住環境

「ホリスティック」についてのブログで、ギリシャ語で「全体性」を意味する言葉の「ホロス(holos)」から、「health(健康)」という言葉が派生していることを書きましたが、「健康」ということは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいうのです。

ということで、昨日の「健康住宅の日」というのは、住宅が精神的にも、社会的にも満たされる意味を持つことですが、実は、建設業界では、こんないきさつがあります。住宅に「健康」という概念を取り入れたのは、1966年に時の上田博三課長補佐(前・厚生労働省健康局長)が発表した「厚生省公害審議会中間答申」のなかで謳われたのが最初と言われています。答申の要旨は、「健康な居住水準の設定について」として、「良好な居住水準を確保するために、住宅の規模、構造、設備などについて基準を定め、住宅がこの基準を下回らないように指導し、助成することが必要」と解説されています。 ここには、「規模」「構造」「設備」が条件として挙げられています。

 それに付け加えられて、「健康的な居住水準の具備すべき条件」には、「日照」「採光」「通風」「温湿度」「騒音」「室内換気」などの衛生学的必要条件も配慮するように書かれてあります。ここには、建物を収容するハードとして見るだけでなく、そこでの生活というソフトも考えていることはとても重要です。
それに続いて、不特定多数の人が使用または利用する建築物を対象とした「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」が昭和45年に制定されました。この法律は、「建築物が原因となるシックビル症候群などの疾病の発生率が先進国のなかでも極めて少ない成績を収めていることは広く知られているところ」と「厚生省のすすめる健康住宅」にもあるように評価の高い観点が盛り込まれています。

住宅には、建物における問題がありますが、それが住む人の健康に関係してくることが多いのです。採光や風の流れ、温湿度、騒音、室内換気などは直接的に人の健康に影響してくることはわかるのですが、それ自体から、影響が広がり、人間の体に影響をしてきます。たとえば、住まいの小屋裏・床下・内壁におきる結露は、「建物の病気」といわれますが、結露からカビが生じ、カビをえさに繁殖するダニが拡大します。それは、「室内発生するダニは健康上有害であり、とくにゼンソク、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎に関係する」ともいわれています。すなわち、結露・カビが建物の病気を引き起こすならば、カビ・ダニは人への病気の原因となるということで、健康度ポイントが挙げられています。それは、「結露・カビ、ダニ、床下環境、過乾燥、省エネ(断熱気密)、換気、音環境、高齢者対応」です。

また、最近、少子高齢社会へ向けてと、今回の東北大震災を教訓に新たな観点から、住まいの健康度を見直されています。新たなポイントは、「耐震精密診断」と「ユニバーサルデザインハウス」の2つです。ユニバーサルデザインハウスは、高齢者対応をより前進させ、幼児から高齢者、障害者にまで広く誰にでも優しい住まいのチェック項目を作成したりして、のちのちリフォームなどに煩わされず、長く住み続けられるようにはじめから意図した家づくりをしていこうとしています。

保育室においても、かつて調査をしたことがあるのですが、通風、換気、騒音など住宅としては悪い環境だとチェックされてしまうような建物が多く見られました。食事の横で布団を敷く時の塵埃調査などはかならひどい環境であったり、1日中、かなりの騒音に匹敵する音環境であったりの園が多く、また、少子社会でのデザインを検討することなく多子社会でのそのままの室内環境であったりと、かなり遅れている気がします。

住環境” への6件のコメント

  1. ひょんなことから保育所の民営化に関わりができました。長いこと臥龍塾で学んだことが生かせればと思っています。ここは田舎ですので、新宿のようにはいきません。民営化といっても「公設民営」。今のところ、園舎も行政が建てるそうです。

    こんな園舎になりましたが、どなたか運営をお願いできませんか・・・それでは、まるで建売住宅の入居者募集のようです(笑)。「ハコもの行政」という言葉があるように、公共施設を建てること自体に、いろんな意味があるんでしょう。

    他の公共施設と違って、保育園は子どもが遊び、学び、生活する場です。住環境としての快適性と同時に、子どもの発達を促す空間を形成する建物だということを知ってほしいですね。法令である幼稚園教育要領や保育指針を基にした保育を実践するためには、こんな園舎をと提案しようと思っています。

    それにしても、長いこといろんな幼稚園や保育園の園舎を見てきましたが、子どもの発達を主体に考えられた園舎はほとんどなかったですね。幼稚園はミニ小学校だし、どこの保育園も託児所の延長に見えました。だから、八王子のせいがの森を見学した時の衝撃はいまだに忘れられません。あんな保育園がこの田舎にできたらと密かに思っています。

  2. 建物における生活のことまで考えることで健康にも影響を与えられることは、そんなに深く考えたこともなかったですし、少子社会と多子社会の室内環境のデザインというのもそんなに考えたことはなかったので、新たな視点をいただいたように感じています。今は科学の進歩などによりいろんなことが分かってきていると思うのですが、昔の住宅なんかはどうだったんでしょうね。全くの推測ですが、科学的ではなかったとしても、その土地に合うように作るなど、その地での生活にあったものがつくられていたんじゃないかと思っています。その土地にあったもので、しかも少子社会の特徴をおさえた園舎ができるとすれば、当然そこで行われる保育も、そして子どもたちの健康にとっても、いいものになるんじゃないでしょうか。そんな視点ではなく、コストのことや大人の都合ばかり考えた園舎が建とうとしていることに対して、非常にもったいなさを感じているところです。

  3.  私達、人間が生活する建物はただ生活するだけの物ではなく、建物にも人間の生活にも大きく影響するのは、保育の世界、「見守る保育」に出会ってから考えるようになりました。建物、いわば環境は人間に大きく影響するのは、言うまでもないですね。ドイツからの報告で建物は第二の教師と言われているように、建物が子どもに与える影響は大きいのは、外国でも言われています。ブログにも書かれているように、建物を建てる場合は色々な事を考える必要があります。採光、風通し、温湿度などを設計しないと、カビや喘息など人の体に害を与えてしまいます。また東北の震災の影響か耐震が重要視されてきている気がします。時代によって変わってくるのですね。しかし、保育室に関しては全く変わらないですね。子どもの姿も時代で変わってきている気がします。中でも少子化の影響は大きいと思います。子どもを取り巻く環境が変わってきているのならば、子どもが生活する保育園や幼稚園の建物、考え方も変わる必要はあると思いました。

  4. 私の知り合いのいくつかの園は安心こども基金のお金を使って新園舎を建てているようです。新園舎を建てる際「健康建物」という発想はとても重要な気がしますね。今回のブログでは建物の健康について書かれてました。まぁ設計士さんや施工業者さんにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、私のような建築門外漢はともすると専門家任せで「健康建物」を意識しません。これは後々良くないですね。今回のブログを参考にしながら住環境については気を配っていきたいと思います。藤森先生が以前調査した保育室内の塵埃等の件、これは極めて注意を払わなければなりません。耐震以上に改善が必要だと思います。「食事の横で布団を敷く時の塵埃」が園内の乳幼児の口腔から体内に入る、親が知ったらどう思うことでしょう。そうした保育室環境を「仕方がない」で片づけているとするならば、これほどの虐待もないでしょう。それにしても「食事の横で布団を敷く」感覚は本当に理解に苦しみます。そうした保育行為が改善されていることを切に願うものです。

  5. 今、家を選ぶ基準として「日照」「採光」「通風」「騒音」「室内換気」などは、当たり前のように書かれれています。と言うことはそれだけ自分たちの生活する住居は人間にとって大切なことです。また子ども達には日中生活をする保育園といういう場所の環境も重要です。以前、藤森先生は海外には「ハウスマイスター」という保育園の環境を専門にしたスタッフがいて、言葉が簡単にはなってしまいますが、「保育園環境が子どもを育てる」というお話もして頂きました。ブログの最後にもあったように、騒音、塵埃調査でひどい環境というのは子どもはもちろん、大人にとっても良くないと思います。いろんな意味で「環境」というものをもっと重要視しなくてはなりませんね。

  6. 環境というものが保育の中で言われている中、そのことがあまり進んでいないのは残念なことです。保育におけるものというと違うのかもしれませんが、住環境の影響は大きいように思います。とくに健康という部分にはとても住環境は関わりは深いでしょうね。その環境の移り変わりも時代と共に変わっていくべきものなのでしょうがそうはならないうのは疑問です。いま、子ども園という新たな取り組みが始まる中、子どもたちの住環境という部分をもう一度考えることもこれから必要になってきますね。

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