蓄え

5月5日は、二十四節気では「立夏」といい、よく「暦の上では今日から夏です」という言葉を聞きます。「陰暦暮らし」(千葉望著)のあとがきに「花鳥風月を愛でる日本文化はずいぶん変化したように思われているかもしれないが、私たちの身体の奥底にひそんでいる情緒は今も健在である。ふだん自然から遠く離れて暮らしている人たち、たとえそれが若い世代であったとしても、すすきが揺れている秋の野に出て輝く月を眺めれば、先祖が受け継いできた遠い記憶がよみがえってくるに違いない。」と書かれてあります。

 空を見上げたときに、昼間には太陽を、夜には月と星を眺めます。特に、私たち日本人は、月に趣を感じます。昔から月を題材にした歌が多くあります。月を眺めていると、「先祖が受け継いできた遠い記憶がよみがえってくる」ことが実感できます。たまたま、5日の夕方、妻と東のほうに大きな月を見つけました。私は、思わず「月は東に 日は西に」という歌を口ずさんだくらいに、とても大きく、きれいな月でした。

後でわかったのですが、この日は、月が大きく明るく見える「 スーパームーン現象」であるということを NASAが伝えていたのです。「スーパームーン」とは 、月と地球の距離が一番近くなる時に通常よりも 月が大きく・明るく見ることができ、海の満ち潮が数センチ高くなったりする、という現象のことだそうです。特に、今年のスーパームーンはいつもより 14%大きく、明るさは13%も増したそうです。しかも、スーパームーンを見るための一番いい時間帯は「月が地平線近くにある時(月がではじめた時)」なのだそうで、ちょうど私たちが眺めた月だったのです。しかも日本でスーパームーンが起こったのは、過去10年間でたったの3回だそうで、かなり、レアな体験をしたのです。ただ、あとで、そのときの写真を撮っておけばよかったと後悔したのですが。

暑い、寒いなどの季節は、太陽の動きに合わせておきますので、月の運行だけを基準にしてつくられる太陰暦は、季節とはだいぶずれてしまいます。立夏という夏の始まりといっても、実際の夏は6月くらいから始まり、「暦の上では」という注釈がつくのです。しかし、私たち日本人は、、花鳥風月だけでなく、月の動きに合わせて年中行事を行い、さまざまな儀式が行われました。たとえば、「端午の節句」に代表される「節句」は、季節の旬の植物から生命力をもらい邪気を祓うという目的から始まり、中国の暦法と、日本の農耕を行う人々の風習が合わさって作られています。

ですから、農耕を中心にした日本では特に陰暦と生活が関連し、「立夏」のころは、「新緑の季節で、九州では麦が穂を出し、北海道では馬鈴薯や豆の種まきが 始まります。」というようなことが伝承されています。そして、その種がゆくゆくは実をつけ、収穫を迎えるのです。種まきをしてから実をつけるまでの間、人類はじっと待ちながら、その世話をします。このように、未来を見て、栽培をするのは人間だけだといいます。また、先を予測して今やるべきことをするのも人間だけだといいます。では、「アリとキリギリス」の話のなかのアリはどうなのでしょうか。冬に食べるものがなくなるのを予測して、夏の間にせっせと食べ物を蓄え、反してキリギリスは、今をただ楽しく生きているために、冬になると、アリは生きていくことが出来ますが、キリギリスは、飢え死にしそうになります。鳥の仲間やリスなどもえさを蓄えることをする種類もいます。
この違いを考えることで、人間らしさを考える上でヒントになることがありそうです。