テーマのヒント

 園で毎年決める「テーマ」は、普段の保育においても、その分野を切り口として子どもたちにさまざまな体験をしてもらい、そのテーマの対象についての理解を深めるということがあります。また、そのテーマが、そのまま体験や製作として企画されるのが、行事です。その中でも、「夕涼み会」はそのテーマを体験するイベントになります。特に、それが生かされるのが、会場のレイアウト、体験コーナー、製作コーナー、ゲームコーナーです。これらは、各クラスが分担して企画するのですが、テーマがあることによって、各コーナーが統一されたものになります。

 テーマに沿っていろいろな企画をするときに感じるのが、さまざまなアイディアが出る人と、なかなかアイディアが出ない人がいるということです。それは、生まれつきもあるのですが、それ以上にいろいろな経験をしているかどうかに関係してきます。それは、いろいろな場所に旅行に行くことも大切でしょうし、映画を見たり、本を読んだりすることも必要でしょうし、遊園地、デパートの子ども広場、地域の公園などに行くのもいいでしょう。もしかしたら、和風の居酒屋や、素敵な洋風のレストランにもヒントがあるかもしれません。私は、テーマが宇宙だった時に、夕涼み会の全体イメージでいいヒントがないかと思って、北九州のスペースワールドに行ったことがありますし、鳥がテーマの年には、野鳥公園にも行きました。私の子どもが小さかったころは、よく家族で地域のウォークラリーに参加していました。保育という仕事は、そんなことが、仕事のうちだということができる職業であることに感謝しています。

 しかし、いろいろな体験をすることが大切であるといっても、そこから感じ取る感性がなければなりません。何気なく見過ごしていることでも、そこにはヒントがたくさんあるのです。私は、職員と時間があるときには「ブラヘイジ」という、地域を歩く会を持ちますが、ただ見学して歩くのではなく、そこに保育のヒントがたくさんあり、それをレクチャーするという意図もあるのです。店のディスプレーを見て、「これは園の装飾に使えるね!」、しゃれたグッズの店に行くと、「これをあそこに置くといいかもね!」、ドイツに行ったときにも、園の見学だけでなく、店を見て歩くときにも、道を歩くときにも何かヒントがないかを探します。たとえば、ビアホールに入ったら、ビールの原料のホップが梁からぶら下がり、壁にはビールをかたどったリースがかけられています。こんな装飾を見ると、園での装飾の参考になります。それは、職業的「性」ではなく、職業的「楽しみ」なのです。

 こんなさまざまなアイディア、各地のお祭りの出し物、その影響を受けて夕涼み会がその年のテーマに沿って企画されます。今迄どんなテーマが設定されたかというと、「動物」「のりもの」「鳥」「魚」「虫」「野菜」「絵本」「宇宙」「しぜん」「木」などです。ただ、テーマ名としてはこれでは味気ないので、「どうぶつむらはおおさわぎ」とか「のりものだいすき」「バードウォッチング」「森の木陰でひとやすみ」などにします。また、年間テーマに沿って、夕涼み会だけのテーマを決めることもあります。たとえば、「動物」がテーマの年の夕涼み会は、「平成ぽんぽこたぬき合戦」としました。これは、園の所在地がジブリの同名映画の舞台になっているからです。

 テーマがあると、自然とイメージが沸いてきます。「ぽんぽこ」がテーマの年、ある父親がシンポをつけ、たぬきの格好で現れました。そして、私の処に来て「園長はたぬきに戻らないの?」と聞くのです。映画の最後は、住処を追われたたぬきが、昼は人間、夜はたぬきの戻って踊るという設定だからです。わたしは、こう答えました。「私は、化けるのが上手だから、しっぽは出しません!」