五島の秋

 ずいぶんと秋が深まってきました。そうはいっても、今年は残暑が厳しく、いつまでも暑く、今日も電車内にはクーラーが効いていました。しかし、さすが、風は冷たく、クーラーは使いすぎの感があります。数週間前に、長崎県五島で、真っ赤なトンボを見かけました。急いで写真を取ろうと思ったのですが、あっという間にどこかに飛んで行ってしまいました。この赤とんぼは、尻尾の処が真っ赤だったので、たぶん長崎県の絶滅危惧種に指定されているミヤマアカネだったような気がします。
“赤とんぼ”とは体が赤いトンボのことを指します。その多くがアカネ属に属しますが、そのアカネ属には体が赤くならない種も入っております。以前はアカトンボ属と呼ばれていましたが、赤くない種が属するのと、この属に含まないトンボの中にも全身真っ赤になる種がいるため、アカネ属に改められました。少し前までは、高原ではもちろん、少し郊外に行くと秋になると空一面を覆うほど赤とんぼが飛んでいました。夏の終わりの光景として、子どもたちが、昆虫網を振り回して、赤とんぼを追いかけていた姿を思い浮かべます。それが、いつの間にか見かけなくなりました。
赤とんぼというと、三木露風作詞、山田耕筰作曲の楽曲「赤とんぼ」が、日本の代表的な童謡の一つとして、日本人の人気のある曲があります。歌詞は、夕暮れ時に赤とんぼを見て、懐かしい故郷を思い出すという郷愁にあふれた曲です。この赤とんぼは、普通は、秋に平地に群を成して出現するアキアカネのことですが、季節的な長距離移動がよく知られています。また、アキアカネと名前がついていますが、羽化するのは秋ではなく、6月末です。そして、水田などで羽化したアキアカネは山へ移動し、夏のあいだは高原ですごし、秋になると平地におりてきて産卵します。ですから、夏の高原で無数に見られるトンボはほとんどがアキアカネですが、その時期の体色はオレンジ色で、秋が深まると次第に成熟して赤くなり、里に下りてくるので、「秋に見る赤とんぼ」となるのです。
やはり、五島で、かつてはよく見かけ、最近はあまり見かけなくなった「シジミチョウ」を見ました。このチョウの名前は、羽根の形がシジミ貝に似ているからで、種類は、世界中で南極大陸を除く全ての大陸に分布しているそうで、種類数は6,000種にも達するそうです。全世界にはチョウが15,000-20,000種いるそうですが、その中でシジミチョウが40%ほどを占めているそうです。幼虫は最初、秋の代表的なワレモコウの花を食べるそうですが、成長するとアリの巣に運ばれ、アリの卵や幼虫を食べるそうです。日本でよく見かけるシジミチョウは、そんなにも派手な色ではありませんが、世界には、非常に鮮やかな色彩のものや、キラキラ金属光沢に光るものなどもいます。
 やはり五島で写真に撮ったものに、秋の七草のひとつになっているクズの花があります。この花については、 以前確かブログで取り上げましたが、日本中いたるところで繁茂しているという感じです。こんなありふれた、生命力の強い植物が秋の七草に選ばれているのは、少し違和感を感じます。秋は、暑い夏が終わり、なんだか物寂しく、物思いにふける季節ですから、派手でなく、華々しくない植物が選ばれている気がします。
今から約1300年前、大海人皇子は、 兄天智天皇の子大友皇子と戦って勝ち、天皇の座についたのが天武天皇です。その戦いの旗揚げの地が吉野の宮で、そこは、奈良県国栖付近にあったといわれています。この国栖(くず)地方は、葛粉(くずこ)の産地であったところから、クズと命名されたようです。そんな日本に古くから関わってきた植物なので、秋の七草に選ばれているのでしょうね。

五島の秋” への5件のコメント

  1. 初夏は蛍狩り、真夏はセミにカブトムシ、秋にはトンボ採り。昔の子どもは、一年中外で虫を追っかけていました。もう今頃になると、水辺や田んぼにトンボが群れ飛んで、トンボとりに熱中する子どもたちの声が響いていたもんです。トンボの目の前で指を回すのは、あまり効果が無く、古くは竹ざおの先にトリモチをつけて取る方法もあったようですが、私の頃はおとりのトンボを糸でくくって、竿の先につって、池や田んぼの周りを走り回って交尾にやってくるトンボを採るやり方が一般的でした。農薬や自然破壊のせいで、この田舎でもすっかりトンボも見かけなくなったのはとても寂しい限りです。四国は高知県西部の四万十市(旧中村市)に「トンボ王国」という自然公園があります。地元のトンボ研究家の杉村光俊氏が、1972年春に市内のベッコウトンボ生息地を埋め立てられた悲しさと悔しさをバネに「絶対奪われないトンボ保護区」を目指し、全国から多くの個人や団体の協力で創り上げた世界初のトンボ保護区です。さすがの藤森先生もここは行ったことがないのでは?

  2. あらためて思い返してみると、子どもの頃に見ていた風景と最近の風景とではずいぶん違ってきています。赤とんぼの群れも以前と比べると見ることが少なくなってきたように思います。そうはいっても、過去の様子とは違ってきていますが、確実に季節は変わってきています。今の子どもたちはこの風景を記憶しながら成長していくんだろうと思うと、過去を懐かしむことと同じくらい今の状況の中で何を残して何を変えていかなければいけないかを考えることが大事なんだと思わされます。私の場合は過去に拘りすぎるとろくなことがないので、前と後ろをバランスよく見ることの意識は高く持っておきたいと思います。

  3. 気温が下がって来て、いよいよ秋到来です。休みの日には秋を見つけにお散歩したいものです。絶滅危惧種「ミヤマアカネ」を観られて良かったですね。そのトンボが「ミヤマアカネ」とわかることは凄いですね。トンボについても詳しいことわかりました。「シジミチョウ」も何だか懐かしいです。あまり美しいとは思いませんでしたし、小型なので然程の関心も湧きませんでしたが、こうして観てみるとその愛らしさに感じ入ります。それにしてもシジミチョウの幼虫は凄まじい。「成長するとアリの巣に運ばれ、アリの卵や幼虫を食べる」・・・これは驚きです。アリの巣に運ばれて食べられるのかと思いきや、逆にアリの卵や幼虫を食べて更に成長する。あのチョウの可憐さからはおよそ想像がつきませんね。

  4.  まだ赤とんぼを見かけませんね。赤とんぼを見ると初めて秋だな・・・と実感します。まだまだ私の周りで秋を感じる物は見つけていませんが、もしかしたら私が知らないだけで、秋の植物はどんどん成長し、姿を表して意いるかもしれません。写真のようにシジミチョウ、クズの花。場所は五島とはいえ、秋を代用する虫と植物を見つける藤森先生のアンテナと知識に毎回、感服します。子ども達が散歩などで見つけてくる植物や虫に注目していると、季節によって変わってくると思います。そこから秋の変化も気づく事ができると思いました。明日から私も気に掛けてみようと思います。

  5. 五島にはこんなにも自然が残っているんですね。確かにまだ私が子どもの頃は空一面に赤とんぼが飛んでいましたが、最近ではトンボを見ることもずいぶん少なくなってきたように思います。昔から言われている「秋」と現在の「秋」とでは大きく違ってきているのは、少し残念に感じます。しかも、その変化は10年ほど前くらいのことです。そう考えると人間は色んなものの犠牲の上にいるのかもしれませんね。現在、生物の多様性を話し始めているのも納得できる気がします。私たちは次世代の子ども達にどういったものを残していかなければいけないか、人間の生きていく環境を考えることは生物の生きていく環境をも考えることにつながっていかないといけないですね。

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