会がなかったのですが、先日、少し時間があったのでそこに行ってみました。そこは、1998年に解体された大阪球場の跡地に、南海電気鉄道が「未来都市なにわ新都」をコンセプトとして、2003年に建設された「難波パークス」というところでした。いつも飛行機で大阪上空を飛ぶときに感じていたのですが、大阪という町は非常に緑が少ない気がします。東京は、以外と緑が多く、真ん中には皇居、新宿御苑、代々木公園、明治神宮、そのほか大名の屋敷跡に緑が多く残されています。

 それに比べて緑が少ない大阪だからこそ、この難波パークスは「緑との共存」をテーマにした意味があるのでしょう。この大型商業施設の屋上庭園であるパークスガーデンは、段差を上手に利用し、2階から少しずつ上に上がっていくように作られています。最近、屋上緑化ということで屋上庭園を造るビルが増えてきましたが、この屋上庭園は「空中庭園」と名付けられています。それは、世界最古の屋上庭園は、古代メソポタミア文明の紀元前500年頃に作られた「バビロンの空中庭園」から採ったのでしょう。その庭園の造り方も、バビロンをモデルにしているようです。バビロン空中庭園は、新バビロニアの王、ネブカドネザル2世が、故郷の自然が忘れられない王女アミュイティスのために建造したと言われています。その内容は、ポンプでユ?フラテス川の水をくみ上げで人工の庭をつくったり。全体を7段にして、くみ上げた水を下に流れるようにしてありました。しかし、ここにどうやって水をくみ上げたのかは分かっていないそうです。

 全体企画は、バビロンですが、全体のイメージは、グランドキャニオンをイメージしたものだそうです。断層のような横縞、曲がりくねった側面は、確かにグランドキャニオンを彷彿とさせます。しかし、荒々しいイメージはなく、約235種類、約40,000株の植物が植えられているため、庭園というよりも植物園のようです。企画者は、こう言っています。「我々が目指したのは、公園が公園として切り離されて存在するのではなく、樹木や花の自然と公園に面する店舗と広場とが一体となって、人々に豊かな体験や感動を提供する公園です。」

 こんな保育園を作りたいなあと思っています。

都市の中の自然” への6件のコメント

  1.  宮崎駿(漫画家、アニメ作家)と養老孟司(昆虫好きな解剖学者)の対談本「虫眼とアニ眼」の表紙には、宮崎駿氏が理想とする保育園・幼稚園が描かれています。それがまさにガウディーが設計したガソリンスタンドや、フンデルトヴァッサーが計画したクアホテルとそっくりです。自然と人の共存を考えると、やがて行き着く形なのかなと思います。
     宮崎氏はその本の中で、理想の保育園・幼稚園だけでなく、理想の町の姿を描いています。町の中心に保育園・幼稚園があり、その隣には老人ホームが隣接し、歩いて行ける距離に必要なお店などがあります。車に関する制限もなにかあったような気がしますがよく覚えていません。とにかくこんな町に住みたいなと感じさせるイラストでした。あまり大きすぎず、ご近所力(ソーシャル・キャピタル、社会関係資本)が強そうな、いい町です。住み良い環境を作ろうと思ったら、個々のパーツ(保育園・学校、老人ホーム、病院、職場、公園、交通網など)を別々に考えるよりも、まち全体で考えた方がいいのかなと思います。
     宮崎駿氏とコラボレートしたら、きっといい保育園ができると思います。

  2. フンデルトヴァッサーの作品を見ていると、何だか不思議な気持ちになります。懐かしいような、でも新しい自然との関わり方を見せられているような、とにかく不思議な感じがします。私の園はそれこそ大きな自然の中にありますが、この作品のように自分から自然との共存を意識したものになっているかと言われると、自然があるのが当たり前と思い過ぎているのか、十分ではない気がします。自然と一体になったようなコンセプトを持つことができれば施設のあり方もまだまだ変わっていけるような気がします。今日見学させてもらった園でもそんなことを考えさせられる部分がありました。作ることはできないかもしれませんが、変えることはできると思うと楽しくなります。

  3. 私の目下の夢は、博多の街で登山をすること。ここに「アクロス山」(標高60m)という里山?があります。種を明かすと、1995年に旧福岡県庁跡に建設された「アクロス福岡」という公民複合施設は、その南側が段上のステップガーデンで、「山」をコンセプトにした大規模な屋上緑化が施されています。隣接する天神中央公園と一体となったランドスケープを構成しています。これがアクロス山の正体です。

    NHK―BSの「美の壺」で見ましたが、ほんと見るからに野性味にあふれ、荒々しく生い茂る樹木がビルの南面をすべて覆いつくしています。階段の入り口にはちゃんと「アクロス山へようこそ」の看板まであります(笑)。その説明によると―。

    ≪このアクロス山:ステップガーデンでは開設時に植栽した76樹種3万7000本の植物が、10年を経過した現在約120樹種4万本に生育しました。イカル・シジュウカラ・ムクドリ・ホオジロなどの鳥が飛来し、その鳥たちが種を運んでくるのです。このたび主たる58樹種に解説文を付けました。花言葉も添えています。どうぞアクロス山で憩いのひと時をお過ごしください。≫

    ここからゆっくりと階段を登っていくと、ビルの外壁を伝って流れ落ちる滝を眺めることができます。樹木もここがビルの上だということを忘れさせるほど自然に繁茂しています。ここは、まさしく「山」です。山頂からは、海の中道や博多ポートタワーが一望できます。植栽設計を担当した造園家の田瀬さんによると、”一つの山を育てる”そんな発想から生まれた緑の空間だそうです。藤森先生もこの山なら”登山”ができます。いっぺん挑戦してみてください。

  4.  ガソリンスタンドのような保育園・・・なかなか想像がしにくいですが、写真を見ると雰囲気は伝わってきます。確かに新宿せいが保育園の裏にある、森のような公園と園舎が緑で繋がっていると、自分が想像しても本当に素敵な建物になる気がします。それよりも「自然との共存」表現したフンデルトヴァッサーの建築はもちろん初めて見ますが、建築について一つも分からない私でも、今まで見たことがない設計です。むしろ、こんな事が実現できるのか?と疑ってしまうくらいです。それが大阪に似たような雰囲気を放つ建物があるのですね。確かに上空のからの写真を見る限り、緑ととても野が一体化し自然と共存しているように見えます。緑が少ない場所にあるとインパクトは強いですね。もし、こんな保育園があれば、働いてみたいですし、園児として通ってみたいと思います。

  5. 大阪という土地はとても緑が少ないですね。実際その街の中を歩いていると東京のように並木道も少ないですし、あまり街路樹がないイメージもあります。なにより多いのがグラウンドですね。しかも、芝生ではなく、砂のものがおおいです。今後とも緑がもっとおおくなるといいですね。今回まさか、大阪の土地が出てくるとは思いもしませんでした。いく度か難波パークスには足を運んだことがありますが、こういった建築という目線で見ていなかっただけにとても新鮮な目線で見れた気がします。都市部の中にはぽっかりと緑が生い茂っているのは一見不思議な様子ですが、どこかホッとしますね。また、今回出てきたフンデルトヴァッサーという方は知りませんでした。しかし、この草原の丘という計画の形は実に自然との共存ということを全面にだしていますし、新しい建築の形を見ているように思います。自然は子どもたちにおおくのことを学ばせてくれるというのはこのブログでもよく出てくる話題ですが、特別にそういった機会を持つのではなく、やはり自然と関われるような環境を考えていくことも必要だと思います。そのために建築にも目を向けていくことはとても参考になることは多いですね。

  6. 園の職員玄関の靴箱の色合い、あれはフンデルトバッサー調、ですね。なんとも斬新な感じがします。私たちの園ならではの色調家具。こうした試みにあふれた園で働けるのは幸せですね。東京の中心部に園を構えるとなると様々な制約があったわけですが、そこは「ないものねだり」より「あるものさがし」で乗り切ってきた7年間があります。私なりに解釈して園舎の構造を説明するとき、皆さん園の持つコンセプトが実際の建物の構造に反映されていることに驚きを示します。「この園舎で満足ですか?」という質問を受けることがあります。私は「それは園長に訊いてみてください」と一旦答えますが、今回のブログで紹介されたことを話すことがあります。園の長期目標は園の北側にある公園の森林と同化し、ここは何?と思われることですね。私たちの園は「保育園」とはわかりにくい建物ですが、私はそれがいい、と思っています。

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