首飾り

 最近は、男性の化粧は常識になりました。集英社新書に「男はなぜ化粧をしたがるのか」)前田 和男著)という本が出ています。内容紹介には、「化粧など、一過性の流行、風俗とみる向きもあるが、ことが男のということになると、俄然、歴史にかかわる重大事にもなってくる。歴史は教科書に載るほどの出来事の積み重ねだけではなく、美顔術、毛髪の手入れの変遷といった細部にも宿っている。古墳時代から奈良、平安の王朝時代、さらに武家の台頭、戦国時代を経て江戸、明治、大正、昭和、そして現代へと続く時間の中で、男の化粧はどのような意味と価値をもっていたのか。本書は時代時代の史料を基に、忘れられた史実を描いてみせる。」とあります。私は、この本を読んでいないのでわかりませんが、化粧にはどのような意味があったのでしょう。

 その答えのひとつがNHKスペシャル「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか」の最初に流れました。おしゃれ関係の品物が遺跡から出土します。ネックレスやブレスレットなど身を飾る道具です。おしゃれは、自分をよく見せたい、魅力的に見せたいなど、さまざまな意味があるだろうが、答辞に¥の人はどのような意味を持っていたのであろうかという疑問に、ヘンシルウッド博士はこう答えています。「おそらく装飾具はアイデンティティの構築に関係しており、その人自信のアイデンティティを示しているといえるでしょう。ほかの人たちと自分は違うのだ、あるいは、自分はこの集団に属している、この集団の人々と自分は同じなんだという自己認識の現れです。」

 確かに、一時期はやった若者の奇抜な化粧には、そのような意味があるような気がします。しかし、なぜ、それが化粧なのかということをNHK取材班は、カラハリ砂漠に住むサンの人たちを取材します。彼らは、特に女性ですが、驚くほど大量の首飾りを身にまとっています。それは、遺跡で大量の首飾りにしたであろう貝殻の意味を探ることになるかもしれないのです。

 彼らは、食料を基本的にはみんなで分かち合うそうです。「彼らの社会で最も嫌われるのは、ケチと自慢です。生き残るためには分かち合うことがとても重要だったのだと思います。最悪なのは身勝手に村の生活の歩調を乱す人です。サンの人たちの生活スタイルを見ていると、一番根源的な人間の生き方、私たち人間に共通している特徴が見えてきます。」それは、取材班は「平等主義に基づく、こうした食料の分かち合いこそ、狩猟採集民族の大きな共通項だ」ということのようです。

 彼らは、なぜそこまで分かち合う必要があるのかということに、こう答えています。「自分勝手な人は自分の家族だけでしか分かち合いませんが、私たちはグループの中の誰とでもシェアしつづけます。一緒に住んでいるのに、私たちがもし分け合わずに自分勝手にやっていたら飢えて一族もろとも死んでしまったでしょう。」どうも、私たちの先祖は、分かち合う生き方によって、非常事態を乗り越えてきたようです。

 この分かち合う社会に装飾具が登場します。サン族の首飾りは、誰かからプレゼントされたものです。彼らは、こう言います。「祖先たちがずっと交換し続けてきたから私たちも交換するのです。その交換は続いていくのです。だから、首飾りをたくさんしていない人は、交友関係が少ない人です。私のようにたくさんしている人は、交友関係が多いのです。困ったときに助けてくれる人が多いのです。」まず、赤ちゃんが生まれると、親戚はビーズを乳児にプレゼントし、血族の証にするのです。「いつまでもあなたのことを助けにいきますよと」

 現代を生きる私たちは、何本の首飾りを首にかけているのでしょうか。