今年は、台風が多く日本を直撃します。二百十日、二百二十日がやっと過ぎたかと思っていると、今回の台風です。久しぶりの東京直撃で、園の近くの大木の街路樹が、根元から倒れて道路を覆っていました。以前、ブログで、中国では、奇数は偶数で割れない数字(固い、割れない、分かれない、に通じる)であることから良いことをあらわす「陽数」と考えられ、神聖なるもの・無限なるもの・偉大なるものを意味するということを紹介しましたが、特に「九」は聖数の代表の数字です。この「九」の古代文字を見ると、頭部分が分かれた形をした竜です。これは雌の竜の形で、身を折り曲げた竜の形を表しています。雄の竜の形を著した字が「虫」だそうです。ただ、この虫が表わすのは、昆虫ではなく、蛇とか竜のような爬虫類だそうです。

瑞巌寺の襖絵


 竜は中国の代表的な聖なる創造上の生き物です。「竜」の古代文字を見ると、頭に「辛」(針)の字形の冠飾りをつけています。雨水、洪水をつかさどる竜神のシンボルとして頭に飾りがついているのです。神社を入ると、拝礼の前に手を洗い、口をすすいで身を清める場所である手水舎があります。そこに水を注ぎ込むためのところを水口といいます。この水口で最もポピュラーなのは「竜」です。また、竜は洪水の神でもあります。9月に台風が多く、洪水が多いのは、何かの因縁でしょうか。
 この聖なる「九」が重なっているのが9月9日で、「菊の節句」または「重陽の節句」といいます。陽数である奇数は人間に活力を与えるものといわれ、陽数の重なる日は節句として盛大に祝い、なかでも陽数の極みである「9」が重なる9月9日は、たいへんめでたい日とされ、「重陽の節句」とされたのです。菊は厄を払い、長寿を得る妙薬といわれていたため、重陽の節句には、杯に菊の花びらを浮かべて飲む、菊酒で長寿を祈ったのだそうです。
 菊の香には、カンフェンなどの精油成分があり、皮膚を刺激して血行を促進し、身体の痛みをやわらげる効果があると言われています。また保温効果も高く、身体の芯まで温まります。そこで、9月には「菊湯」に入るといいかもしれません。菊湯には、菊の中でもリュウノウギクという種類を使います。乾燥のものや、生の花びらを浮かべるといい香りがします。菊の花を風呂に入れるといいというと驚きましが、実は、中国で「母菊」と呼ばれる種類は、ハーブティーとして有名は「カモミール」です。ですから、カモミールを風呂に入れてもいいようです。
 シャワーを浴びるだけが多い海外に比べ、日本では、湯に体全体を沈め、ゆったりとくつろぐことを好みます。日本では、赤ちゃんが産まれると、その場でお風呂に入れます。これを産湯といいますが、産湯とは、産土さまのお守り下さる大地の水のことを指します。また、子どもの身体を清めるとともに発育を願う意味もあり、その湯でお清めすることで神様の産子となるというものだとも言われています。産湯とは新しく生まれ出た生命を祝い、再生された魂を寿ぐための儀式とされていました。日本人は、生まれ変わりの思想を持っていたのですが、ここに水が大きく関与しています。ですから、江戸時代の大名には自分の子の産湯をわざわざ遠くからとりよせた人もいたくらいです。
ことしのNHK大河ドラマの主人公は「江」ですが、もう一人の主人公は、彼女の旦那であった徳川秀忠です。秀忠の母は、武田軍の三河侵攻のときに戦死した西郷正勝の未亡人で、家康に見初められて側室になった人です。そのため彼女は、西郷の局と呼ばれていましたが、浜松城内にあった下屋敷内で秀忠を出産しました。昨年暮れ、妻とその誕生井戸を訪れました。

秀忠の誕生井戸


その井戸のそばの説明書きには、「誕生井戸は、ここの西方約50メートルくらいの処にあった。昔、その一帯は旧城下であり家康の在城当時には下屋敷が構えられていた。2代将軍徳川秀忠の生母は、家康の側室西郷の局で秀忠の出産は同下屋敷で行われた。その時に使われた産湯の井戸を誕生井戸という。その井戸は明治のころまで残っていたそうである。また、ここの北方の誕生橋は秀忠の生まれた下屋敷が誕生屋敷と呼ばれたことにちなんでの命名である。」
産湯として使った井戸が史跡として残されているのも、水と深いかかわりのあった日本の文化の一つかもしれません。

” への5件のコメント

  1. 以前このブログで紹介されたかもしれませんが、有名な長崎くんちは、旧暦の重陽の節句である9月9日に開かれたので、「くにち」→「くんち」と呼ばれるようになったそうです。知名度では長崎くんちには遠く及びませんが、私の住む町には、「仁尾の竜まつり」という民俗行事が残っています。古くから干ばつに悩まされた瀬戸内沿岸の人々が、水の神である竜に託して雨乞いをする伝統行事で、毎年8月の初めに行われます。

    <その昔、干ばつの年がありました。雨乞い行者の和蔵という人に、村人が祈祷を頼んだところ、雨を呼ぶと信じられていた竜を作って海に流せばよいという答えが返ってきました。そこで村人は、藁で大きな竜を作り村内を練り歩いて、村人が大切な水をかけ、海に流したら、あら不思議、天から雨が降ってきたそうな。>

    青竹などで胴体を作り、藁や縄で肉付けした長さ約40m、重さ約3tの巨大な竜を村の若い衆が町内を練り歩く中、見物人が手桶やバケツでその竜に願いを込めて水を浴びせます。「そーれ、竜に水あぶせ!」この掛け声とともに、祭りはクライマックスにー。一度、藤森先生にご覧いただきたいものです。

  2. 台風による被害はなかったのですが、次々に届いてくる情報を見るたびに自然の力を思い知らされました。私の住むところの近くでも、何度も川が氾濫している地域があります。その地域の人たちが水をどのような存在と捉え、どのように付き合っているのか詳しくは知りませんが、私は学ぶことは多いだろうと思っています。水は生きる上で大事なので水を中心に人が集まって村ができてきただろうし、そんな水なので争いも多く起こっています。人と密接な関係にある水とのつきあい方も、もっといろんな視点で考えていく必要があると思っています。雨水博士の村瀬さんの活動なんかも、知れば知るほど興味が沸いてきて面白いので注目しています。

  3. 確かに「九」は竜の形に似ていますね。いや、竜が「九」の形から生まれたものか、あるいは雨を降らす雲の形が「竜」を彷彿とさせてたか、いろいろと考えられます。竜はまた仏を守る神様でもあります。竜神様をお祭りするお寺さんも多いのではないでしょうか。さて、竜から思い出されるのはやはり私たちが暮らすこの「日本列島」です。いつ観ても竜だなと思ってしまいます。竜の形をした日本列島には豊富な水があります。これも何かの因縁のような気がします。今回は9月9日「重陽」の意味がよくわかりました。実にめでたい日ですね。

  4.  今回の台風は日本を縦断していきました。確かに日本に直撃する台風が多いですね。9という数字が中国では竜や蛇に例えられている。そして竜は洪水の神様と崇められているなど、色々な因縁があり今年の9月には台風、洪水が多いのかもしれませんね。
    日本人は海外に比べてお風呂を好む傾向がありますが、気持ちが良いという理由もあるのかもしれませんが、生まれてからすぐに、お風呂、産湯に入ります。それは江戸時代から始まり、当時は大切な儀式として行っていたそうですね。水と日本文化は深い関わりがあり、それは今でも伝承されています。

  5. 「竜」と聞くと私は「水神」というイメージが強いですね。大阪の「天神祭り」では水神である「竜」を模した踊りが天神祭りで川を下る船の上で踊られていることがあります。大阪は特に水害が多かったのと、淀川の大きな川の水路を使うことがあったからか竜というものを祭りでよく目にします。水はときにやさしく、時に激しく人と関わります。しかし、なくてはならないもの、その神秘さが「竜」という架空のものとリンクしたのかもしれませんね。今回の台風はいろいろなところに被害をもたらしましたが、その進路図はまるで竜のように見えました。

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