コンセプト

銀座線に新しい車両を導入しようとしたときに、開発スタッフはどのような話し合いをしたのでしょうか。先ず、コンセプトを決めます。当初からのコンセプトは「銀座線の歴史を感じさせるイメージを持たせつつも斬新性がある、格好いい車両にしよう」ということでした。これは、全体設計の基本となる部分です。そして、銀座線新型車両の製造に当たり、まず、そもそも銀座線とはどのような路線かを考えます。この路線は、2009年に経済産業省の近代化産業遺産群にも認定され、東京メトロの中で一番歴史がある路線です。地下鉄の始まりでもあることから、この歴史を形にしていきたいと合意します。そこで、スタッフは、自分の子どもの頃の思い出を語ります。その頃、地下鉄は当時の最新鋭の車両を投入した路線が多かったのですが、その中で銀座線はどこかレトロ感が残っていて印象的だったようです。そこで、1000形をモチーフにするという方向性が固まります。スタッフの中に染み付いている銀座線の体験をいかに現代風にアレンジしようかと、気持ちが高まりました。

しかし、よくある話ですが、1000形がモチーフとなると、部内会議で、できるできないは別としても色々な意見が出ました。しかし、幸い、銀座線は集電方式も他路線と異なり、他社線との乗り入れがない東京メトロ独自の路線ですので、「これまでとは違う車両を造りたい」という想いを実現できる条件があったのです。そこで、いろいろなアイデアが出されます。その中で、銀座線といえば思い出すのが、私と同じで、昔の銀座線はサードレールから外れる時に電力供給が止まるため、車内灯が一瞬消えたということがあります。アイデアを出し合うときには、「いっそそこまで再現しようか」ということまで出たそうです。このあたりのエピソードを聞くと、銀座線にまつわる想いがそれぞれにあって、電車好きであることが感じられます。それは、スタッフの「どんな仕様がいいか、システムはどうするか。車両コンセプトを決める段階も非常にエキサイティングでした。」という言葉からも感じられます。

コンセプトを決めるときに、その過程においてワクワクする、エキサイティングな気持ちがなければ、人を感動させることは出来ません。そして、その実現に向けては、「遊び心」が重要になります。そして、それが出来るできないかではなく、思いつきでもいいので、さまざまな意見を出し合える雰囲気がなければなりません。そんな気持ちから、1000系の大きな特徴である車体色・レモンイエローを再現することになります。次に、車両デザインについても検討を重ねます。

現在の01系の銀座線も、レモンイエローを残すためにラインとして車両にラッピングされています。それをフルラッピングにするかどうかを、できるだけ多くの人が目にすることができるよう、ダイヤの組み方等もシミュレーションしたり、車両メーカーからは、施工性や費用のことからの意見もあり、さまざまな観点から検討します。その結果、フルラッピング」に決まりますが、最後の決め手は、「そのような手法を手がけてみたい」との想いや、「日本にはほとんどないので、そういう車両があってもいいかな」とか、「車体に色が塗ってある電車が走るという銀座線の象徴的な光景がまた見られる、といううれしさもあるんですよ」という気持ちです。それは、一見、論理的ではないようですが、その車体を見たときの乗客の気持ちに共感する気持ちなのです。

そして、実際の色を決めるとき、何度も地下鉄博物館に保存してある車両を見に行きます。そのときの思い出をスタッフはこのように語っています。「最後は人の目、感覚を大切にしました。色の決定まで2?3か月かかりましたし、何度も足を運ぶのは結構大変でしたが、でも正直、楽しかったなぁ。」

スタッフは、こうも言っています。「銀座線の新車のモットーは“30年後のスタンダードを造る”こと。私たちも30年後にあるべき姿を見据えて開発に当たることを肝に銘じました。」