四つのスキル

 今の子どもたちが大人になり、世の中に出るこれからの時代、世界はグローバル化し、もはや、ただ成績がいいとか、行儀がいいとか、黙って座ることができるとかいうこと自体は、あまり意味がなくなります。子どもたちに必要な力は、「創造力」「問題解決能力」「コミュニケーション力」と言われ、その力が日本の子どもたちに欠けていると言われてきました。また、PISAの学力調査でも、日本の子どもは学力において少しずつ低下してきている傾向にある中、その対策を文科省が模索しています。しかし、私は、それら学習のもととなる「意欲」が、日本の子どもたちはOECD参加国の中でも下位であることが関係していると思います。

 そして、実際に社会に出て、企業を経営するうえで、国際競争力をつけるうえで必要な子とは何かというと、「アントレプレナーシップ」「柔軟性・順応性」「中小・中堅企業の成長性」であることを昨日のブログで紹介しました。そして、それらにおいて、日本は非常に低いのです。特に、この中で、「アントレプレナーシップ」「柔軟性・順応性」が必要であり、それにもましてそれらが非常に足りないことは、幼児教育の世界でも実感します。その中で、「アントレプレナーシップ」は、あまり聞きなれない言葉ですが、「新しい事業の創造意欲に燃え、高いリスクに果敢に挑む姿勢。」ということであるとすれば、幼児教育を含めて、教育分野でも思い当たることが多いですね。古くからの事業を守ることが「子どもを守る」ということにすり替えて、新しいものへの創造意欲に欠けるどころか、新しいものを排除したり、新しい取り組みを阻止します。

 よく、保育園の民営化の中で、条件として「今までの保育を変えないでほしい」ということがありますが、変える、変えないではなく、今の時代に求められる保育はなんであるかをきちんと議論すべきだと思います。そして、変化することを、子どもが戸惑うからと言いますが、子どもたちは常に時代が変わる中、環境が変わり、新しい時代で活躍するために、前進しようとする存在です。しかも、これから必要な力として「柔軟性・順応性」が重要であるにもかかわらず、日本は、OECD参加国59国の中で、昨年は54位、今年50位なのです。また、アントレプレナーシップ教育の重要な観点として「異なる視点で物事を考えることの重要性を知ること」が挙げられていますが、やはりこの柔軟性にも欠けているのです。

 昔から必要とされる「創造力」について、クレイトン・クリステンセン、ジャフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン「イノベーションのDNA」(翔泳社)の中で、面白いことを言っています。「創造性は生まれより育ち」であり、学習を通じて習得できると指摘しているのです。そのために、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力という4つの行動的スキルをフルに活用し、それらの動機として、「現状を変えたいという意思に燃えている(現状に異議を唱える)」「変化を起こすためにリスクをとる」ということが、新しいことに取り組む勇気を持たせてくれるというのです。

 この4つの行動的スキルを、「イノベーションのDNA」という本の中では、もう少し詳しく説明しています。「質問力(物事の探求に情熱を燃やし、現状に異議を唱えるような質問を行う)」、「観察力(周りの世界に目を光らせ、新しいやり方の元になる洞察やアイデアを得る)」、「ネットワーク力(多様な背景や考え方を持つ人たちとの幅広いネットワークを通じて、アイデアを見つけたり試したりする)」、「実験力(新しい経験に挑み、新しいアイデアを試す)」

 この4つのスキルは、とても参考になります。

四つのスキル” への5件のコメント

  1. “いま”を生きる子どもたちに求められる保育をするために「民営化」があると思うのですが、大人たちは別の打算や思惑で議論をするので、「民営化」の真の目的が霞んでしまい、賛成のための賛成、反対のための反対の堂々巡りが続くわけです。賛成者は行政コストを盾にします。反対者は子どもを、悪く言えば”人質”にして主張を通そうとします。でも実際、子どもは大人が思うほど順応性が無いわけではありません。順応性が無いのは、民営化という変化についていけない大人の方です。自分たちの”やりたい”という思いを受けとめてくれる保育なら子どもは喜んでそれに飛びついてくれます。別に今までの保育に満足していたわけではなかったのですから。「民営化」は決して最終目的ではありません。保育の主体者としての権利を子どもが取り戻すためのスタートにすぎないと思います。

  2. とっても納得のできる内容でした。創造力は一部の人に与えられた才能だという捉え方をしている人もいますが、私はそうは思いません。様々な経験の組み合わせによって創造性のある活動はできると考えます。いろんなことに興味を持ち、物事をよく観察し、様々な人の考えに触れる機会も大切にし、あーでもないこーでもないと繰り返し行動することで新たなモノは生み出せると思っています。そのためにはリスクをとる場面はどうしても出てくると思いますが、そこで躊躇せずに前に踏み出せる力を子どもたちにはつけていってもらいたいと思います。勝負という言い方は正しくないかもしれませんが、勝負は社会に出たときです。その時にしっかりと前に踏み出せる力の基礎をつけてあげたいと、いつも思っています。

  3.  PISAの学力調査で上海のような試験対策をしても意味をなさないですが、そもそも根本の学習への意欲が低ければもっと意味がないですね。日本の子ども達が学習への意識がそこまで低いのにはショックを感じます。ただそれは、子どもが悪いのでなく、日本の教育システムが子どもをその様にしてしまったのでしょうね。時代が進むにつれて様々な物事が変わる中、それによって変化していく必要があります。伝統という言葉にしがみついて、何も変えない企業、そして教育。今の教育でブログに書かれてある4つのスキルが身につくのであれば、十分ですが、実際はどうなんでしょうか・・・。

  4. 学力調査の話になると保育園の子どもたちの様子を考えてしまいます。新しいことに興味はあり、初めは食いつくものの、その集中力であったり、取組み方がどうも腑に落ちないことがあります。そこにどうも意欲や探究心が薄いことを感じます。「アントレプレナーシップ」が前回のブログに出てきましたが、やはりなかなか育てる環境が議論されていないように感じます。社会の時代は常々変化しているのに対し、教育機関が思うように進んでいない弊害はそこかしこに社会問題として出てきているように思います。4つの行動スキルが出てきましたが、こういったことや将来における保育や教育の考え方をもっと議論し、教育機関や大人の価値観を変化させていくような取組みや議論が必要ですね。

  5. 「意欲」が最下位、ということは、「何をしたいのか」がわからない若者が多い、ということですかね。「何をしたいか」がわからなくても、なんとなく進学して、採用してもらえるところに就職して、そして「何をしたいのか」わからなくても、よほどのことがない限り解雇もされない、という我が国の状況がありますから、「意欲」が最下位になるのも頷けます。これを子どもたちのせいにする大人たちがいますが、意欲低下の環境を用意しているのは当の大人たちです。しかも「柔軟性・順応性」という時代の変化に応じて行動する際に不可欠な要素もOECD59か国中我が国は50番台ですから、これは硬直社会であることを示しています。創造力に富みどんどん成長しようとする若者に生きにくい社会なのかもしれないと思いつつ、しかし一方で様々なお膳立てをしてもらって物事の判断も自分でしなくても生きられる社会でもあるのでしょう。今回のブログでは「4つの行動的スキル」をして、「質問力・観察力・ネットワーク力・実験力」が挙げられています。とても重要な力だと思うのですが、小中高と失われゆく力でもありますね。せめて就学前施設ではこの力を子どもたちに保障していきたいものです。

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