夏の楽しみ

 小学校が夏休みに入りました。夏休みというと、今の子は何を思い起こすでしょうか。田舎のおじいさん、おばあさんに会いに行く、キャンプに行く、今ではディズニーランドに行くかもしれません。私の子どもの頃は、そうあちらこちらに行くことはありませんでした。それは、大人は夏休みがないからで、あってもお盆のあたりの数日間でした。そんな夏休みの毎日での過ごし方の中心は、「朝のラジオ体操」でした。私の子どもの頃は神社の境内でおこなっていました。今は、ラジオ体操はしているのでしょうか。先日、テレビのドラマの中で、夏休みのラジオ体操の場面を放映していました。そこでは昔ながらの風景でした。また、昨日、歩いていたらラジオ体操の案内版を見つけ、今でもやっているところがあるのだと思ってホッとしました。

 朝のラジオ体操が終わると、急いで並んで役員さんからカードにスタンプを押してもらいます。そのために、カードが配られたら、まずそれに穴をあけてひもを通します。そして、そのカードを首からぶら下げて参加し、体操をしている最中にそれが邪魔だった記憶があります。それを毎日欠かさず押すのが目標でした。それは、夏休みの最後の日に、全部ハンコが押されていると何か商品がもらえたからです。ですから、まず、朝は、必ず6時半までに会場に駆けつけます。始まる前に参加者で歌う「ラジオ体操の歌」が流れてくると、急ぎ足になります。「新しい朝が来た 希望の朝だ …」という歌詞は、今でもスラスラ出てきます。藤浦洸作詞・藤山一郎作曲で、私が小学校1年生の時につくられています。

 このときに困るのが、具合の悪くて、行けない時です。その時には、きょうだいに頼んで、スタンプを押してきてもらいます。それは、まだいいのですが、長期に出かける時です。子どもの頃は、真面目というか、それしか楽しみはないというか、ラジオ体操のためにどこにも行きたくないと言ったり、出かけてもすぐに帰ってくるようにと頼んだ気がします。それでも出かけるときには、仕方なく、どこへも行かない人に頼むか、あきらめるしかありませんでした。

 そんな夏休みのラジオ体操にも、私は、いつのころからか参加しなくなりました。それが、また、参加し始めたのは、私が教員時代で、その勤務先の地域で、保護者のお父さんを中心に子ども会をつくり、その夏の行事でラジオ体操を行おうと企画した時でした。場所は、その地域の中にある公園でしたが、最初、隣接したお宅から朝早くからラジオの音がうるさいと苦情を言われ、ラジオの周りを子どもたちが囲んで、小さい音で体操をしました。私は、その場所までは自宅から遠かったのですが、まだ小さかった我が子を連れて、朝、車で参加したものです。

 最初、細々としていたラジオ体操でしたが、次第に参加者が多くなり、あるとき、NHKから、ラジオ収録をしたいという話があり、市内の大きな公園で広く呼び掛けて収録した思い出があります。よく、ラジオで放送している「みなさん!おはようございます。今日は、どこどこに伺っています。」という始まりで紹介するものです。それもあり、参加者は、お年寄りも増えてき、場所も広いところで行うようにいきました。ある年、夏休みが終わるころ、お年寄りたちからこんな提案がありました。「ラジオ体操を夏休みだけでなく、1年中やりたい」ということで、1年中、そのお年寄りたちを中心にラジオ体操をすることになりました。ずいぶんと、前の話になりますが、今ではどうしているのでしょうか?

 私の子どもが小学生になって参加した、地域の小学校の校庭で行われていたラジオ体操は、夏休みの最初の1週間と、最後の1週間だけしか行いませんでした。カードを持って行ってスタンプを集める楽しさも、朝、みんなで集まる楽しさも、もっと面白いことが多くなった子どもの世界からは消えつつあるかもしれません。