ドイツ報告6

 今年のドイツ研修は、いろいろな面でとてもラッキーでした。それは、まず、天候に恵まれたことです。ここ数日は寒く、参加者はみな防寒具を用意して言ったのですが、その寒さは、かえって気持ちがいいくらいにさわやかでした。また、見学先もいろいろなパターンの園を見ることができました。その中で、研修4日目に見学予定の園で、感染症がはやり、見学できないことになりました。しかし、その代わりに見学することになったのは、各国で最近注目され、特にドイツでの取り組みが日本でも話題になっている「森の幼稚園」でした。昨年も、森での保育を見学して、いろいろなことを学びましたが、それは、週に1日、森で子どもたちが過ごすという「森のプロジェクト」でした。

 今年、見学したのは、れっきとした「森の幼稚園ホーエンキルヒェン」です。園児は、3歳から6歳まで15名が在籍して、保育者3名での保育です。2001年夏、「エーリッヒ・ケストナー小学校」に「昼食ケア」という取り組みが行われたのを契機に、この地域のNPOである協会が立ち上げられ、すぐに「森の幼稚園」構想へと発展していきました。そして、その組織は、小学校のパビリオンに、そして、建設用ワゴンを取得するに当たってさらに発展していきます。そして、その活動がミュンヘン地区協会の土地利用が認められ、きちんと認可園として活動をしているのです。

 この経緯からわかるように、この幼稚園には立派な園舎がありません。森の中に置かれたトレーラーハウスのような建設用ワゴンが園舎です。その名残として、タイヤがついています。私は、昨年まで保育室の面積基準があったということですので、このような園舎で認可が受けられるのかと聞いてもたところ、市当局が土地も提供しているので、当然、その活動が市から認められているということでした。ずいぶんと柔軟性があるのですね。運営は、親のイニシアティブと地域の行政がバックアップしてくれているそうです。このワゴンの中の教材は、基本的には他の保育室と変わらない教材が用意されており、絵を描いたり、ボードゲームをしたり、木工をしたり、楽器があったりと普通の保育室を小さくしただけで、同じようなものがそろっていますので、この「森の幼稚園」が認可されている意味がわかりました。
 まず、登園は8時で、森である現地集合です。保護者による車での送迎です。そして、森での自由遊びの後、9時45分におあつまりがあり、その日の保育の紹介をします。そして、10時から15分程度体ほぐしをし、森での特別プログラムを20分程度行い、その後自由遊び、そして、13時から昼食だそうです。保護者のお迎えは、12時半ころから始まり、14時には全員が降園です。当然、13時前のお迎えの子は、昼食を食べません。

 私たちが見学した特別プログラムは「数」でした。まず、年少、年中、年長に分かれます。それぞれのグループに先生が1名ついて、森の中のそれぞれの場所に移動します。私は、年中グループについていきました。年中さんは3名でした。まず、ある場所についたら、みんなで落ちている松ぼっくりを集めます。それは、まず、松ぼっくりという集合の概念をつけます。 次に、先生は鳥の絵が描いているカードを数枚出しました。その鳥は大きく口を開けています。なぜかと思っていたら、その口は不等号になっていたのです。その不等号をはさんで、松ぼっくりを置いていきます。たとえば、3>1ということを、松ぼっくりと鳥の絵を使って表すのです。その次に鳥の絵を数枚使って、その関係を表します。たとえば、1<3>2という具合です。
href=”http://www.caguya.co.jp/blog_hoiku/wp-content/uploads/2011/10/morinodaisyo.jpg”> 次に先生は、隅に数字とドットが描いてある黄色い紙を出します。まず、その紙に書いてある数字の数だけ紙の上に松ぼっくりを置いていきます。それは、5までの数字です。対応の概念でしょう。次に先生は、かごに入った木の葉をみんなに示します。その葉は、先が何枚かに分かれているのですが、いくつに分かれているか子どもたちに聞き、その数と同じ数が書いてある先ほどの黄色い紙の上に葉を置いていきます。数字と、ドットと、具体物の3者関係を理解させているのでしょう。
 ほんの20分程度の時間でしたが、きちんと年中さんの理解度に合わせて、森の中の具体物を通して「数」の体験をさせているのです。あとで、他のグループである年少さん、年長さんでの保育も、それぞれの発達にあった学習を行っていたようです。

ドイツ報告6” への5件のコメント

  1. 急な変更によってこのような森の幼稚園と出会うというのもなかなか面白いですね。おかげでというか、ちょうど関心の高い森の幼稚園、そして数の概念について考えるきっかけをもらえてうれしく思っています。今、森での活動に取り組んでいるのですが、時間の流れ方(感じ方?)がとても緩やかで、何かに没頭することや集中することに向いている環境でもあると感じています。そんなときの数十分をこのようなプログラムで活動するのも面白いですね。どのように数に触れていくか、関心を持ちやすい具体物が豊富にあることを生かせば面白い取り組みになりそうです。森の活動と組み合わせないにしても、「数のプログラム」という言葉からヒントをもらいました。さっそく考えてみることにします。それにしてもトレーラーハウスの中に写真のような豊富な教材とは。そのへんがドイツらしいところでもあるんでしょう。

  2. 『森の幼稚園ーシュテルンバルトがくれたすてきなお話』という絵本のあとがきで、著者の今泉みねこさんが「森の幼稚園」のよさを次のように語っています。

    <森の中では地面がでこぼこしていたり、急な坂道だったり、滑りやすかったりと様々な特徴があります。この上を毎日歩くことで、子どもたちは様々な体の動きを体験し、のぼる、バランスをとる、滑るなどの運動を自然に身につけ、運動能力を向上させます。・・・森の幼稚園では想像力と空想力が育ちます。森には出来合いのおもちゃがありませんから、子どもは自分でおもちゃを「発明」します。・・・グループの民主的な決まりも、子どもたちは遊びながら学びます。どんな遊びをしようか、どこに行こうか、などを自分たちで決めます。仲間の子どもと問題が起きた時も、自分の力で解決する道を探します>

    「森の幼稚園」は、自然を舞台にした究極の見守る保育といえそうです。どんな立派な園舎よりも無為の自然そのものが最高の環境。どんな高価なおもちゃよりも、森に落ちている木の実や枝の方が子どもの探究心を刺激して発見する喜びを与えてくれる。今泉さんは、森の幼稚園に参加した2歳の子が、ぐらぐらする丸太の上でしっかり立つために、丸太に開いた穴に長い棒を差し込んでつかまる遊びを発見した例を紹介しています。大人は子どもの能力を過小評価しています。

  3. 「森の幼稚園」であっても「トレーラーハウスのような建設用ワゴンが園舎」となっていて、「基本的には他の保育室と変わらない教材が用意されており・・・」というところは新発見です。「森の幼稚園」ときくと森の中のさまざまな自然物を利用して子どもたちがさまざまな体験経験を行うところで、園舎はおろか写真のような教材などないだろうと思っていました。どうも私たちは極端に考えてしまう傾向にあるようです。「小集団の時間」での「特別プログラム:数」の紹介には大変興味をひきつけられました。森の中の算数ですね。しかも「不等号」記号が鳥のくちばしとは恐れ入りました。不等号概念をこんなに早くから体験するのですね。素晴らしい。「数字と、ドットと、具体物の3者関係を理解させ」ているところは藤森先生の「さんすうのはじまり」を読んだにちがいありません。

  4. 「森の幼稚園」園舎も森の中で園舎もトレーラーというのも、笑ってしまうくらい、スケールが大きいのと、それを認めるドイツの柔軟性に驚きます。またトレーナーの中にある教材も、今までの報告で写っていた写真のドイツの園舎と同じくらい揃っています。この時点で狭いから物を置けないという言い訳はできませんね。実際の活動も森の中がメインかもしれませんが、ただ森の中で過ごして遊ぶだけでなく、森の素材を使っての数の体験学習は、「目からうろこ」です。それも子どもの理解度に合わせての学習をさせているのですね。ドイツが出している陶冶プログラムに沿ったカリキュラムを実践しているのですね。園舎が小さい、保育室が狭いなど色々と理由がある園があるかもしれませんが、ちょっとして工夫で外でも十分な保育室になるのですね。

  5. 年中クラスから数の概念が伝えられているんですね。日本とは違う環境に驚くことが多いですね。自然物を使って行うというのは子どもたちにとって、わかりやすいでしょうね。しかも、自分たちが拾ってきたものですし、不等号のような記号ではないところが自然とわかりやすくしているんでしょうね。昨年とは違い、森の幼稚園は幼稚園そのものが森にあるんですね。どうして日本だと天気のことを考えてしまいがちですが、雨の状況でもきっと外で遊ぶんでしょうね。いろんな環境を活かして、遊びの中で学びを伝える考え方はもっと必要ですね。

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